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義務と覚悟

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 ロイドは、証拠を持ってザハード王国へと戻った。

 その後、レーチェル様からいただいたお手紙には、タチアナの処罰について書かれていた。

 ロイドは、処罰の後処理に忙しいらしい。

 レーチェル様のお手紙には、サリフィルとヒルデの婚約の成就、私の今後の安定が身定まるまで、私との偽婚約は継続したいとのロイドの意思が書かれていた。

 国王陛下たちも、何よりラーナがそう望んでいてくれているらしい。

 確かに、お祖母様の保護下にいるうちは大丈夫だろうけど、そこから外れたらレオナルドが私を攫って愛妾にするかもしれない。

 今はまだ子供だから、そこまで考えはしなくても、この先もそうだとは限らない。

 何しろ、婚約者のフローレンス様が婚姻できるのは十年も先なんだから。

 ああ、先日お誕生日を迎えられたと聞いたから九年か。
 どちらにしろ先の長い話だ。

 私たちより三歳年上のリリーシアとなら、レオナルドが成人さえすればすぐに婚姻できたけど、それもレオナルドの不誠実な態度で不可能になった。

 他に好きな人がいる。
それは仕方のないことだと思う。人の気持ちは、簡単にどうにもならない。

 まぁ、そういう意味では私がレオナルドを好きにならないこと、理解してくれてもいいと思うんだけど。

 自分のことと人のことは別なのかしらね。

 そして、これが大事なのだけど。
レオナルドは王族なのだ。しかもアザリウム王国唯一の嫡子。

 毎日、美味しいものを食べ、綺麗な服を着て、暖かいベッドで眠って。
 人の世話になり、服を着るのも湯浴みをするのも、誰かの手で。

 それだけの利を受けているのだから、政略結婚という義務を拒むのは間違っている。

 ロイドのように、サリフィルのように、愛する人を選ぶのなら、その地位も権利も返還して、厳しいと思われる道を選択するべきなのだ。

 ロイドの場合は、弟殿下もレーチェル様も、それから国王陛下たちもロイドが王位を継ぐのが良いと、王太子妃になるラーナさえ頑張れるというのなら、と認めてくれたからそのまま王太子になるけれど。

 それでも、陰でラーナにキツくあたる人間もいるだろう。

 子爵令嬢でしかないラーナは、現在レーチェル様の侍女として働きながら、高位貴族や王族と同じ教育を受けているけど、それはすごく大変なことだと思う。

 そんなラーナのアフターケアをするのも、ロイドの義務だ。

 それを義務と思わず権利だと思ってやれる人間でなければ、これから先あの二人の未来は険しいものになる。

 レオナルドにそんな覚悟はないと思う。

 覚悟がないのなら、国王陛下のいう通り、政略結婚をしてその相手を尊敬し慈しむべきなのよ。

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