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だから強くいられるの

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 辺境伯領から帰って一週間後。

 リリーシアに関する調査報告が出た。

 早くない?王家とかオズワルド公爵家も、リリーシアのこと探してるのよね?

 何が違うの?お祖母様の采配?
それとも王家って無能なの?

「ええと・・・誰ですか?この、アルビナ伯爵令息って」

 アザリウム王国にアルビナという伯爵家はない。

「ザハード王国の、バッカス侯爵家の令嬢を教育しなおして欲しいとローズは言っていたわよね」

 お祖母様の問いに頷いた。
頷いたけど・・・何故、今それを聞かれたの?

「その令嬢の従兄がアルビナ伯爵令息よ。この男、バッカス侯爵令嬢を信奉しててね、令嬢のために黒髪の令嬢を攫おうとしていたらしいの。そんな時、黒髪のカツラをかぶったリリーシアを見つけた」

「え?黒髪のカツラ?」

「リリーシアはね、レオナルド殿下がローズに執着していて、婚約者の自分を見ようともしないことに悩んでいたみたいで。少しでも殿下の目に留まるようにと、王宮に向かうときは黒髪のカツラをかぶっていたそうよ」

 ちょっと待って。
タチアナのために、その男は私を誘拐しようとしていたということ?

 そして、黒髪のカツラを被ったリリーシアを、私だと勘違いして攫った?

 タチアナのためだといっても、他国の公爵令嬢を誘拐しようとするなんて。

「お姉様の髪が切られていたのは・・・」

「かつらが外れたんでしょうね。別人の、しかも王太子の婚約者を誘拐した。絶対にバレるわけにはいかなかったのでしょう。逃げられないようにずっと拘束していたみたいね」

 その過程で、髪は切られてしまったのかもしれない。

 でもどうやって逃げ出したのかしら?

「そのアルビナ伯爵令息が言うには、彼女に湯浴みをさせてる時に、バッカス侯爵令嬢から呼び出しがあったそうよ。それで、拘束しないまま、小屋の施錠だけして出て行ったらしいわ。ザハード王国から辺境伯領までは、商人の荷馬車が行き来しているの。それに紛れ込んだのではないかと推測するわ」

「その伯爵令息を捕らえているのですか?」

「ええ。大切なローズを誘拐しようとしていたのですもの。それがどんなに愚かなことか、よぉく教えてあげないといけませんからね」

 お祖母様の笑顔が、めっちゃ黒い!

 でも、その伯爵令息とやらはタチアナを追い詰める材料になるかもしれない。

「お祖母様。その伯爵令息に会わせてください」

「ローズ、嫌なことを言われるかもしれないわ」

「平気です。私はロイド殿下を想っているわけではないので、何を言われても気になりませんわ。それに・・・私にはお祖母様がいてくださいますから」

 だから強くいられるの。

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