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届く釣書とお兄様

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 婚約の白紙撤回の翌日には、婚約打診のお手紙と釣書が、我が家に届きました。

 私の想像よりも多い釣書の量です。
それはありがたいのですが・・・私の求める婚約者は、アデライン子爵家に婿入りしてくださる方です。

 予定としては、伯爵家や子爵家、男爵家の次男や三男の方をと思っているのですが。

 何故、公爵家や侯爵家の嫡男の方の釣書が含まれているのでしょうか。

 王家と縁を繋ごうということかしら?
ですが、お兄様は婿に行かれるわけですから、アデライン子爵家はあくまでも実家。

 私たちが王族になるわけではないのですが。

「随分とたくさん届いたな」

「あ、お兄様。お帰りなさいませ」

 お兄様は現在、ラナリス様と結婚するためのお勉強のために毎日王宮へ通われています。

 元々優秀なお兄様は、本来王族が受ける王子教育、王太子教育も余裕でこなされているみたいですけど。

「たくさん届いても、候補にできる方は少ないので、意味がありませんわ」

「別に我が家を継ぐことにこだわらなくてもいいだろう?親戚筋から養子をもらってもいいのだし、父上たちはまだまだお若い。ミリムの子供に継がせてもいいのだから」

「こだわっているわけではありませんわ。ですが、子爵令嬢の私が、公爵家や侯爵家の方の婚約者になるのは、やはり・・・」

 想いを寄せる方が高位貴族の方だとしたら、私も前向きにというか、その方の婚約者になれるように努力したと思います。

 身分だけはどうにもなりませんけど、それ以外のことで選んでいただけるように。

 ですが、会ったこともない方々の婚約者になるために、高位貴族のご令嬢たちに睨まれながら頑張る気力はありません。

「それを言うなら、僕なんて王女の婚約者だぞ?」

「お兄様は優秀だからいいんです」

 国王陛下だって、ラナリス様を御することができるのは、お兄様くらいだっておっしゃったんでしょう?

 あいにくと、私は容姿もお勉強の方も、平凡なんです。

「僕の妹が平凡なわけがないだろう」

 お兄様はそうおっしゃいますが、人の心を勝手に読まないで下さい。

 しかも私の考えてること、筒抜けじゃないですか。超能力者ですか?魔法使いですか?神か何かですか?

「お前は考えてることが時々、口に出ているだけだ、全く。それよりも、明日客が来る。同席しろ」

「お客様・・・え?あ、口に出てる?」

 お兄様のお客様が来るのに同席というのも気になりますが、それよりも重大な案件が!

 え?私、考えてることが時々口に出てるんですか?
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