お守りマンはきっとすぐそこにいます

羽月☆

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8 新しい友達が出来た日

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思わずデザートまで食べた日。
響さんと一緒に食べないのかと聞かれた。

ないなぁ、数回だけ夜に一緒に食べたことがあるけど、なんとなく大人っぽいチョイス・・・むしろオヤジ臭いような渋いチョイスにびっくりした。
自分一人だと絶対頼まない品がテーブルに並ぶ。

初めてのそれらに恐る恐る箸をつけた。
結構おいしくいただけた。

デザートは見向きもしない感じだった。
夜だからだろうか?
スタイルキープのために?って思ってた。



ここはずっと行きたかったお店だった。
友達と行くことがあればと思ってた。
まさか知り合ったばかりの男の人と一緒に行くことになるとは思わなかった。

部屋に戻って、冷静に考える。
返事をすると約束した。

心の中では決まってるんだけど・・・・、どうなんだろう。
少し前の苦い経験があって。
だって、カフェで声かけられるのも同じだった・・・。


思わぬ申し出を受けて、真っ先に響さんに相談したいと思った。
何してるだろうか?
彼氏がいないなんて、まさかの事で、私生活が見えない。

まさか部屋が汚いとか、昼間から親父のように飲んでるとか?
いっそエステに行ってるとか、ヨガなどに通ってるとか言われた方がピンとくる。

『お休みの日にごめんんさい。実は相談したいことがあって、明日、もしくはそれ以降、ランチを一緒に出来ませんか?相談料の代わりに奢ります。』

そう送ってからもドキドキしていた。

いつもさっぱりとしたやり取りで、今までのやり取りでも絵文字も、スタンプもない。
用件のみ、みたいなやり取りだった。
仕事仲間。そんな感じ。・・・もしくは、それ以下・・・って何?
それでも他に思いつかなくて。
まさか本人を知ってるってことはないだろうけど、どうだろう。

そう思ってたら、
電話が来た。
響さんから。

「もしもし、こんにちは、響さん。」

『柴田さん、どうしたの?今大丈夫?家?』

「はい、部屋にいます。あの相談事があって、来週にでも時間をと思ったんです。」

そう書いたつもりだけど。
まさかすぐに電話が来るとは思わなくて。

『会って話した方がいいなら来週でもいいよ。電話でも良ければ、早い方が良ければ、今でも、どうせ時間はあるよ。』

「・・・・・じゃあ、聞いてください。」

そう言われたら、早い方がいいかと思って、今日の出来事を話した。


『本当に?すごいね。偶然だとしたら、向こうは今頃飛びあがって喜んで、携帯握りしめてるかもよ。』

「返事は、時間をくださいと言いました。それで相談したいと思ったのが響さんで。」

『思い出してくれてありがとう。でも、何で?聞く限りその場で返事してもいいくらいの感じだけど。』

「それは・・・・、」

何でと言われても、知らない人だし。

『いいんじゃない、本人が言うように友達からって言って何度か会ってみれば。』

「そう思いますか?」

『うん、だってさっきもすごくうれしそうに話してくれた気がする。あのバカ男の話とは違うじゃん。全然違うよ。でも気になるなら明日にでも偵察に行ってみようかな?』

「ダメです、バレます。響さんは私の隣の綺麗な人って覚えられてるんですから、安達さんも知ってます。」

『いいじゃない。私の大切な友達を悲しませたら黙ってないわよって、それくらいの覚悟はあるのねって、目で伝えてくる。』

大切な友達だと言われてうれしくて・・・・。
それ以外の内容が飛んでしまうくらいに。

『大丈夫よ、嘘嘘。そんなことしない、変なことしないから、安心して。』

沈黙を勘違いされたかもしれない。

『返事して、違うって思ったらその時にまた相談にのるし。』

「はい。その時はお願いします。」

『うん、うまくいきそうじゃない。勝手にずるいなあ。負けないように頑張ろうっと。』

そんな絶対言いそうにないセリフ。
本気を出したら、秒速で負けますから。

「ありがとうございました。返事します。」

『無駄な駆け引きはいらないからね。まあ、しそうにないけど。』

そう言って話を終わりにした。


バッグを引き寄せて名刺を取り出す。
今は何してるだろう?
ジムに行ってるかもしれない。
・・・・だから返事を待って電話を握りしめてるなんてないから。

メールの画面に間違えないようにアドレスを打ち込んでいく。

デザートをごちそうになったお礼と、まずは友達から、お付き合いさせてくださいと書いた。

一度読み返して思い切って送信した。
確認のメッセージもすぐに『はい』をタップして、一気に送った・・・・つもりで。

すごく疲れた。
あんまり時間はかけなかった。シンプルな文面。
それでも自分ではすごく思い切った行動だったから。

よく考えると、響さんに声をかけられたのも、あの人がきっかけだし、私はそれだけでもすごく感謝してる。
全然・・・多分、全然恨んでない。
あの時は楽しかったし。平凡な毎日にちょっとした楽しみがあって良かった。
会ってる間に嫌な思いをしたことはない。

あの話を聞いた後しばらく連絡が来なかった間に、こちらから無かった事でいいですと送ったから。
それ以降会社で会うこともないし、連絡が来ることもなく。
そのまま大阪に行ったらしい。

タイミングとしては良かった。
ズルズルとだまされるより、数ヶ月で済んだし。

そんことを思っていたら携帯が着信を知らせてくれた。

まさかと思って見た。
知らないアドレスからのメール。
いたずらメールじゃない事を祈りつつ、開く。

さっき登録したメルアドじゃない。
携帯のメルアドになってる。
よく見ると、安達さんだと分かるメルアドだった。

『さっそくメールありがとうございます。』というタイトルで。

開いたら、今日のお礼が同じように書かれていた。
私が送った数倍の長さで。
そして返事したことに対しても、うれしいと。

『じゃあ、友達からお願いします。精一杯、地位向上をめざします。』と書かれていた。

アドレスを新しく登録する。

『てっきりジムに行かれているんだと思いました。実は仲良くしてる人に相談しました。1人じゃなかなか決められなくて。あらためて、よろしくお願いします。』

そう送った。

『ジムには行きました。時々話をするボクサーの卵の子に『浮かれてる』と言われました。隠せなかったようです。楽しい休みになりました。こちらこそありがとうございました。夜に電話してもいいですか?時間はお任せします。良かったら時間を指定いただけますか?」

直接今、電話した方が早いのではないかと思うけど。

『8時頃でどうでしょうか?』

すっかりお風呂にも入った状態で待ちたい。
その時間をお願いした。

『じゃあ、その時間に・・・・あ、電話番号知りませんでした。』

そう書かれて、電話番号を教えてもらった。

自分のIDと電話番号を教えて登録してもらう。
すぐに分かるID、やはりそのまま名前があるから。
アイコンがビール瓶なのはなぜだろう。
プロテインとかじゃないだけでもいいか。


シフト勤務だと言った。週末が休みだとは限らないってことだ。
自分がさっそく次はいつ会えるのだろうと考えてるのに気がついた。
すごく楽しかった。
優しくて、穏やかそうで頼りになって。
好きにならない人はいないのでは?


今度は信じたい。
前は疑うことも忘れたけど、今度はそんな事思い出しもしない、そんな出会いにしたい。
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