俺があいつをいじめていた理由は絶対誰にも分からない

神崎 ルナ

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第九話 考えろ

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 俺は目を瞑り、視界からの情報をシャットダウンした。

 そこで深呼吸。

 よし。

 考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。「――」考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。

 今、何か言ったか?

 何か聞こえたような気がして目を開ける。

 いつもどおりの六畳一間のアパートはすぐに見渡せるが特に変わったところはない。

 もしかして――

 振り返るがそこには誰もいなかった。



 その翌日、俺は駅前を歩いていた。

 どこでもそうなのか、二店舗あったという百貨店は立ち退き、跡地の一つにはイベント広場、もう一つはスポーツクラブの建物になっていた。

 買い物客の層は狙ってないのが丸わかりだが、それでいいのか駅前通り。

 広場は今日は何のイベントもないのか閑散としていた。
 
 それでも人を呼びたいのか、端の方にテーブルと椅子が数脚設置されているので俺は空いてる椅子に腰を下ろした。

 平日の午前中のせいか、人はほとんどいなかった。

 丸テーブルをひとつ挟んだ隣りに八十くらいの婆さんがいるくらいで、時折り通るのは現場に向かう途中のツナギ姿の男たちや、赤ん坊を抱っこさせる布か何かで前で固定させている母親と思われる女性くらいだった。

 ビルの隙間から――いやここだと上を見ると思い切り見えるな――嫌になるほど澄んだ青空が見える。

 はあ、とため息が出そうになるのを抑えてスマホをいじる。

 今日は絵画関連のニュースは無しだ。何かないか。
  
 俺にしては珍しくバラエティーっぽいのを探していると、とある作家のインタビュー記事が出て来た。

 呼んでねぇ。

 とは思ったがその作家の小説は俺も読んだことがあり、その内容はトリックも背景もしっかりした重厚なサスペンスながら重たい恋愛感情も上手くミックスさせている、バランスの取れたものでなかなか読み応えのあるものだった。

 確かこの作家は女性でもともとは恋愛小説が主だったが、別名義でこのサスペンス物を書くようになったんだったな。

 大まかなことを思い返しているうちに指が動いていた。

 おっと。

 慌てて音量を確認してイヤホンを装着する。

 内容は小説家の私生活から作家業に関するものまで広く扱っており、ファンなら涙を流して喜んだだろう。

 ふうん、子供三人もいて小説家ね。

 そこまで聞いて脳裏に疑問符が浮かんだ。

 あれ? この作家って多作で知られてなかったか?

 確かこのサスペンス物のシリーズはこの数年で二十は越えていたし、これ以外にも恋愛物も同じくらい出してるはずだが。

 ちょうどインタビュアーもそう思ったのか、随分と沢山本を出されていますね。何か秘訣でもあるのでしょうか、と質問するところだった。

 それに対してその小説家は軽く首を振って答えていた。

『いいえ。秘訣なんてものがあるのでしたらこちらが聞きたいくらいです』

『ほお。ですがこれだけ御本を出されてそのほとんどがベストセラーというのは非常に素晴らしいことだと思いますが』

 食い下がられて少し考える素振りをする。

『強いていうのなら、後輩に抜かされたくない、でしょうか』

 は?

 小説家によると、これだけの著作があるのに後輩作家に抜かされる夢を見ることがあるのだという。

『ですので常にいかにコンスタントに作品を送り出すのかを旨に制作に取り組んでいます』

 何だこれは。

 この作家はとっくの昔に作家デビューしていて本なんか何十冊も売れていて、それでもまだ後輩に抜かれることを恐れているのか。

 プロは甘いもんじゃない。

 知ってる。

 知っていたがここまでとは。

 知らないうちに唇の端が上がっていた。

 上等。駆け抜けてやるよ。






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