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18 本当に面倒だと思っていること
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この部屋にまた人を入れた、同じ奴だが。
この間と同じようにくつろいでいるかと思えば、今日は置物のように固まっている。
居心地がいいとかなんとか言ってこの間は長居したのに。
シャワーを浴びてる間にビールを開ける。
だいたいみんな帰ったのに、俺はどうしてこいつの漫喫の部屋の心配までしたんだ。
明日は休みだし放っといても問題なかったはずなのに。
・・・・・その結果またここに連れてくることになってしまった。
ぼんやりとビールを飲む。一応ゆっくりと。
戻ってきた玉井とお疲れさまと言い合い飲み続ける。
記憶がなくなる前にやめようという提案に賛成だ。
切り出したその表情は申し訳なさそうに、でも絶対お願いしますと言う様にも見えた。
本当に変な酔い方をしたんだろうか?
あの日はとくに疲れていたかもしれない、脳が。
それでも記憶をなくすとは、学生の頃を含めてもかつてない事だった。
日曜日に坂井と買い物に行くのを楽しみにしているようで、ボーナスで買う親へのプレゼントを相談された。
はるか昔の新人の頃の事、まったく記憶がない。
本当に何かあげたか?
男なんてそんなものじゃないかとも思うが。
「そんなことないですよ。鬼頭君は旅行券をプレゼントしたって。温泉旅行ですって。高田さんはおしゃれなレストランでランチを一緒にしたっていうし。」
なんだ、俺に聞くより先に皆に聞いてるんだな。もちろん高田にまで。
本当にどれだけ接触してるんだ?
「高階と成井は?」
「2人には聞いてませんが高階さんも温泉だったようです。坂井さんが言ってました。」
「私は他の人より家賃もかかってないし食費もその他も。その分豪勢にしたいんですが。」
「なあ、もしかと思うが、うちにいくらかお金を入れてないのか?」
ん?という顔をしている。マジか。
「親元で暮らす奴はだいたい食費と言われて3万くらい徴収されるって聞くぞ。ないのか?もしかして携帯代とかも親がかりとは言わないよな?」
「えっと、分からないです。親の名前で契約してて・・・。」
「本当に豪勢にしろ。誰よりも豪勢にしろ!」
不満そうにこっちを見上げる玉井。
『自分は何をしたかも忘れてるのに偉そうに。』
その、つぶやきは大きく。
「聞こえてるぞ。」
「だって偉そうなんですもん。相談したのに考えてくれないし。」
「仲がいいのは分かってるから三人で旅行に行って豪華な食事をすればいいじゃないか。」
そう言ってみた。
「もっと具体的にお願いします。場所はどこがいいとか、どこのレストランはおすすめだとか。年上なりの経験から教えてください。」
「そいうことこそ高田に聞けばいいじゃないか。あいつはお前の為なら親切に考えてくれるぞ。」
「せっかくなので近藤さんも親切に考えてください!」
何かイライラすることでもあったのか?
「どうかしたのか?」
「別に。」
「顔が怖いぞ。」
「これが私の顔です。」
お手上げだ。勝手に不機嫌になってろ。付き合いきれん。
めんどくさいのは苦手だ。
「今すごく面倒だって顔しましたよね。」
鋭い。
「何で急に不機嫌になるんだよ。」
「記憶を無くすよりはいいじゃないですか。」
「しつこいぞ。無くしたくて無くしたわけじゃない。覚えてないだけだ。」
「一人だけ覚えてないなんて都合がいいです。」
何だ、何かあったのか?もしかと思うが・・・、いや無いぞ・・・無いぞ、あるわけないが。
「何かあったのか?もしかと思うが何かしたとか、傷つけるようなことを言ったとか?」
「何もされてません、言われてません。ご心配なく。」
じゃあ何だ?
二本目のビールを飲んでテーブルに置く。
「お開きにしよう。先に歯を磨くから。」
立ち上がって洗面台に向かう。ちらりと見た玉井の表情はぼんやりしていた。
面倒くさいことこの上なし。
歯磨きを終えて戻るとある程度片付けられていた。
「じゃあ、寝るから。ソファから落ちるなよ。おやすみ。」
「・・・おやすみなさい。」
寝室の扉を閉めて横になる。向こうでゆっくり動く音がする。
ベッドに横になり考える。
何か言ったのか?思い出した方がいいのだろうか?
今頃言われてもしょうがない。
あの後も普通だったから・・・・問題はなかったと思える。思おう。
それにしても高田の接近ぶりは何なんだ?
別に他の課の後輩を可愛がっても問題はないんだ。
いや、彼女がいるからただの話し相手だとは思うが。
だが、相手がある事で。簡単に割り切れないのが人の気持ちで・・・。
本当に出禁の意味がない。
合同研究が始まればそれすら無意味になるのに。
いい、知るか。もう、寝よう。
この間と同じようにくつろいでいるかと思えば、今日は置物のように固まっている。
居心地がいいとかなんとか言ってこの間は長居したのに。
シャワーを浴びてる間にビールを開ける。
だいたいみんな帰ったのに、俺はどうしてこいつの漫喫の部屋の心配までしたんだ。
明日は休みだし放っといても問題なかったはずなのに。
・・・・・その結果またここに連れてくることになってしまった。
ぼんやりとビールを飲む。一応ゆっくりと。
戻ってきた玉井とお疲れさまと言い合い飲み続ける。
記憶がなくなる前にやめようという提案に賛成だ。
切り出したその表情は申し訳なさそうに、でも絶対お願いしますと言う様にも見えた。
本当に変な酔い方をしたんだろうか?
あの日はとくに疲れていたかもしれない、脳が。
それでも記憶をなくすとは、学生の頃を含めてもかつてない事だった。
日曜日に坂井と買い物に行くのを楽しみにしているようで、ボーナスで買う親へのプレゼントを相談された。
はるか昔の新人の頃の事、まったく記憶がない。
本当に何かあげたか?
男なんてそんなものじゃないかとも思うが。
「そんなことないですよ。鬼頭君は旅行券をプレゼントしたって。温泉旅行ですって。高田さんはおしゃれなレストランでランチを一緒にしたっていうし。」
なんだ、俺に聞くより先に皆に聞いてるんだな。もちろん高田にまで。
本当にどれだけ接触してるんだ?
「高階と成井は?」
「2人には聞いてませんが高階さんも温泉だったようです。坂井さんが言ってました。」
「私は他の人より家賃もかかってないし食費もその他も。その分豪勢にしたいんですが。」
「なあ、もしかと思うが、うちにいくらかお金を入れてないのか?」
ん?という顔をしている。マジか。
「親元で暮らす奴はだいたい食費と言われて3万くらい徴収されるって聞くぞ。ないのか?もしかして携帯代とかも親がかりとは言わないよな?」
「えっと、分からないです。親の名前で契約してて・・・。」
「本当に豪勢にしろ。誰よりも豪勢にしろ!」
不満そうにこっちを見上げる玉井。
『自分は何をしたかも忘れてるのに偉そうに。』
その、つぶやきは大きく。
「聞こえてるぞ。」
「だって偉そうなんですもん。相談したのに考えてくれないし。」
「仲がいいのは分かってるから三人で旅行に行って豪華な食事をすればいいじゃないか。」
そう言ってみた。
「もっと具体的にお願いします。場所はどこがいいとか、どこのレストランはおすすめだとか。年上なりの経験から教えてください。」
「そいうことこそ高田に聞けばいいじゃないか。あいつはお前の為なら親切に考えてくれるぞ。」
「せっかくなので近藤さんも親切に考えてください!」
何かイライラすることでもあったのか?
「どうかしたのか?」
「別に。」
「顔が怖いぞ。」
「これが私の顔です。」
お手上げだ。勝手に不機嫌になってろ。付き合いきれん。
めんどくさいのは苦手だ。
「今すごく面倒だって顔しましたよね。」
鋭い。
「何で急に不機嫌になるんだよ。」
「記憶を無くすよりはいいじゃないですか。」
「しつこいぞ。無くしたくて無くしたわけじゃない。覚えてないだけだ。」
「一人だけ覚えてないなんて都合がいいです。」
何だ、何かあったのか?もしかと思うが・・・、いや無いぞ・・・無いぞ、あるわけないが。
「何かあったのか?もしかと思うが何かしたとか、傷つけるようなことを言ったとか?」
「何もされてません、言われてません。ご心配なく。」
じゃあ何だ?
二本目のビールを飲んでテーブルに置く。
「お開きにしよう。先に歯を磨くから。」
立ち上がって洗面台に向かう。ちらりと見た玉井の表情はぼんやりしていた。
面倒くさいことこの上なし。
歯磨きを終えて戻るとある程度片付けられていた。
「じゃあ、寝るから。ソファから落ちるなよ。おやすみ。」
「・・・おやすみなさい。」
寝室の扉を閉めて横になる。向こうでゆっくり動く音がする。
ベッドに横になり考える。
何か言ったのか?思い出した方がいいのだろうか?
今頃言われてもしょうがない。
あの後も普通だったから・・・・問題はなかったと思える。思おう。
それにしても高田の接近ぶりは何なんだ?
別に他の課の後輩を可愛がっても問題はないんだ。
いや、彼女がいるからただの話し相手だとは思うが。
だが、相手がある事で。簡単に割り切れないのが人の気持ちで・・・。
本当に出禁の意味がない。
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