私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

文字の大きさ
64 / 105

64.そんなことを言われても

しおりを挟む
 案内されたのは、品のあるレストランだった。

 当然、まだ開店していないのだが、話を通しているらしく近衛騎士が顔を見せると店内に案内された。

「素敵なところね」

「ここは高位貴族御用達のレストランです。予約が半月以上埋まっているのですが、開店前に借りることになりました。ここなら個室があり、防音も確かなので」

 近衛騎士自らがお茶を入れ、そしてリュカにカップを選ぶように言う。

 リュカが選ばなかったカップからお茶を飲み干し、毒が入っていないと示した。

 私にカップを渡す前に、リュカが両方のカップのお茶を銀のスプーンで混ぜる。

 安全を確認してから、私に差し出した。

 私は公爵家の娘で、王太子殿下の婚約者だったから、一応は毒の耐性の訓練は受けている。

 もちろん、毒が効かないわけではなく、耐性があるだけで即死にならないだけだけど。

 近衛騎士の彼も王太子殿下の護衛をしているから、私たちの行動を咎めたりしない。

 いくら耐性をつけていても、摂取しないにこしたことはないし、その程度の危機管理をしていないようでは問題だもの。

 お茶で唇を湿らせてから、近衛騎士フレド・メインクーン様は口を開いた。

「先日ご覧になったように、恥ずかしながら我が国の王太子殿下は婚約者のいる身ながら、他の女性に執心しております」

 そんなこと、他国の人間に話して良いのかと思うけど、まぁ目撃してるのだから隠しても意味はないわね。

「ですが、アンブレラ王国との婚約は、大切な国交の一環で、絶対にこちらからの解消などは出来ないのです。ですが、殿下は何度言ってもご理解くださらなくて・・・」

「でも、婚約時代から浮気するような相手と、婚姻したら王女殿下も不幸よ」

「・・・はい。その通りです。そこで、お願いです。王女殿下側から婚約解消していただけるよう、フローレンス公爵令嬢様からお話いただけませんか?」

「私が?」

「実は、来週に王女殿下がいらっしゃるのです」

 ああ。なんとなく理解出来たわ。

 王太子殿下付きの近衛である彼が、自国の王太子殿下の不貞を王太子殿下の婚約者に告げるわけにはいかない。

 でも、国と国の政略が絡んでいる以上、もし不貞がバレたら大問題になる。

 だから、第三者である私から、こっそりと王女殿下に話をして、アチラから婚約解消をしてくれるように勧めて欲しいというわけね。

 アンブレラ王国の王女殿下とは、面識がないのよね。

 第五王女殿下だから、公務でお会いすることもなかったし。

 というか、親はどうしたのよ!
国王陛下と王妃殿下は、息子の不貞をご存知なの?
しおりを挟む
感想 214

あなたにおすすめの小説

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

処理中です...