「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

私はヒロインだもの《チェリー視点》

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 前世で大好きだった、乙女ゲーム『青の箱庭』
 自分がその世界に転生したのだと知った時は、歓喜したわ。だって、ピンク色の髪と瞳。それは私がヒロインだっていうことだもの。

 なのに、私がいるはずの場所に、平民の女がいるじゃない。しかも、ピンク色の髪と瞳をしてるのよ。

 だから、排除しようとしたのに、どうしてマリ様もレイ様も、私のことを見てくれないの?

 それに、マリ様に婚約者だなんて。
『青の箱庭』は乙女ゲームなのよ?婚約者なんているわけないじゃない。

 だって、乙女ゲームはヒロインのための物語だもの。

 マリ様やレイ様が私を見てくれないのも、クランたちとほとんど会えてないのも、全部ぜんぶ、あのヒロインもどきがいけないのよ!

 きっと、これはバグなんだわ。
バグは修正しないと。

 あのもどきを消したら、ちゃんと私がヒロインの、乙女ゲームの世界に戻るのよ。

 だからー
あのヒロインもどきを、処分しようとしたのに。

 私は男爵令嬢なんだから、平民のもどきなんて私に逆らえるはずないのに。

 どうして?
マリ様も、レイ様も、クランもルビスもニコラスも、どうして私を睨んでいるの?

 どうして、私は拘束されているの?
なんで?なんで?

 だって、私はヒロインなのよ?
みんなは攻略対象で、私のことを好きになるのが当たり前じゃない。

「ねえっ!どうしてこんなことするのッ?私は、私はヒロインなのよ?マリ様っ、レイ様ッ!離すように言ってよっ」

「前も言ったよね?誰の許可を得て僕のことをレイ様だなんて呼んでるの?」

「だって、レイ様は私のことを好きだから、レイって呼んでって・・・私だけは特別だよって・・・」

「ハァ。妄想も大概にしてよ。僕が好きなのはイザベラだけだよ。僕の美しき女神。彼女だけが僕の特別で、孤高の存在。それを君なんかが?何の勘違いか知らないけど、怒りで殺してしまいそうだよ」

 何、言ってるの?
イザベラって誰?どうしてレイ様は私のことを、そんな目で見るの?
 だって、教皇の子息で、その重責に苦しんでるレイ様を救うのは、聖女であるヒロインの役目で・・・

 イベントをこなしてないから?
だから、みんな私のことを見てくれないの?

 だって、バグのせいで全然イベントが発生しないんだもの。
 同じクラスで授業を受けながら、マリ様やレイ様と距離を縮めていかなきゃなのに、同じクラスになれなかったし。

 あのもどきが同じクラスにいるせいよ。だから、もどきを排除したら、バグは治まるはずだったのに。

 マリ様に助けを求めようと、顔を上げた私の元に、あの日、私に文句を言ってきた女が近付いて来た。

 銀の髪に水色の瞳。
綺麗な人形みたいな女だけど、こんなモブいたっけ?

 でも、ヒロインをいじめるモブがいるから攻略対象との距離が縮まるんだわ。
 じゃあ、これはイベントなのかしら?
私はマリ様ルートに入ったってことかも。

 この後、颯爽とマリ様が私を救ってくれるんだわ。

 
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