悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな

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悪役令嬢は美人が基本

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「改めてご挨拶いたしますわ。わたくし、ヴァイオレット・マディソンと申しますわ」

 そう言ってにっこりと微笑ったヴァイオレット様は、超、超、美人だった。

 公爵家の令嬢としての品もあって、何より所作が綺麗。

 猫のようなつり目が少しキツい印象を与えがちだけど、それを全体的な品の良さがカバーしてる感じ。

「はじめまして、マディソン公爵令嬢様。私はウィザード伯爵家が娘、ルリアと申します」

 何故か、悪役令嬢様と一緒にお茶をすることになってしまった。

「お連れの方もどうぞお席に。うちの侍従も座らせていいかしら?こんな図体の大きいのが立ってたら、お店の邪魔になりそうだもの」

 クスクスと微笑うヴァイオレット様は、本当に見目麗しい。

 乙女ゲームのヒロインであるルリアも、確かに超美少女だ。
 どちらかといえば可愛い系なルリアと違い、美女系のヴァイオレット様。

 しかもアニメで見た時より、何倍も美人度が増してる!

 しかも、アニメや小説版では、ルリアはもちろん侍従にもキツい物言いしてたのに、何か優しい!

 でも女子ばかりのこの席に、さすがに一緒に座るのは気が引けたのか、彼は座ろうとしない。

「ルカ。座りなさい」

 それでも、主人であるヴァイオレット様が重ねて言うと、渋々という様子で腰をおろした。

 ルカ・クロスヴァイン。
彼は、幼い頃にヴァイオレット様に拾われて育てられた。

 乙女ゲーム小説版やアニメでは、ヴァイオレット様はルリアを虐めたことで婚約者に婚約破棄され、断罪された後に国外追放になる。

 追放されたヴァイオレット様を追いかけた彼は、野党に襲われて命を落としたヴァイオレット様を発見。

 絶望と復讐心に支配された彼は、魔王と化し、聖女ルリアの前に立ち塞がる。

 聖なる力で、魔王を浄化したルリアは、その時のパートナーである攻略対象の王子と幸せになった。

 というのが、小説やアニメ版のエンドだ。

 はっきり言って、ご都合主義が過ぎる。

 自分を助けてくれた主人であるヴァイオレット様を失い、その原因となったルリアや元婚約者である王子を恨むことの、何が悪いのか。

 恋愛感情かどうかまでは分からないけど、ルカにとってヴァイオレット様は『全て』で、それを聖魔法だか何だか知らないが浄化しといて、本人たちは幸せになりました?

 乙女ゲーム版でのルリアのことは、好きだった。
 真っ直ぐで一生懸命で。

 その乙女ゲームを好きだった私が、小説やアニメ版を受け入れたのは、ルリアや攻略対象たちへの愛ではない。

 その物語の背景として、悪役にされてしまったヴァイオレットとルカへの想いゆえだった。
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