俺があいつをいじめていた理由は絶対誰にも分からない

神崎 ルナ

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第六話 美術部

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『もうお前、俺に話しかけるな』

 これ以上話を聞いていたらこっちがおかしくなりそうだった。

 俺がそう言うとクラスメイトたちは囃し立てたが、俺はもうどうでもよかった。

 話が通じねぇ。

 高校では没交渉で行こう。

 その日以来、俺はあいつに何を言われても無視した。

 誰かが新しい苛めだ、とか言ってたが違う。

 俺の精神の安定のためには必要なプロセスだった。

 これ以上あいつに振り回されたくなかった。

 おかしいよな。俺が言っていることは正しいのに、なんであいつの目を見てると罪悪感みたいなのに襲われるんだ。

 俺は間違ったことはしちゃいない。

 そうして卒業を迎え、入った高校での生活はまた俺を苛立せる事案に満ちていた。

 なんでって?

 俺とあいつがまた同じクラスになったからだよ。

 何でだよ。俺はあいつとの縁を切りたいのに。

 昔、本物が来い、とか思っていたがそれはもういい。
 
 どうせあいつには中学と同じように何でも話せる友人なんてできないだろ。

 もしそうなったらまた『本物』探しか。

 いやもういいや。

 そのうち来るだろ、本物。

 あいつが寿命を迎えるまでくらいには。

 ひどいようだがそんなふうに思っていた。

 だが高校は勝手が違った。

 海野先生は美大に入ったら俺位のなのはごろごろいる、って言ってたがそれは高校でもう現れた。

『お前、海野先生に師事してんのかよ』

 入部した美術部で先輩たちに問われ、頷くとへえ、とかいいなあ、とか反応があったので聞き返すと海野先生は滅多に弟子はとらないことで知られている先生だったことが分かる。

 ちなみに絵画教室は小中学生が主な生徒だった。

 あの海野先生の弟子、ということで何か描いて見ろ、という無茶ぶりに俺は簡単なデッサンをした。

『ふうん、まあまあだな』

 三十分ほどで仕上げたそれは正確さに拘ったもので、会心の出来だったがあまり反応はよくなかった。

『ま、これ位なら俺らでもできるしな。一年生は俺らの手伝いでもしてろよな』

 正直ムカついた。

 この俺にケンカ売ってタダで済むと思うなよ。

 その先輩の絵も見せられたが確かに上手かった。

 だがまだ行ける。俺より少しだけ先輩が上なだけだ。

 が、まだその時ではない。
 
 画家には画家の返し方がある。

 俺はその後、徹底的に絵の腕を磨き、絵に全力を注いだ。

 もちろん体調管理も怠らない。

 結果、半年もする頃には俺の画力の方が上だと思い知らしめたが、そこに行くまでに問題が起きていた。

 時は四月まで遡る。

『……何でここにいるんだよ、どんじり』

『あの、入部したくて』

『は?』

 入部届を手にした優が美術部へ来ていたのだ。

『帰れ』

 即座にドアを閉めたが廊下の向こうからどんどんとドアを叩かれた。
 
 ……何か、中学ん時より図太くなってねぇか。

 この頃優には話をするクラスメイトが何人かできていた。

 中学とは違って忍耐力でも上がるのか、ほとんどの者は優の画家になりたい、という発言を否定しなかった。

 俺はすぐに無理だろ、とこんな時のためにとスマホに撮っておいた優の最新の絵を見せ、次に俺の自信作を見せた。

『こんなんでどうやって画家になるってんだ』

『う、でも頑張れば何とか』

 見比べ終わったクラスメイトたちは微妙な表情をする者が多かったが、表向き優を否定する者はなかった。

『うん。坂崎くん上手いけど雨宮くんも上手だと思うよ』

 おいおい。

 何人かのクラスメイトが褒めると優の頬が緩んだ。

『うん。ありがとう。僕も頑張れば陣くんのように――』

 は?

 反射的に口を開いていた。

『何寝ぼけたこと言ってんだ。無理だろ。この世界はそんなに甘くねぇ、って何十回言わせんだよ』
 
 優の夢を否定する俺に最初はクラスメイトたちは苦言を呈していたが、次第に意図が伝わったらしい。

 分かればいいんだよ。

『ごめん。陣くん。でもどうしても――』

 俯くあいつにクラスメイトの双樹が話し掛けた。

『あー。雨宮くん。あんまり深く取らない方がいいと思うよ。ほら元気出して』
  
 小学生の慰め方かよ。

 高校になると精神も大人に近付くのか、中学の頃とは空気が違って行った。

 優の発言を俺が否定してもそれに乗って来るやつはいなくて、何故かまたやってるよ、みたいに見られるようになった。

 何でだよ。俺は間違ったことはしてねぇ。

 

 とにかく優の入部は無しだ。




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ここまでお読みいただき有り難うございますm(__)m

 この後の更新ですが不定期となりますm(__)m

(25周年カップの締めきりに間に合ったのがここまでだったので(;´Д`) 随時修正入るかもしれませんm(__)m 完結までの道のりは大体できてますので、出来る限り早く完結まで仕上げてお届けしたいと思っておりますm(__)m



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