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第13話
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「君の在学していた王立学園に俺も留学していたんだよ」
まあ、変装していたから分からないと思うけどね。
(え……?)
フランがどうしてそんなことを、と思っていると、
「あの頃、少しゴタゴタがあってね。俺の暗殺未遂事件も含めて」
一時的に避難の意味も込めていたため、公にはされなかったらしい。
(暗殺って)
大丈夫だったのかしら、と思っているとエドワール王子は軽く肩を竦めて見せた。
「そっちは何とか片付いたから」
その言葉にほっとしたフランはしばし思いを巡らせる。
王立学園の生徒は貴族の令息令嬢が主だったが、平民の生徒もおり、なかなかの規模だったと記憶している。
それにアール王子の婚約だったフランは交友関係が限られており、幾ら変装していたとはいえ、これほど目立つ容姿の生徒がいたなら話題になるだろう。
そう指摘するとエドワール王子は、
「褒められたと受け取っておくよ。……まあ、今のこの姿とは別人なんだけどね」
そう答えて懐から黒縁の眼鏡を取り出した。
「これで分からないかな?」
フランの記憶に何かが触れた。
(それは……)
学園の廊下に散らばった書類。
もうすぐ予鈴が鳴るためか、誰も手伝う者はいなくて。
ついフランは手を差し伸べていた。
小柄なその生徒は黒髪に黒い瞳で、いつも俯きがちにしていたためか、気の弱い印象を与え、更に黒縁の眼鏡がそのことを後押ししていた。
もそもそと書類を拾う生徒から一番離れた箇所にある書類を数枚拾ってまとめ、彼に渡す。
「はい。どうぞ」
できるだけ怖がらせないよう、笑みを浮かべてそうしたのだが、その男子生徒はもごもごと何か呟いた後、一気に書類を集め終わると掛け去ってしまった。
(怖がらせてしまったかしら)
フランとしてはその位の記憶しかなかったが、もしやそれが――。
「うん。俺だね」
あっさりと肯定され、フランの脳裏は混乱する。
容姿も与える印象も全く別人ではないか。
でも、とフランは思う。
あの男子生徒とはそれ以降、関りをもったことはない。
そうフランが言うとエドワール王子は、
「あの頃は少し、いやかなり人間不信に陥っていてね。そんな時に君に会ってとても救われたんだ」
懐かしそうに言われてフランは困惑した。
「それからは君の姿を追って話し掛けようとしたんだけどね、まだ諸々の案件が片付いた訳ではなかったし、君はどこぞのバ……王子の婚約者だったから。なかなか話すことができなくてね」
エドワール王子は、思い返すように話していたが、イーサン達は、
「……最初、っていうかそれしかないんじゃないか」
「ってか、それって話したことほとんどないんじゃ……」
「付きまといですね」
好き勝手に言っていた。
「君たち、相手は一応王族だからな」
リーガルが取りなすが、その口調もどこかイーサン達の発言を指示しているように聞こえた。
「とにかく、君がこのままあいつと結婚して幸せになってでもいるのであれば、俺はこんな横やりは入れなかったよ」
どこか必死な様子のエドワール王子にフランは、小さく頷いた。
「事情はおおよそ分かりました」
だが、エドワール王子は王族である。
既に決まった婚約者がいるはずでは?
そう思ってフランが聞くとエドワール王子は沈痛な面持ちになった。
「ああ。確かに婚約者がいたよ。……暗殺事件の際に巻き添えで亡くなってしまったけれどね」
「まあ」
二の句が継げないフランに、
「だからこそ、君に俺の婚約者になって欲しいんだ。それとも、君にはもう決まった相手がいるのかな?」
「いえ、おりませんが」
「なら、大丈夫だ。早速サンシェルジュ侯爵にも連絡して手続きを――」
「ちょーっと待ったぁっ!!」
今にもフランの手を取って部屋から出ようとしかけていたエドワール王子の手が振りほどかれる。
まあ、変装していたから分からないと思うけどね。
(え……?)
フランがどうしてそんなことを、と思っていると、
「あの頃、少しゴタゴタがあってね。俺の暗殺未遂事件も含めて」
一時的に避難の意味も込めていたため、公にはされなかったらしい。
(暗殺って)
大丈夫だったのかしら、と思っているとエドワール王子は軽く肩を竦めて見せた。
「そっちは何とか片付いたから」
その言葉にほっとしたフランはしばし思いを巡らせる。
王立学園の生徒は貴族の令息令嬢が主だったが、平民の生徒もおり、なかなかの規模だったと記憶している。
それにアール王子の婚約だったフランは交友関係が限られており、幾ら変装していたとはいえ、これほど目立つ容姿の生徒がいたなら話題になるだろう。
そう指摘するとエドワール王子は、
「褒められたと受け取っておくよ。……まあ、今のこの姿とは別人なんだけどね」
そう答えて懐から黒縁の眼鏡を取り出した。
「これで分からないかな?」
フランの記憶に何かが触れた。
(それは……)
学園の廊下に散らばった書類。
もうすぐ予鈴が鳴るためか、誰も手伝う者はいなくて。
ついフランは手を差し伸べていた。
小柄なその生徒は黒髪に黒い瞳で、いつも俯きがちにしていたためか、気の弱い印象を与え、更に黒縁の眼鏡がそのことを後押ししていた。
もそもそと書類を拾う生徒から一番離れた箇所にある書類を数枚拾ってまとめ、彼に渡す。
「はい。どうぞ」
できるだけ怖がらせないよう、笑みを浮かべてそうしたのだが、その男子生徒はもごもごと何か呟いた後、一気に書類を集め終わると掛け去ってしまった。
(怖がらせてしまったかしら)
フランとしてはその位の記憶しかなかったが、もしやそれが――。
「うん。俺だね」
あっさりと肯定され、フランの脳裏は混乱する。
容姿も与える印象も全く別人ではないか。
でも、とフランは思う。
あの男子生徒とはそれ以降、関りをもったことはない。
そうフランが言うとエドワール王子は、
「あの頃は少し、いやかなり人間不信に陥っていてね。そんな時に君に会ってとても救われたんだ」
懐かしそうに言われてフランは困惑した。
「それからは君の姿を追って話し掛けようとしたんだけどね、まだ諸々の案件が片付いた訳ではなかったし、君はどこぞのバ……王子の婚約者だったから。なかなか話すことができなくてね」
エドワール王子は、思い返すように話していたが、イーサン達は、
「……最初、っていうかそれしかないんじゃないか」
「ってか、それって話したことほとんどないんじゃ……」
「付きまといですね」
好き勝手に言っていた。
「君たち、相手は一応王族だからな」
リーガルが取りなすが、その口調もどこかイーサン達の発言を指示しているように聞こえた。
「とにかく、君がこのままあいつと結婚して幸せになってでもいるのであれば、俺はこんな横やりは入れなかったよ」
どこか必死な様子のエドワール王子にフランは、小さく頷いた。
「事情はおおよそ分かりました」
だが、エドワール王子は王族である。
既に決まった婚約者がいるはずでは?
そう思ってフランが聞くとエドワール王子は沈痛な面持ちになった。
「ああ。確かに婚約者がいたよ。……暗殺事件の際に巻き添えで亡くなってしまったけれどね」
「まあ」
二の句が継げないフランに、
「だからこそ、君に俺の婚約者になって欲しいんだ。それとも、君にはもう決まった相手がいるのかな?」
「いえ、おりませんが」
「なら、大丈夫だ。早速サンシェルジュ侯爵にも連絡して手続きを――」
「ちょーっと待ったぁっ!!」
今にもフランの手を取って部屋から出ようとしかけていたエドワール王子の手が振りほどかれる。
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