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16 再びのふたりの二次会
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終わった・・・・・。
自分がやらかしたことの後始末がやっと終わった。
まとめ上げて報告書にした。
その間は何も壊してない。悲鳴も上げず、雷も落ちず。
やっと終わった。
提出した書類を受け取りご苦労と言われたときに思わず泣きそうになる。
ずっと心の片隅に見放される不安があったから。
だから邪魔でもいいから何とか自分が関わりたかった。
坂井さんと今週末こそ一緒に買い物に行こうと日曜日に約束をし直した。
終業前に成井さんから飲みに行こうと誘われて勿論参加した。
今回は近くの広めの居酒屋で。
週末の夜に浮かれて騒ぐスーツの群れに混じって区切られた和室に通された。
結局全員参加となった。真ん中に向かい合わせで座らされて珍しい席並びに。
「二人ともお疲れさまでした~。」と乾杯の声がかかる。
あっ、そういうことだったのか。
うれしかった。
「成井さんと鬼頭君にもお礼を言いたいです。ありがとうございました。」
「いえいえ。」成井さんが言いながらグラスを空ける。
「近藤さん、どうでしたか?」
漠然とした感想を求める高階さん。
何を言わせたいのだろう?
向けられた質問に視線を天井に上げて唸る近藤さん。
「面白かった。」
?
「ある交代の夜、エレベーターを降りた途端廊下に明るいトーンのお経のような声が響いていた。いぶかしく思って音源をたどってこっそりのぞくと・・・・まさか椅子に座りながらも、手足を動かして踊りながら一人カラオケを楽しんでる玉井がいた。あまりに衝撃的な光景で、動画を撮ってなかったことが悔やまれる。機会があったら覗いて欲しい。絶対笑える。」
「何でバラすんですか?眠気覚ましって言ったのに。」
「確かに俺の眠気も覚めた。そのほかは特に驚くようなことも起きずに何とか終わった。玉井もよく頑張ったな。」
「・・・・はい。」
「坂井も悪かったな。玉井と遊んでやる予定だったんだろう?」
「はい、大丈夫です。今週の日曜日に遊びますから。」
『遊んでやる』って言い方はどうかと思うが、坂井さんにもあっさり流された。
次々に注文した料理が来てお腹がいっぱいになる。
緊張も解けてどんどんお酒もすすんで。
「面倒だなあ、ちょっと寝てから帰ろうかなあ。」
「お前又あそこに泊るのか?」
「すっかり気に入ったって言ったじゃないですか。明日はぐうたらする予定だし、目が覚めてからゆっくり帰ります。」
それぞれが改札に消える。
「週末にあの部屋が開いてるとは限らないぞ。」
「あ、そうですね。うん、聞いてみます。」
「え・・・・・ダメですか。」
電話をしたらびっくり、今は先客がいて空いてないとのことだった。
しまった、こんな時に使えないとは。
じゃあ、今後も開拓を続けるしかない。
「他のところに行ってみます。お疲れさまでした。」
「いいからうちに来い。」
近くのタクシー乗り場まで連れていかれて、またしてもドンと突き飛ばされた。
「もしかして2次会したいですか?」飲み足りなかった?
「お前週末をなめるな。どこも空いてないぞ。」
「そうでしょうか?」
「いいから、2次会したかったらまたコンビニに寄るけど。他に買うものあるか?」
「いえ、あの近藤さんが早く休みたいなら2次会も無しでいいです。」
「別に。することもない。二人でお疲れ様会するか?」
「はい。私が払います。宿代です。」
「よろしく。」
タクシーはこの間と同じコンビニに着いた。
籠を持ってお菓子コーナーに行き新商品をチェック。
数点をかごに入れアルコールの冷蔵庫の前で悩む。
この間飲んだもの以外で。
横でビールを三本選んでかごに落とした近藤さんに付き合い3本選んだ。
「玉井はいつも家でも飲むのか?」
「いいえ、まったくです。父親の日本酒にたまに付き合うくらいです。部屋で一人で飲むことはないです。」
「謎だな、部屋では何をしてるんだ?」
「別にぐうたらと。ゴロゴロと。ゲームしたり、本読んだり、漫画見たり。お母さんとテレビ見たり。」
「家事手伝いは?掃除は?」
「えっと、それはお母さんがめちゃくちゃしっかり者で、頼りになるんです。もう、痛いところに手が届くっていう感じで。」
「痒いところだと思うが。まあ、大体わかった。」
「そういう近藤さんは?」
会計を済ませて歩きながら聞く。
「俺はちゃんと掃除はする、洗濯も。料理はほとんどしないが。他は音楽を聴いたり雑誌を読んだりしてるくらいだ。」
「あんまり変わりないですね。」
そう言って笑いながら見上げると思いっきり嫌な顔をされた。
不満?反論あり?
「成井さんは仕事後にジムに行くようですよ?高田さんも鏡を見ながら毎日部屋で鍛えてるって言ってました。すごく想像できますよね。近藤さんは?鏡無かったですよね?あ、寝室に・・・・。」
「俺は必要ない。」
「さりげない自慢の様ですね。努力なしでそんなにスラリとしてるなんて。」
「摂取カロリーと消費エネルギーのバランスを考えて電車の中できちんと立って筋肉を使えば十分だ。」
なんと、ちゃんと生きてますか?
「あ~、嫌です。何で煩悩と付き合わないんですか?いろいろ世の中には誘惑があるじゃないですか?心の中で葛藤してせめぎ合い、時に負けて、時に打ち勝って喜び楽しみ落ち込む。これがいいんです。」
力説したのに一言。
「勝手にしたらいい。」
「綺麗な彼女さんだって本当は努力してるかもしれないじゃないですか?ちゃんとほめてくださいね。」
つい調子に乗ったかもしれない。
無言で無反応で。
あの時、本当にきれいだと思うとしみじみと言っていたので、そんな努力とかいらない恵まれた体質なのかもしれない。たまにいるらしい、生まれながらにしてビーナスに微笑まれた人。
ただ、そのままその話題は消えていった。
静かなマンションの廊下を近藤さんの背を見ながらついて行く。
この間勝手に泊ることに罪悪感を覚え反省したのに。
またここに来てる私。また、ついて来てしまった。
そして近藤さんの手には私も選んだお酒とおつまみが。
開けてもらったドアから続いて入る。
「お邪魔します、再び。」
シルエットだけのきれいな女性にも心の中で言う。
「先にシャワー浴びていいか?」
「はい、勿論。どうぞ。」
買ったものをテーブルに並べる。
この間と同じ位置に座る。
静かなこの部屋は人の匂いもあんまり感じられない。
他人の私も居心地悪そうな置物状態。
この間はもっとリラックスしてたと思うのに。
すぐにシャワーの音が止んで上半身裸にバスタオルを首にかけた近藤さんが出てきた。
ちゃんと下はズボンを着ている。
急いで視線を外した。
そのまま寝室に行って、Tシャツを着て出てきた。
手に持った服を私に渡す。
この間と同じようにタオルを借りてシャワーも借りる。
漫喫ダメならカプセルホテルという手もあるか?
週末もそうだけど飲みの時は初めから予約を入れたほうが楽しめそうだ。
鏡に向かい化粧を落として適当に化粧水をはたく。
バルタオルを畳んで置いてリビングに戻る。
「ありがとうございました。」
先にビールを飲んでいた近藤さん。乾杯もなく。・・・まあ、いいけど。
バスルームに消えた近藤さん。私も缶を開けて飲む。
おつまみに買ったナッツを開けて口に運ぶ。
何を考えてたか分からないけどぼうっとしていたらしい。
いつの間にか近藤さんが帰ってきていた。
「あっ、すみません。あまりにぼうっとしてました。」
「凄い顔して、真剣に床を睨んでたぞ。」
「自分でも何を考えていたか覚えてないんですが。軽く飛んでました。」
「お疲れさま。」ビールを軽くあげて言われた。
「お疲れさまでした。」
静かにビールを飲む二人。
「あの、一つ厚かましいお願いがあるんですが。」
「何だ?」
「この間みたいには酔わないでください。」
不審な顔をされた。
「記憶がなくなるまでは、その前にお互いにやめましょう。」
「そうしたい。」
そう願いたい。
あの時びっくりするようなことを言われたし、聞かれた。
本当に記憶がないんだろうけど、・・・あるとは思えない。
話の流れでサラッと聞いてきて、酔ってる風はなかった。
でも普通だったら言わない、聞かない事だったからびっくりした。
ちゃんと答えてないから、いっそう記憶にもないだろうけど。
自分がやらかしたことの後始末がやっと終わった。
まとめ上げて報告書にした。
その間は何も壊してない。悲鳴も上げず、雷も落ちず。
やっと終わった。
提出した書類を受け取りご苦労と言われたときに思わず泣きそうになる。
ずっと心の片隅に見放される不安があったから。
だから邪魔でもいいから何とか自分が関わりたかった。
坂井さんと今週末こそ一緒に買い物に行こうと日曜日に約束をし直した。
終業前に成井さんから飲みに行こうと誘われて勿論参加した。
今回は近くの広めの居酒屋で。
週末の夜に浮かれて騒ぐスーツの群れに混じって区切られた和室に通された。
結局全員参加となった。真ん中に向かい合わせで座らされて珍しい席並びに。
「二人ともお疲れさまでした~。」と乾杯の声がかかる。
あっ、そういうことだったのか。
うれしかった。
「成井さんと鬼頭君にもお礼を言いたいです。ありがとうございました。」
「いえいえ。」成井さんが言いながらグラスを空ける。
「近藤さん、どうでしたか?」
漠然とした感想を求める高階さん。
何を言わせたいのだろう?
向けられた質問に視線を天井に上げて唸る近藤さん。
「面白かった。」
?
「ある交代の夜、エレベーターを降りた途端廊下に明るいトーンのお経のような声が響いていた。いぶかしく思って音源をたどってこっそりのぞくと・・・・まさか椅子に座りながらも、手足を動かして踊りながら一人カラオケを楽しんでる玉井がいた。あまりに衝撃的な光景で、動画を撮ってなかったことが悔やまれる。機会があったら覗いて欲しい。絶対笑える。」
「何でバラすんですか?眠気覚ましって言ったのに。」
「確かに俺の眠気も覚めた。そのほかは特に驚くようなことも起きずに何とか終わった。玉井もよく頑張ったな。」
「・・・・はい。」
「坂井も悪かったな。玉井と遊んでやる予定だったんだろう?」
「はい、大丈夫です。今週の日曜日に遊びますから。」
『遊んでやる』って言い方はどうかと思うが、坂井さんにもあっさり流された。
次々に注文した料理が来てお腹がいっぱいになる。
緊張も解けてどんどんお酒もすすんで。
「面倒だなあ、ちょっと寝てから帰ろうかなあ。」
「お前又あそこに泊るのか?」
「すっかり気に入ったって言ったじゃないですか。明日はぐうたらする予定だし、目が覚めてからゆっくり帰ります。」
それぞれが改札に消える。
「週末にあの部屋が開いてるとは限らないぞ。」
「あ、そうですね。うん、聞いてみます。」
「え・・・・・ダメですか。」
電話をしたらびっくり、今は先客がいて空いてないとのことだった。
しまった、こんな時に使えないとは。
じゃあ、今後も開拓を続けるしかない。
「他のところに行ってみます。お疲れさまでした。」
「いいからうちに来い。」
近くのタクシー乗り場まで連れていかれて、またしてもドンと突き飛ばされた。
「もしかして2次会したいですか?」飲み足りなかった?
「お前週末をなめるな。どこも空いてないぞ。」
「そうでしょうか?」
「いいから、2次会したかったらまたコンビニに寄るけど。他に買うものあるか?」
「いえ、あの近藤さんが早く休みたいなら2次会も無しでいいです。」
「別に。することもない。二人でお疲れ様会するか?」
「はい。私が払います。宿代です。」
「よろしく。」
タクシーはこの間と同じコンビニに着いた。
籠を持ってお菓子コーナーに行き新商品をチェック。
数点をかごに入れアルコールの冷蔵庫の前で悩む。
この間飲んだもの以外で。
横でビールを三本選んでかごに落とした近藤さんに付き合い3本選んだ。
「玉井はいつも家でも飲むのか?」
「いいえ、まったくです。父親の日本酒にたまに付き合うくらいです。部屋で一人で飲むことはないです。」
「謎だな、部屋では何をしてるんだ?」
「別にぐうたらと。ゴロゴロと。ゲームしたり、本読んだり、漫画見たり。お母さんとテレビ見たり。」
「家事手伝いは?掃除は?」
「えっと、それはお母さんがめちゃくちゃしっかり者で、頼りになるんです。もう、痛いところに手が届くっていう感じで。」
「痒いところだと思うが。まあ、大体わかった。」
「そういう近藤さんは?」
会計を済ませて歩きながら聞く。
「俺はちゃんと掃除はする、洗濯も。料理はほとんどしないが。他は音楽を聴いたり雑誌を読んだりしてるくらいだ。」
「あんまり変わりないですね。」
そう言って笑いながら見上げると思いっきり嫌な顔をされた。
不満?反論あり?
「成井さんは仕事後にジムに行くようですよ?高田さんも鏡を見ながら毎日部屋で鍛えてるって言ってました。すごく想像できますよね。近藤さんは?鏡無かったですよね?あ、寝室に・・・・。」
「俺は必要ない。」
「さりげない自慢の様ですね。努力なしでそんなにスラリとしてるなんて。」
「摂取カロリーと消費エネルギーのバランスを考えて電車の中できちんと立って筋肉を使えば十分だ。」
なんと、ちゃんと生きてますか?
「あ~、嫌です。何で煩悩と付き合わないんですか?いろいろ世の中には誘惑があるじゃないですか?心の中で葛藤してせめぎ合い、時に負けて、時に打ち勝って喜び楽しみ落ち込む。これがいいんです。」
力説したのに一言。
「勝手にしたらいい。」
「綺麗な彼女さんだって本当は努力してるかもしれないじゃないですか?ちゃんとほめてくださいね。」
つい調子に乗ったかもしれない。
無言で無反応で。
あの時、本当にきれいだと思うとしみじみと言っていたので、そんな努力とかいらない恵まれた体質なのかもしれない。たまにいるらしい、生まれながらにしてビーナスに微笑まれた人。
ただ、そのままその話題は消えていった。
静かなマンションの廊下を近藤さんの背を見ながらついて行く。
この間勝手に泊ることに罪悪感を覚え反省したのに。
またここに来てる私。また、ついて来てしまった。
そして近藤さんの手には私も選んだお酒とおつまみが。
開けてもらったドアから続いて入る。
「お邪魔します、再び。」
シルエットだけのきれいな女性にも心の中で言う。
「先にシャワー浴びていいか?」
「はい、勿論。どうぞ。」
買ったものをテーブルに並べる。
この間と同じ位置に座る。
静かなこの部屋は人の匂いもあんまり感じられない。
他人の私も居心地悪そうな置物状態。
この間はもっとリラックスしてたと思うのに。
すぐにシャワーの音が止んで上半身裸にバスタオルを首にかけた近藤さんが出てきた。
ちゃんと下はズボンを着ている。
急いで視線を外した。
そのまま寝室に行って、Tシャツを着て出てきた。
手に持った服を私に渡す。
この間と同じようにタオルを借りてシャワーも借りる。
漫喫ダメならカプセルホテルという手もあるか?
週末もそうだけど飲みの時は初めから予約を入れたほうが楽しめそうだ。
鏡に向かい化粧を落として適当に化粧水をはたく。
バルタオルを畳んで置いてリビングに戻る。
「ありがとうございました。」
先にビールを飲んでいた近藤さん。乾杯もなく。・・・まあ、いいけど。
バスルームに消えた近藤さん。私も缶を開けて飲む。
おつまみに買ったナッツを開けて口に運ぶ。
何を考えてたか分からないけどぼうっとしていたらしい。
いつの間にか近藤さんが帰ってきていた。
「あっ、すみません。あまりにぼうっとしてました。」
「凄い顔して、真剣に床を睨んでたぞ。」
「自分でも何を考えていたか覚えてないんですが。軽く飛んでました。」
「お疲れさま。」ビールを軽くあげて言われた。
「お疲れさまでした。」
静かにビールを飲む二人。
「あの、一つ厚かましいお願いがあるんですが。」
「何だ?」
「この間みたいには酔わないでください。」
不審な顔をされた。
「記憶がなくなるまでは、その前にお互いにやめましょう。」
「そうしたい。」
そう願いたい。
あの時びっくりするようなことを言われたし、聞かれた。
本当に記憶がないんだろうけど、・・・あるとは思えない。
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