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第七話 進路
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俺が焦らなくても優のデッサンを見た部員たちはやんわりと優に他の部を勧めた。
ま、そうなるよな。
結局その後優は漫研に入ったようだった。
漫研でもデッサン力は試されるが大丈夫なのか。
そんな思いが過ぎったがもうあいつに関わるのはいいだろう。
『坂崎、今日予定あんのか?』
鞄を手に声をかけてくるのは高梨元哉。
音響関係に進みたいらしいが、当然親の反対に合って高校の成績が学年で上位に入れば許しが貰えるらしい。
甘いやつ。そういうことはもっとずっと早く宣言しておくもんだ。
『ある。宿題やっつけた後にロードワークとデッサンの反復。印象派と日本画の関係性についての考察について資料を纏めないとならないから、今日もきっちり埋まってる』
うわあ、と高梨がどん引いたがこれ位普通だと思うが。
プロの道は甘いもんじゃない。
幼いころからずっと言われ続けてきた言葉。
その言葉がだんだんと身に染みて分かるようになってきていた。
『んじゃ仕方ないな。また今度な。あ、途中まで一緒に帰ろうぜ』
いや途中まで、って小学生かよ。
聞くと駅までは一緒らしいのでそこまでは妥協することになった。
『いやー。ここって一芸に秀でた生徒のサポートしてくれる、っていうから選んだんだけどさ、正直舐めてたわ。授業ムズくね?』
進学校なのでそれはそうだろう。
俺たちのクラスは半分位が大学に進学、残りの半分が専門学校や希望先に就職、となっている。
『それ位当たり前だろ。俺らは社会に出てからが大変なんだから多少は拍付けとかないといけないんだよ』
そう言ったら何故か呆気に取られたような沈黙が返ってきた。
『うわ、案外まともなこと言うんだ』
人を何だと思ってる。
そう言い返すと高梨はうーんと唸った。
『ガッコの成績はいいけど、裏で何かしてそう――いや、冗談だって!!』
おい、と拳を握ると慌てて否定したがもう遅い。
軽くゲンコツを見舞ってやると、痛ってー、と喚いていたけど大げさなんだよ。
ああ、何だか久しぶりな気がする。
こうやって気を張らない会話をしながらクラスメイトと帰るってのは。
中学の時は周りが俺に対して気を遣ってる、ってのが丸わかりだったから、適当に相槌とか打ってたが、あれって本当に友人だったのか。
超忙しい日々を送りながらもときどきこうした緩んだ会話を挟んで、少しは充実した高校生活ってのが遅れるかな、と思っていた矢先だった。
あいつがマンガの原作者としてデビューするため、中退するらしい。
は?
何の冗談だよ。お前は画家になりたいんじゃなかったのか!?
これまでさんざん邪魔してきた立場から言えることじゃないが、あれほど言っても諦めなかったやつがどうしたんだよ!!
『陣くんには分からないよ』
思わず呼び出した屋上でそっけなく言われた言葉。
は? 何だよそれ。言うことはそれだけかよ!!
そう怒鳴った俺に対し、あいつは冷静だった。
『僕だってたくさん努力した。陣くんにはいろいろ言われたけれど、それでも画家になりたくて』
真摯な表情の優には悪いが、それは無理だ。
まずはその画力を上げて、次に自己管理ができるようにならないと、向いてない。
心意気だけはあるのにその他が向いてないんだよな。
そう思っていた。
『画力が追い付いてないのは知ってた。だから努力した。でも頑張っても頑張っても僕が思い描いたものは描けないんだ。そんな時に声を掛けてくれる人がいて』
『だから漫研か』
繋がった気がした。
優はこくりと頷いて続けた。
『デッサン力を上げたい、というのもあったけど、マンガって読む人が次々とページをめくるように工夫がいるんだよね。その構図とかストーリー性とか。それを絵の方に生かせないかと思ったんだ』
――だから、ええと。
もたつく優の話を要約するとこうだった。
話の筋は悪くないのに、画力のせいでもったいないことになる優のマンガに誰か上手い奴が絵を描こう、ということになったらしい。
その出来栄えがあまりにも良かったのでとある雑誌に応募したら、向こうの編集部から話が来たとのことだった。
話を詰めていくうちに優は読み切りの原作を引き受けることになり、それがなかなか良い、と評判も上々で連載物も描いて欲しいとオファーが来たがそれは週刊連載なため、学生との両立は難しいのではないか。
ってことで休学の話もあったが、優が中退したい、と申し出た、と。
おい。俺はそんな話、微塵も知らないんだが。
『皆には黙っていたからね。あ、斎藤くんと華園くんは知ってるよ。友だちだから』
……友だち。
何故か胸を抉る言葉にとっさに言葉が出なかった。
そんな俺の前で優はしまりのない笑顔で話を続けていた。
『何かすごい新鮮というか、照れるよね。初めての友だちだからかな』
――は?
ま、そうなるよな。
結局その後優は漫研に入ったようだった。
漫研でもデッサン力は試されるが大丈夫なのか。
そんな思いが過ぎったがもうあいつに関わるのはいいだろう。
『坂崎、今日予定あんのか?』
鞄を手に声をかけてくるのは高梨元哉。
音響関係に進みたいらしいが、当然親の反対に合って高校の成績が学年で上位に入れば許しが貰えるらしい。
甘いやつ。そういうことはもっとずっと早く宣言しておくもんだ。
『ある。宿題やっつけた後にロードワークとデッサンの反復。印象派と日本画の関係性についての考察について資料を纏めないとならないから、今日もきっちり埋まってる』
うわあ、と高梨がどん引いたがこれ位普通だと思うが。
プロの道は甘いもんじゃない。
幼いころからずっと言われ続けてきた言葉。
その言葉がだんだんと身に染みて分かるようになってきていた。
『んじゃ仕方ないな。また今度な。あ、途中まで一緒に帰ろうぜ』
いや途中まで、って小学生かよ。
聞くと駅までは一緒らしいのでそこまでは妥協することになった。
『いやー。ここって一芸に秀でた生徒のサポートしてくれる、っていうから選んだんだけどさ、正直舐めてたわ。授業ムズくね?』
進学校なのでそれはそうだろう。
俺たちのクラスは半分位が大学に進学、残りの半分が専門学校や希望先に就職、となっている。
『それ位当たり前だろ。俺らは社会に出てからが大変なんだから多少は拍付けとかないといけないんだよ』
そう言ったら何故か呆気に取られたような沈黙が返ってきた。
『うわ、案外まともなこと言うんだ』
人を何だと思ってる。
そう言い返すと高梨はうーんと唸った。
『ガッコの成績はいいけど、裏で何かしてそう――いや、冗談だって!!』
おい、と拳を握ると慌てて否定したがもう遅い。
軽くゲンコツを見舞ってやると、痛ってー、と喚いていたけど大げさなんだよ。
ああ、何だか久しぶりな気がする。
こうやって気を張らない会話をしながらクラスメイトと帰るってのは。
中学の時は周りが俺に対して気を遣ってる、ってのが丸わかりだったから、適当に相槌とか打ってたが、あれって本当に友人だったのか。
超忙しい日々を送りながらもときどきこうした緩んだ会話を挟んで、少しは充実した高校生活ってのが遅れるかな、と思っていた矢先だった。
あいつがマンガの原作者としてデビューするため、中退するらしい。
は?
何の冗談だよ。お前は画家になりたいんじゃなかったのか!?
これまでさんざん邪魔してきた立場から言えることじゃないが、あれほど言っても諦めなかったやつがどうしたんだよ!!
『陣くんには分からないよ』
思わず呼び出した屋上でそっけなく言われた言葉。
は? 何だよそれ。言うことはそれだけかよ!!
そう怒鳴った俺に対し、あいつは冷静だった。
『僕だってたくさん努力した。陣くんにはいろいろ言われたけれど、それでも画家になりたくて』
真摯な表情の優には悪いが、それは無理だ。
まずはその画力を上げて、次に自己管理ができるようにならないと、向いてない。
心意気だけはあるのにその他が向いてないんだよな。
そう思っていた。
『画力が追い付いてないのは知ってた。だから努力した。でも頑張っても頑張っても僕が思い描いたものは描けないんだ。そんな時に声を掛けてくれる人がいて』
『だから漫研か』
繋がった気がした。
優はこくりと頷いて続けた。
『デッサン力を上げたい、というのもあったけど、マンガって読む人が次々とページをめくるように工夫がいるんだよね。その構図とかストーリー性とか。それを絵の方に生かせないかと思ったんだ』
――だから、ええと。
もたつく優の話を要約するとこうだった。
話の筋は悪くないのに、画力のせいでもったいないことになる優のマンガに誰か上手い奴が絵を描こう、ということになったらしい。
その出来栄えがあまりにも良かったのでとある雑誌に応募したら、向こうの編集部から話が来たとのことだった。
話を詰めていくうちに優は読み切りの原作を引き受けることになり、それがなかなか良い、と評判も上々で連載物も描いて欲しいとオファーが来たがそれは週刊連載なため、学生との両立は難しいのではないか。
ってことで休学の話もあったが、優が中退したい、と申し出た、と。
おい。俺はそんな話、微塵も知らないんだが。
『皆には黙っていたからね。あ、斎藤くんと華園くんは知ってるよ。友だちだから』
……友だち。
何故か胸を抉る言葉にとっさに言葉が出なかった。
そんな俺の前で優はしまりのない笑顔で話を続けていた。
『何かすごい新鮮というか、照れるよね。初めての友だちだからかな』
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