6 / 13
第六話 美術部
しおりを挟む
『もうお前、俺に話しかけるな』
これ以上話を聞いていたらこっちがおかしくなりそうだった。
俺がそう言うとクラスメイトたちは囃し立てたが、俺はもうどうでもよかった。
話が通じねぇ。
高校では没交渉で行こう。
その日以来、俺はあいつに何を言われても無視した。
誰かが新しい苛めだ、とか言ってたが違う。
俺の精神の安定のためには必要なプロセスだった。
これ以上あいつに振り回されたくなかった。
おかしいよな。俺が言っていることは正しいのに、なんであいつの目を見てると罪悪感みたいなのに襲われるんだ。
俺は間違ったことはしちゃいない。
そうして卒業を迎え、入った高校での生活はまた俺を苛立せる事案に満ちていた。
なんでって?
俺とあいつがまた同じクラスになったからだよ。
何でだよ。俺はあいつとの縁を切りたいのに。
昔、本物が来い、とか思っていたがそれはもういい。
どうせあいつには中学と同じように何でも話せる友人なんてできないだろ。
もしそうなったらまた『本物』探しか。
いやもういいや。
そのうち来るだろ、本物。
あいつが寿命を迎えるまでくらいには。
ひどいようだがそんなふうに思っていた。
だが高校は勝手が違った。
海野先生は美大に入ったら俺位のなのはごろごろいる、って言ってたがそれは高校でもう現れた。
『お前、海野先生に師事してんのかよ』
入部した美術部で先輩たちに問われ、頷くとへえ、とかいいなあ、とか反応があったので聞き返すと海野先生は滅多に弟子はとらないことで知られている先生だったことが分かる。
ちなみに絵画教室は小中学生が主な生徒だった。
あの海野先生の弟子、ということで何か描いて見ろ、という無茶ぶりに俺は簡単なデッサンをした。
『ふうん、まあまあだな』
三十分ほどで仕上げたそれは正確さに拘ったもので、会心の出来だったがあまり反応はよくなかった。
『ま、これ位なら俺らでもできるしな。一年生は俺らの手伝いでもしてろよな』
正直ムカついた。
この俺にケンカ売ってタダで済むと思うなよ。
その先輩の絵も見せられたが確かに上手かった。
だがまだ行ける。俺より少しだけ先輩が上なだけだ。
が、まだその時ではない。
画家には画家の返し方がある。
俺はその後、徹底的に絵の腕を磨き、絵に全力を注いだ。
もちろん体調管理も怠らない。
結果、半年もする頃には俺の画力の方が上だと思い知らしめたが、そこに行くまでに問題が起きていた。
時は四月まで遡る。
『……何でここにいるんだよ、どんじり』
『あの、入部したくて』
『は?』
入部届を手にした優が美術部へ来ていたのだ。
『帰れ』
即座にドアを閉めたが廊下の向こうからどんどんとドアを叩かれた。
……何か、中学ん時より図太くなってねぇか。
この頃優には話をするクラスメイトが何人かできていた。
中学とは違って忍耐力でも上がるのか、ほとんどの者は優の画家になりたい、という発言を否定しなかった。
俺はすぐに無理だろ、とこんな時のためにとスマホに撮っておいた優の最新の絵を見せ、次に俺の自信作を見せた。
『こんなんでどうやって画家になるってんだ』
『う、でも頑張れば何とか』
見比べ終わったクラスメイトたちは微妙な表情をする者が多かったが、表向き優を否定する者はなかった。
『うん。坂崎くん上手いけど雨宮くんも上手だと思うよ』
おいおい。
何人かのクラスメイトが褒めると優の頬が緩んだ。
『うん。ありがとう。僕も頑張れば陣くんのように――』
は?
反射的に口を開いていた。
『何寝ぼけたこと言ってんだ。無理だろ。この世界はそんなに甘くねぇ、って何十回言わせんだよ』
優の夢を否定する俺に最初はクラスメイトたちは苦言を呈していたが、次第に意図が伝わったらしい。
分かればいいんだよ。
『ごめん。陣くん。でもどうしても――』
俯くあいつにクラスメイトの双樹が話し掛けた。
『あー。雨宮くん。あんまり深く取らない方がいいと思うよ。ほら元気出して』
小学生の慰め方かよ。
高校になると精神も大人に近付くのか、中学の頃とは空気が違って行った。
優の発言を俺が否定してもそれに乗って来るやつはいなくて、何故かまたやってるよ、みたいに見られるようになった。
何でだよ。俺は間違ったことはしてねぇ。
とにかく優の入部は無しだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここまでお読みいただき有り難うございますm(__)m
この後の更新ですが不定期となりますm(__)m
(25周年カップの締めきりに間に合ったのがここまでだったので(;´Д`) 随時修正入るかもしれませんm(__)m 完結までの道のりは大体できてますので、出来る限り早く完結まで仕上げてお届けしたいと思っておりますm(__)m
これ以上話を聞いていたらこっちがおかしくなりそうだった。
俺がそう言うとクラスメイトたちは囃し立てたが、俺はもうどうでもよかった。
話が通じねぇ。
高校では没交渉で行こう。
その日以来、俺はあいつに何を言われても無視した。
誰かが新しい苛めだ、とか言ってたが違う。
俺の精神の安定のためには必要なプロセスだった。
これ以上あいつに振り回されたくなかった。
おかしいよな。俺が言っていることは正しいのに、なんであいつの目を見てると罪悪感みたいなのに襲われるんだ。
俺は間違ったことはしちゃいない。
そうして卒業を迎え、入った高校での生活はまた俺を苛立せる事案に満ちていた。
なんでって?
俺とあいつがまた同じクラスになったからだよ。
何でだよ。俺はあいつとの縁を切りたいのに。
昔、本物が来い、とか思っていたがそれはもういい。
どうせあいつには中学と同じように何でも話せる友人なんてできないだろ。
もしそうなったらまた『本物』探しか。
いやもういいや。
そのうち来るだろ、本物。
あいつが寿命を迎えるまでくらいには。
ひどいようだがそんなふうに思っていた。
だが高校は勝手が違った。
海野先生は美大に入ったら俺位のなのはごろごろいる、って言ってたがそれは高校でもう現れた。
『お前、海野先生に師事してんのかよ』
入部した美術部で先輩たちに問われ、頷くとへえ、とかいいなあ、とか反応があったので聞き返すと海野先生は滅多に弟子はとらないことで知られている先生だったことが分かる。
ちなみに絵画教室は小中学生が主な生徒だった。
あの海野先生の弟子、ということで何か描いて見ろ、という無茶ぶりに俺は簡単なデッサンをした。
『ふうん、まあまあだな』
三十分ほどで仕上げたそれは正確さに拘ったもので、会心の出来だったがあまり反応はよくなかった。
『ま、これ位なら俺らでもできるしな。一年生は俺らの手伝いでもしてろよな』
正直ムカついた。
この俺にケンカ売ってタダで済むと思うなよ。
その先輩の絵も見せられたが確かに上手かった。
だがまだ行ける。俺より少しだけ先輩が上なだけだ。
が、まだその時ではない。
画家には画家の返し方がある。
俺はその後、徹底的に絵の腕を磨き、絵に全力を注いだ。
もちろん体調管理も怠らない。
結果、半年もする頃には俺の画力の方が上だと思い知らしめたが、そこに行くまでに問題が起きていた。
時は四月まで遡る。
『……何でここにいるんだよ、どんじり』
『あの、入部したくて』
『は?』
入部届を手にした優が美術部へ来ていたのだ。
『帰れ』
即座にドアを閉めたが廊下の向こうからどんどんとドアを叩かれた。
……何か、中学ん時より図太くなってねぇか。
この頃優には話をするクラスメイトが何人かできていた。
中学とは違って忍耐力でも上がるのか、ほとんどの者は優の画家になりたい、という発言を否定しなかった。
俺はすぐに無理だろ、とこんな時のためにとスマホに撮っておいた優の最新の絵を見せ、次に俺の自信作を見せた。
『こんなんでどうやって画家になるってんだ』
『う、でも頑張れば何とか』
見比べ終わったクラスメイトたちは微妙な表情をする者が多かったが、表向き優を否定する者はなかった。
『うん。坂崎くん上手いけど雨宮くんも上手だと思うよ』
おいおい。
何人かのクラスメイトが褒めると優の頬が緩んだ。
『うん。ありがとう。僕も頑張れば陣くんのように――』
は?
反射的に口を開いていた。
『何寝ぼけたこと言ってんだ。無理だろ。この世界はそんなに甘くねぇ、って何十回言わせんだよ』
優の夢を否定する俺に最初はクラスメイトたちは苦言を呈していたが、次第に意図が伝わったらしい。
分かればいいんだよ。
『ごめん。陣くん。でもどうしても――』
俯くあいつにクラスメイトの双樹が話し掛けた。
『あー。雨宮くん。あんまり深く取らない方がいいと思うよ。ほら元気出して』
小学生の慰め方かよ。
高校になると精神も大人に近付くのか、中学の頃とは空気が違って行った。
優の発言を俺が否定してもそれに乗って来るやつはいなくて、何故かまたやってるよ、みたいに見られるようになった。
何でだよ。俺は間違ったことはしてねぇ。
とにかく優の入部は無しだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここまでお読みいただき有り難うございますm(__)m
この後の更新ですが不定期となりますm(__)m
(25周年カップの締めきりに間に合ったのがここまでだったので(;´Д`) 随時修正入るかもしれませんm(__)m 完結までの道のりは大体できてますので、出来る限り早く完結まで仕上げてお届けしたいと思っておりますm(__)m
20
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる