え?後悔している?それで?

みおな

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義母の故郷がゲスだった件

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 会場から立ち去るルーナを、ジェニッタが蔑んだ目で見ていた。

 娘と同じピンク色の髪と瞳をしたジェニッタは、ベネツィオ王国から遠く離れた小さな小国に生まれた。

 幼い頃から可愛いと、親や周囲から言われたジェニッタは、少々思い込みの激しい子供だった。

「白馬に乗った王子様が、私を迎えに来てくれるの」

 可愛いと、お姫様みたいだと言うものだから、ジェニッタは自分のことを誰もが望むお姫様だと思い込んだ。

 確かにジェニッタは可愛かった。
その小国一の美少女だと言えなくもない。

 だけど、ジェニッタにはしかなかった。

 高位貴族のような王族のような、家格も、教養も内側から輝く品格も、優雅な所作も。

 小国の、その中でも末端の男爵令嬢。
見た目が優れているだけの、それが衰えれば何の価値もない娘。

 それが、大きな勘違いをしたジェニッタを見る周囲の認識となった。

 だが、可愛いことには変わりがない。

 そしてあまり争い事のない小国でも、愚かなことを考える人間はいる。

 ある日、ジェニッタは街での買い物帰りに男に路地に引き摺り込まれた。

 娘が可愛いことを認識していた両親は、出かける時は必ず馬車で、護衛役として家令と行くようにとジェニッタに言っていた。

 だがその日、手が離せない仕事中の家令は、一時間ほど待って欲しいとジェニッタに頼んだ。

 お姫様な自分を優先するのが当然だと思っているジェニッタは、勝手に馬車を出させて出かけることにする。

 侍女も伴わず、馭者と二人で向かった街。

 周囲の自分を見る目に浮かれて、ジェニッタは気づかなかったのだ。

 買い物途中から、ずっとジェニッタを追っている男がいることに。

 そして、一瞬の隙をついて裏路地に連れ込まれた。

 口を塞がれ、昏倒させられたジェニッタは、そのままある場所に連れ込まれる。

 戻らないジェニッタに、顔を青くした馭者が男爵家に駆け込んだのは、ジェニッタが連れ去られて一時間後。

 その後、両親は騎士団に駆け込み、娘の捜索を願い出た。

 しかし、ジェニッタは見つからなかった。

 ジェニッタが見つかったのは、八ヶ月後。

 そのお腹は大きく膨らんでいた。

 ジェニッタを攫ったのは、自国の王族の侍従。

 主人である王子の命で、ジェニッタを攫い、王宮内の貴族牢でジェニッタを拘束していた。

 当時のその小国では、だった。

 見目麗しい女性を貴族牢に入れ、自分たちの欲の対象とする。
 そして飽きた女性を、物のように簡単に捨てる。
 
 愚かな行為だが、当時はそれがまかり通っていたのだ。

 そしてジェニッタは、その毒牙にかかったのだった。

 
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