内緒にしていた視線の先にいる人。

羽月☆

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2 本当にドキドキのエピソードがあったんだと、実感!

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三年間、ずっと同じクラスだった子はいない。
ただ、去年仲の良かった子が一人一緒のクラスになった、それはラッキーだった。
そして一年の頃仲良くしていた子もいた。
そうして出来上がったグループは収まりのいい人数の六人。

そうしてあちこちにグループが出来る。

学校にいる間は一緒にいることが多いけど、さすがに放課後はそれぞれが塾に行ったり、習い事を続けたり。

べったりと連絡を取るほうじゃないけど、学校ではよく話をする。


「でも同窓会ってやっぱりこのクラスでやるじゃない?三年のクラスのメンバーって大事だよね。」

そう言われて気がついた。
そうなんだ。
そうか・・・・・。

一、二年のクラスに特別な思いいれもない、じゃあ、このクラスでもいいと思う、まあそんな感じの私だ。
それもこの六人の誰かが行くなら行くっていうレベルだと思う。
同窓会のときに、その年齢の時に、自分がどこで何をしてるのか分からないから。



たとえクラスが違っても頭のいい子とか、運動神経のいい子、そのほか特別にすばらしいギフトを持っている子は有名だったりする。

委員長もずっと成績優秀で名前が上がる人だった。
だからといってリーダー的な感じはなくて控えめでもある。
男子も女子も話しかけて分からないところを聞きやすいから、休み時間とテスト前にはよく人に囲まれるようになった。
塾の宿題を教えてもらう強者もいた。

そんな現象を時々見てたけど私が教わることはなかった。

「汐さんも宿題まだなの?」

ぼんやり見てたらそういわれた。
私が教科書を手にして委員長を見ていたから、そう思われたんだと思う。

「ううん、やってきてるよ。」

「もしかして、森友君はまだ?」

「最後が分からなかったんだ。出来てるなら教えてもらえない?」


あんまり二人で話したことはなかったと思う、そのときが初めてってくらいだった。
でもグループでいるとお互いに近くにいることはあった。

隣の席に座られたからノートを広げて見せた。

丸ごと写すことはしないで解き方をブツブツと言っていて。
なるほど・・・・、そうつぶやいて自分のノートに向かった。
見たのは途中までだと思う。
それで十分だったんだろう。


「ありがとう、助かった。」

「別に大丈夫。」

「また分からなかったら教えて。」

「別に教えた感じはなかったけど。」

「十分だよ。解き方のヒントをもらえれば後は自分でやらなきゃね。」



その後すぐ先生が来て、森友君は自分の席に戻っていった。
最後にありがとうと、もう一度言われた。

「うん。」その一言だけ返した。

それからも数回だけ、そんなことがあった。

それから集団でいても、その中で近くにいたら少しずつ話をするようになった。
そうなると私の友達も、森友君の友達も一緒に話しをするようになった。

他の男子にも話しかけられても話をするけど、一番多いのは森友君だったと思う。
だけど反対はそうじゃない。

森友君に話しかけるのは私が一番って事はなかった。
それは明らかにゆめちゃんの方が多かった。

私が近くにいたら私も参加したけど、いないときでも一人で話しかけていた。

話しやすい男子が揃ってる気がしたけど、明らかに集中的に多かったと思う。
うっすらとそう思ってたけど、はっきりと聞いたりはしなかった。

森友君は委員長とも仲がいいみたいだった。
クラスで一緒にいるのはあんまり見たことなかったのに、放課後図書室に一緒に来るのを何度か見た。

図書委員だった私は当番の日は放課後を図書室で過ごすことが多かった。
三年の夏で当番は免除されて、それでも時々顔を出していた。
本を借りることもあるし、静かな場所で一人で勉強をすることもあった。
宿題を済ませてから、教科書を机の中において帰ることもあった。

集中して数学の難問に挑戦して、やっと解けて満足して顔を上げた。

正面に森友君がいてびっくりした。

何故かびっくりしたのはお互い様で。

「なんだかすごく楽しそうだった。」

「そう?すごく考えてて・・・・うなり声出てなかった?」

「ああ、そういえば・・・・・。」

「ええっ。」

恥ずかしくて普通に声を出してしまって、慌てて周りを見た。

ただテスト前でもない普通の放課後で、もともと図書室にはあまり人もいなかったから注目を浴びることもなかった。


「ごめん、冗談。全然聞こえなかったよ。」

そう言われて安心した。

「でも汐さんがそんなに悩むんだったら僕には無理かも。最後の問題?」

「最後から二つ目だよ。最後はもっと難問かな?」

プリントを見る。

森友君も数学のプリントを探し出して見ている。

「ああ・・・・まったく・・・無理そう。」


そういって顔を上げた。

「もう少しいる?」

「うん、最後までやっていくし、あと少しほかもするつもり。」

「じゃあ、頑張るけど、無理ならここで教えてもらってもいい?」


「うん。いいよ。」

「ありがとう。じゃあやってみる。」


そういってプリントを広げて真剣な顔で見つめている。

私は自分のプリントを見て最後の問題に取り掛かった。
集中して頑張った。
それでもうならないようにした。

自分の部屋で勉強するときは独り言が増える。

ほとんど口が悪くなって文句を言いながら解く、そして解けた後は自分を褒めちぎりいい気分になる。

さすがに部屋以外では気をつけてる。


最後はなんとなく解き方が見えたので、安心した。
後は数字を書いていけば答えにたどり着きそうだった。

顔を上げたら、上を見てる森友君がいた。


「どう?」


「やっぱり駄目。」




「ヒントをお願いします。」


いつものようなやり取りで少しずつ難しい顔をした森友君が笑顔になっていくのを見ていた。
私もそんな顔をしていたのかもしれない。
さっきは楽しそうだったと言われたけど、それは最後だけ、解けると思った瞬間からあと。

一問解き終わっただけで達成感を味わってる。
気持ちは分かる。

ただ、その下の問題も面倒な感じだけど。


私は他のプリントを出して始めた。


ただ、単純に穴を埋めていく英語。
分からなかったら教科書を見ればいい。
辞書を引けばいい。

途中前のほうから声がして、困った顔をした森友君がいた。


「最後だよね。それはね・・・・。」

同じようなやり取りが繰り返された。


私も図書室で勉強するのは時々だった。
だからそんなやり取りがそう何回もあった訳じゃない。
本当に4回くらい、偶然一緒になった時、数学の宿題が難しかった時、お互い一人だった時。


それでも数学は私のほうが得意だとお互い分かった。

もともと好きだったけど、前より何とか自力で解きたいって思うようになった。

皆でいる時はそんな話はしない。
適当な話題を皆でつついてるくらい。

やっぱり私よりゆめちゃんが話しかけてるほうが多かったし。
ゆめちゃんはそのことは知らないと思う。
教えるような特別な事でもないと思ってた。
だから内緒じゃなくても、あえて教えることもしなかった。




そして、二度ある事は三度あると言うけど。
でも、その前に一度では終らなくて、また頼まれた。
しかもあれから数日後だった。


「ねえ、内緒で、お願いがあるの。」


自分の部屋でのんびりと漫画を読んでいるときだった。
二次元的な目の大きな女の子とさらさらヘアの男の子のラブラブな話に現実逃避をしていたとき。

友達から電話がかかってきた。
何だろう?

そう思って手にあった漫画をふせた。



どの子も節目を迎える前に何かをどうにかしたいらしい。

「どうしても言いたいの。卒業して会えなくなる前に伝えたいの。」

演劇部所属の後輩に告白したいと言われた。
どうぞ、ご自由に、そう言いたいのに、またしても付き添いを頼まれた。


さすがに演劇部も後輩もまったく接点がなく、どんな子かも知らない。
いつ仲よくなったの?
何がきっかけ?
そして年下って、どんな子??

興味があって、ちょっと見たいと思ってしまったのも正直なところ。


『いいよ。付き添うくらいだったら、一緒に行くよ。』

そう答えた。



自分の知らないところで色んなドラマはあるらしい。
わざわざ二次元に求めなくても、その辺にあるらしい。


本当に?ある?


これで二度目。このあと三度目があったとしたら、びっくりだ。
本当に二次元が現実に沿ってるって事らしいと認めるしかないけど。


そして、今度の思い出作りはうまくいった。
だいたい向こうが待ち合わせ場所に来た時点で真っ赤になっていた。
私はそっと観察した。

すごく可愛い子だった。
年下かあ・・・・・。

しっかり者に見える瞳ちゃん。
こんな子が好きだったんだ。

だいたい相手も話の内容は想像してただろう。

返事を聞いた瞬間、自分がただの邪魔者に思えて。

ゆっくり歩き出した。

手を振ったけど、二人とも見てなかったと思う。
別にいい。
待ってとも、ごめんねとも、ありがとうすらなかったけど。


良かった。
一度目もこんな感じだったら・・・・・どうだっただろう。


可愛い年下の彼氏。
美人の大学生の彼女。


羨ましい。
三次元にもいろんなドキドキはあるらしい。

さすがに夜遅くになってお礼のメッセージが来た。

そうだよね、あって然るべし。

『良かったね。すごく可愛い子だった、お似合い。関係ないけど見届け人の私もうれしいよ。』

そう送った。
何となく一勝一敗みたいな付添人の成績。



前のとき、一度目の日を思い出す。



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