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第一章

卒業⑦

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 両親が校門に向かっている後ろ姿を見ていると、校門の奥の中庭にある木の下に瑞希らしき姿を発見した。何かを見上げている。

 捕まえなきゃと必死で走って向う。

「みーくん」
「由奈ちゃん」
「あの~」
「ん?」
「写真を一緒に撮ってほしいの」
「うん。いいよ」

 ドキドキと心臓の高鳴りが最高潮だ。反対に、瑞希は至って普通だ。

 瑞希に近づきツーショットを撮る。

「みーくんスマホは?」
「持ってない。っていうかまだいらない」
「何で?」
「その手のひらサイズの機械の中は、世界まで繋がってるんだ。一歩間違ったら大変なことになる。だからまだまだ先でいい」
「……」

 由奈は瑞希の言葉を聞き、手のひらに乗る機械が急に重くなった気がした。

「みんなに、連絡先を聞かれなかった?」
「聞かれたけど、僕に連絡を取りたかったら手紙を送ってと言っておいたよ」
「手紙?!」
「そう。機械で送られた言葉より、気持ちが伝わるだろう?まあ、実際に送って来るやつはいないだろうけど」
「……。手紙を送ったらお返事くれる?」
「えっ?ああ、もちろん」

 手紙と言えば誰も送って来ないだろうと思っていた瑞希には、由奈の一言が意外だった。本当に送られて来るのだろうかと少しの期待が芽生える。

 こうして由奈達は、小学校を旅立ち新しい世界に羽ばたいた――。

 
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