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プロポーズ

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「素敵な方だと思います」

 頬を赤らめて俯きながら答えるアナに、ルーナは満面の笑みで頷く。

 乙女ゲームのヒロインは嫌いだけど、恋する乙女は可愛い。

 それが好感の持てるアナともなれば、もう全力で応援したくなるというものである。

「それは、殿下のことが好きだと解釈してもよろしくて?」

「・・・身分不相応だとは分かっています。ただ・・・聖女としてライアン殿下の御世をお支え出来ればと思っています」

 アナは身分を気にしているようだけど、アデライン王国は下位貴族でも王族に嫁げるのだ。

 肝心なのは、本人の資質だとされていて、アナに関してはその点は問題ないとルーナは思っていた。

 魔獣出現イベントあたりから、中々良い雰囲気だとは感じていたが、勝手に先走った後に勘違いだと分かったら大変である。

 だから、アナには申し訳ないが確認させてもらったわけだ。

「・・・だそうですわ、ライアン殿下」

 ルーナの言葉に、アナは自分の後ろに開いた扉を、おそるおそる振り返る。

 そこには、煌めく金髪に赤い瞳をした美丈夫が、申し訳なさそうに、だけどどこか嬉しそうに立っていた。

「・・・っ!」

「すまない、オフリー嬢。こんな盗み聞きのような真似をして」

「ごめんなさい、アナ様。私が、殿下に隠れているようにお願いしたの。殿下がアナ様に想いを伝えたいとおっしゃったのだけど、私はアナ様のお気持ちの方が大切だから、本心を知りたくて」

 アナが戸惑ったようにルーナに視線を向けると、ルーナは何故こんなことになったのか話し始めた。

「こないだの魔法学の課題の件で、王妃殿下がまた私を婚約者にと言い出されたそうなのよ。まぁそれは断れば良いのだけど、実際問題そろそろライアン殿下もリリアナ様も婚約者を決めなければならない時期が来てるの。それで国王陛下がお二人に想う相手はいるのかと尋ねられたそうでね。二人ともお相手の名前は出さなかったのだけど、一ヶ月後までに決まらない場合は、陛下がお選びになった婚約者と会うように言われたそうなのよ」

 だから、ライアンもリリアナも、あたって砕けろの覚悟で想い人に告白することにしたそうだ。

 ライアンは、アナが受け入れてくれるとしても、政略結婚するにしても、立太子する決意をした。

 そのことで、ランスロットがフィオレンサ公爵家を継ぎ、リリアナは降嫁することに問題はなくなった。

 ライアンはアナの正面に立つと、片膝をついた。

「アナ・オフリー嬢。ライアン・アデラインが求婚いたします。どうか、僕の婚約者になって下さいませんか」

 それは乙女ゲームや漫画の中で、攻略対象であるライアンが、ヒロインにプロポーズするシーン、そのものであった。



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