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64.そんなことを言われても
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案内されたのは、品のあるレストランだった。
当然、まだ開店していないのだが、話を通しているらしく近衛騎士が顔を見せると店内に案内された。
「素敵なところね」
「ここは高位貴族御用達のレストランです。予約が半月以上埋まっているのですが、開店前に借りることになりました。ここなら個室があり、防音も確かなので」
近衛騎士自らがお茶を入れ、そしてリュカにカップを選ぶように言う。
リュカが選ばなかったカップからお茶を飲み干し、毒が入っていないと示した。
私にカップを渡す前に、リュカが両方のカップのお茶を銀のスプーンで混ぜる。
安全を確認してから、私に差し出した。
私は公爵家の娘で、王太子殿下の婚約者だったから、一応は毒の耐性の訓練は受けている。
もちろん、毒が効かないわけではなく、耐性があるだけで即死にならないだけだけど。
近衛騎士の彼も王太子殿下の護衛をしているから、私たちの行動を咎めたりしない。
いくら耐性をつけていても、摂取しないにこしたことはないし、その程度の危機管理をしていないようでは問題だもの。
お茶で唇を湿らせてから、近衛騎士フレド・メインクーン様は口を開いた。
「先日ご覧になったように、恥ずかしながら我が国の王太子殿下は婚約者のいる身ながら、他の女性に執心しております」
そんなこと、他国の人間に話して良いのかと思うけど、まぁ目撃してるのだから隠しても意味はないわね。
「ですが、アンブレラ王国との婚約は、大切な国交の一環で、絶対にこちらからの解消などは出来ないのです。ですが、殿下は何度言ってもご理解くださらなくて・・・」
「でも、婚約時代から浮気するような相手と、婚姻したら王女殿下も不幸よ」
「・・・はい。その通りです。そこで、お願いです。王女殿下側から婚約解消していただけるよう、フローレンス公爵令嬢様からお話いただけませんか?」
「私が?」
「実は、来週に王女殿下がいらっしゃるのです」
ああ。なんとなく理解出来たわ。
王太子殿下付きの近衛である彼が、自国の王太子殿下の不貞を王太子殿下の婚約者に告げるわけにはいかない。
でも、国と国の政略が絡んでいる以上、もし不貞がバレたら大問題になる。
だから、第三者である私から、こっそりと王女殿下に話をして、アチラから婚約解消をしてくれるように勧めて欲しいというわけね。
アンブレラ王国の王女殿下とは、面識がないのよね。
第五王女殿下だから、公務でお会いすることもなかったし。
というか、親はどうしたのよ!
国王陛下と王妃殿下は、息子の不貞をご存知なの?
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近衛騎士の彼も王太子殿下の護衛をしているから、私たちの行動を咎めたりしない。
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お茶で唇を湿らせてから、近衛騎士フレド・メインクーン様は口を開いた。
「先日ご覧になったように、恥ずかしながら我が国の王太子殿下は婚約者のいる身ながら、他の女性に執心しております」
そんなこと、他国の人間に話して良いのかと思うけど、まぁ目撃してるのだから隠しても意味はないわね。
「ですが、アンブレラ王国との婚約は、大切な国交の一環で、絶対にこちらからの解消などは出来ないのです。ですが、殿下は何度言ってもご理解くださらなくて・・・」
「でも、婚約時代から浮気するような相手と、婚姻したら王女殿下も不幸よ」
「・・・はい。その通りです。そこで、お願いです。王女殿下側から婚約解消していただけるよう、フローレンス公爵令嬢様からお話いただけませんか?」
「私が?」
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ああ。なんとなく理解出来たわ。
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だから、第三者である私から、こっそりと王女殿下に話をして、アチラから婚約解消をしてくれるように勧めて欲しいというわけね。
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