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ファルコスは呆気に取られた。
何故ならば貴族という立場からしても
美貌からしても常に令嬢や婦人達から
熱帯びた視線を送られるのが日常だ。
それなのに、、
笑顔すら見せず言葉使いも騎士の様で
ファルコスに全く興味を示さなかった
からだ。

「面白い」
ファルコスはすぐに引き返しボーン家を
調べ始めた。

探し人のクリスティーヌは
金髪に碧瞳のはずだ。しかし出会った
クリスティーヌは赤瞳
ファルコスは魔力に関する書籍に
答えを見つけた。

【魔力保持者が覚醒し強力な魔力を手に
    入れた時、瞳が赤となる】

ふぅ、、彼女は稀にしか現れない
魔力強力保持者。という事か…

幸にも悪にもなる力…彼女は悪だった
何故だ?危険すぎる。

ファルコスは部下に指示をだして
ボーン伯爵家とクリスティーヌに関し
すぐに調べる様に指示を出した。

ファルコスの父は王族だ。
父親は微量ながら魔力を保持している
そしてファルコスには
魔力を感知できる能力があった。

街での視察中、どこから流れてくるのか
魔力を感じた。気になり探すと
とてつもなく強い魔力に引き寄せられた
深い森の中、ファルコスも護衛騎士にも
緊張が走った。

ゆっくり近づくと
強力な魔力を自由自在に操る
可憐な女性がファルコスの前に居る
彼女は…もしかして…
凛とした彼女の姿に衝撃を受けた。



すぐに報告が上がった

クリスティーヌ・ボーン伯爵令嬢
ボーン家の長女で8歳の時に魔力を覚醒

13歳の時、
15歳のビルウィル・ラーモン公爵子息と
婚約。
現在は
婚約解消そしてビルウィルは
妹のティファニーと婚約。
婚約相手が変わったのは
ティファニーの魔力が強かった為。

ファルコスは報告書を見ながら
不思議に思っていた。
クリスティーヌよりティファニーの方が
魔力が強いだと?
あれだけ強力な魔力だ、それ以上ならば
当然、国に報告が入っているはずだ。

婚約解消が引き金で覚醒したのか?
ボーン家は知らない可能性があるな

ファルコスは王宮へと向かった。


ファルコスは
ボーン伯爵家とラーモン公爵家からの
婚約証明が受理されているかを確認した

ビルウィルとクリスティーヌの婚約解消
は既に認められていたが
ビルウィルとティファニーの婚約
については
正式な手続きがされていなかった。

クリスティーヌの失踪との関係か?
ファルコスは屋敷に戻り
父親である大公に報告をあげて
クリスティーヌの魔力が
神の領域に達していて
このまま放置すると危険であると告げた

そして大公はファルコスに
クリスティーヌの保護を命じた。


ラーモン公爵家

「全く、伯爵の奴!我が家から婚約金
    を受け取っておきながら未だ
    ティファニーとの婚約証明書に
    サインをしないクソっ」

公爵は詐欺で伯爵を訴えたい気持ちと
ボーン家の血筋をラーモン家に入れたい
欲でイラついていた。

ビルウィルは父親を見ながら
クリスティーヌと一緒になれないならば
相手は誰でもいい。と思っていた


ボーン伯爵家

ティファニーは何度もビルウィルに
手紙を書いたが当たり障りのない
返事だけが戻り、会いたいと伝えるが
ビルウィルが会いに来る事はなかった

何でよ!私の方が魔力も強いし
可愛いしお似合いなんだから…
ビルウィルが今でも
クリスティーヌを想っていると知り
涙を流す日を送っていた。


兄はクリスティーヌが屋敷を出るなど
考えてもいなかったが
可愛いティファニーが居れば
それだけで幸せだった…

クリスティーヌが屋敷を出た理由は
婚約解消だろう。解消は当然の事だ
迷惑をかけやがって!
ボーン家に相応しく無い奴が!
そう思っていた…

伯爵は今だ見つからない娘に心を痛め
ていたがもうこれ以上公爵を待たせる
訳にはいかないと婚約証明書にサイン
した。

そして
ファルコスは森に入りクリスティーヌが
発する魔力を追っていた。

ゴーン!何かが崩れる音と同時に
魔力に乗った風が吹く
「この先だ」
更に先へと進みファルコスは再び驚いた
眩い光の中央に居るのは間違いなく
クリスティーヌだ。だがその姿は
まるで女神の様だった…そして
女神は振り返ると「何の御用?」
無表情で見つめてくるクリスティーヌに
ドキリとさせられた。

「やぁ、元気そうで何より会えて
    嬉しいよ」

「今度は見つけられない様に姿を
    変えようかしらね」

「はははっ俺は魔力を追って来たんだ
    どこでどんな姿になっても
    君を見つけるよ」

「何だか恋人に捧げる言葉に聞こえる
    わね。あなた…暇なの?」

「無礼者!!」騎士が声をあげる

「無礼なのはどちらかしら?
    勝手に近づいて来たのでしょう?
    だったら来なければいいじゃない。
    関わらないでよ」

クリスティーヌが姿を消そうとした瞬間
ファルコスが止めた
「すまん、悪かった」

クリスティーヌは黙ったまま
ファルコスを見ている

「今日は君と話しがしたい」
持っていた剣を護衛騎士に渡し
敵意が無い事を見せた。

「何です?話しって」

「知っていると思うが君は訪ね人に
    なっている。その魔力を隠す為か?」

「それも、、あるわね」

「も?とは別の理由があるのか」

「……。」

「なぁクリスティーヌ嬢、何を考えて
    いるんだ?君の魔力は特別な物だ
    わかっているだろう。
    それが、どんなに危険な物か…」

「それで?あなたは私を捕まえて
    牢にでもぶち込むつもりなの?
    心配しないで、国を壊したい訳じゃ
    無いから」

「何故、力を隠す」

「ん?知られたく無いからよ?
    他に理由なんてあるかしら」

「何故、知られたく無いんだ…
    誰に言えないんだ」

「あなたには関係ないって言ったはず
    しつこい男は嫌われるわよ」

「すまん、うちに来ないか?」

「……はぁ?」

「その、何だ、やましい気持ちでは
    無くてだ…」
その時騎士の1人が…

「お話中、失礼します
    大公閣下よりクリスティーヌ嬢を
    保護せよ。と命じられました。
    一緒にルーマン家に同行願います」

クリスティーヌはため息をついた。

「そういう事なのね。だったら
    そう言えばいいのに…
    わかりにくいのよ」

ファルコスをジト目で見た。

「条件があるわ
    私の計画を邪魔しないで。
    つまり私への関心は無用だと言う事
    それを守ってくれるなら行くわ
    裏切ったら、大公の屋敷でも遠慮なく
    吹き飛ばすわ」

「わかった。まずは屋敷でゆっくり
    話そう」

「あなただとわかりにくいから
    護衛さん、通訳してね」

ファルコスは苦笑いするしかなかった。

クリスティーヌは半年ぶりに王都へ
向かった。

ファルコスは屋敷に着くとすぐに
クリスティーヌを客間に案内した。

「とても大切な客人だ」

その一言でメイドも執事も察し
すぐに風呂と食事の準備が進められた

メイド長はクリスティーヌを見て
すぐにサイズが合うドレスを
探す様メイド達に命じた。

クリスティーヌはメイド達に
身体を洗ってもらって準備をしてもらい
イブニングドレスを身に纏うと
鏡の前には自分が思っていた以上に
綺麗なクリスティーヌが居た。

こんなに綺麗にしてもらって
申し訳ないわ。
私、覚醒して瞳の色が変わったのね
別人みたい…そんな事を考えていた。
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