私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

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63.悪目立ちすぎよ

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「マデリーン王国フローレンス公爵家ご令嬢様とお見受けいたします」

 サウスフォード王国の王太子殿下の護衛騎士に礼を取られ、尋ねられたけど・・・

 違いますって答えてもいいかしら?

 どう考えても面倒事の匂いがするわ。

 否定しても無駄でしょうけど。
私だけならともかく、リュカの顔も覚えているのでしょうね。

「何かご用かしら?私、馬車に乗りたいのだけど」

「お願いします!話を聞いていただけませんか!ば、馬車はこちらで準備します。お送りしますから!」

「王太子殿下のことに関してなら、他言するつもりも、関わるつもりもありませんわよ」

 関わりたくないから出て行こうとしていたと、正直に口にできないのが貴族の面倒なところね。

 それでも、不敬を問われないギリギリの正直な気持ちを告げる。

 王太子殿下の護衛騎士だから、おそらくは侯爵家あたりの次男とかよね?

「いえ、そうではなく、お力を・・・どうかお力をお貸しください!」

「何故お嬢様が、他国の、しかも名前すら知らない相手に力を貸さなければならない?」

「おっしゃることはごもっともです!ですが、どうかお願いします。俺・・・私にできることならば、どんなことでも致します!」

「・・・」

 私は、小さくため息を吐いた。

 周囲から注目を集めてるし・・・仕方ないわね。

「お力になれるかは明言できませんが、お話は伺いますわ」

「ほ、本当ですかっ!ありがとうございます!ありがとうございます!」

「お嬢様、よろしいので?」

「こんなに周囲の注目を集めておいて、無視して馬車に乗れないわよ。それにすでに早朝一便は行ってしまったもの。次の便を待つ間、好奇の目に晒されるのはごめんだわ」

 ギリギリまで待ってから、馬車乗り場に来たのが仇となった。

朝イチの便は出てしまい、次の便を待つ間、私は注目を集めてしまうだろう。

 すでに宿は引き払ったし、カフェに行ってもこの状況を見ていた人がいるかもしれないし。

 どんな内容かは知らないけど、聞くだけなら聞いてあげるしかないか、と諦めの境地で頷いた。

「とりあえず、場所を変えましょう。私、サウスフォード王国のことは詳しくないのよ。案内してちょうだい」

「はいっ!こちらへどうぞ!馬車を準備してあります」

 嬉しそうな騎士に、ふと気になったことを尋ねた。

「今日は護衛の仕事は?」

「今日は殿下は王宮から出ませんので、休暇をいただきました」

「そう。ならいいけど。あと、あなたお名前は?」

「もっ、申し訳ございません。名乗りもせずに。サウスフォード王国王太子殿下付き近衛騎士のフレド・メインクーンと申します」

 あら?本当に侯爵家のご子息だったわ。
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