百戦錬磨は好きすぎて押せない

紗々

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38.最終話

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 それからおよそ、半年後────




「…………。」

 ちゅっ。……ちゅっ。

「…………ん……」

 美晴…………。美晴の唇の感触がする。はぁぁ……幸せだ……。いい夢だな……。

 ……ひびきさん、……おきてー。
 ひびきさーん……

「……。…………?」

 ちゅっ。

「………………っ、……お、……本物かよ」
「ふふっ。おはようございます響さんっ」

 柔らかな唇の感触で目が覚めると、俺の上には天使のように可愛く笑っている美晴が乗っかっていた。俺に跨がってニコニコしている。あぁぁ……最高すぎる……。神様、ありがとうございます…………。

「……今日はやけにご機嫌じゃねぇか」

 俺は腕を伸ばして美晴の頬を撫でながら言った。

「ふふ。当たり前じゃないですか!一年で一番特別な日がやって来ましたよ!ついに!」
「……?…………おお。……うん」

 ……あれ?ヤバい。……何だっけ……。
 ぼんやりしていた俺の頭は美晴の言葉でスッと覚醒し、瞬時に回転し始めた。……何の記念日だ……?今日?一年で一番……?何だっけ……?

「……?……分かってます?響さん」

 美晴が少し不安げな顔をする。

「……わ、分かってるよ」
「嘘ですね」
「……何日だっけ今日。ごめん…」
「ふふふ…。やだなぁ響さん。10月22日じゃないですか」
「……。ああ、なんだ」

 焦ったぁ……。何だよ、俺の誕生日じゃねーか。よかった、大した日じゃなくて…。

「お誕生日おめでとうございます響さんっ!!」
「うおっ」

 美晴は満面の笑みで俺にぎゅうっと抱きついてくると、頬にキスをしてくれる。

(……おい、……何だこれは……。人生最高の誕生日じゃねーか…………!)

「……ありがとな、美晴」
「29歳ですよ、29歳っ!」
「それは何回も言うな」
「しかも今日は日曜日ですよ!僕が一日中響さんをお祝いしますからねっ!」
「…………可愛すぎか」

 こいつ……、自分の誕生日の時は普通にスルーして、「もう大人だし、そもそも僕の誕生日なんて大したイベントじゃあるまいし~」みたいな感じだったくせに。

 俺の誕生日は一年で一番特別な日なのかよ。

 (こういうところがまた可愛くてたまらないんだよなぁ…)

 はしゃぐ美晴を見ていると愛しさが込み上げてきて、俺はひしひしと幸せをかみしめた。

「今日の朝食は特別メニューですよ!セレブなホテル風の朝食をイメージして準備しました!もちろんメインはディナーですけどね。期待しててくださいね。ふふっ。出かけるからランチはカジュアルなフレンチのお店を予約してあるんです!あ、でもどこに出かけるかはまだ内緒ですよ。ふふん」
「……なぁ、美晴」
「ん?」

 俺の上に乗っかったまま瞳をキラキラさせて楽しそうに今日の予定を語る美晴を見つめる。

「……愛してるよ」
「……っ、………………。……へっ?!」

 キョトンとした美晴がワンテンポ遅れて耳まで真っ赤になった。

「あっ!あ、あ、……あい、……あ」
「愛してる。……お前に出会えてよかったよ、美晴」
「……っ、……ひ、…ひびきさん……」
「なぁ、俺もこれからのお前の誕生日は毎日当日に盛大に祝うからな。クリスマスイブもな」
「…………ふ、」
「ずっとだぞ。何年も、……何十年もだ」

 美晴は俺の言葉に目を見開いたかと思うと、大粒の涙をボロボロと零しはじめた。

「……ひ、ひびきさん……っ」

 それは俺にとっては、もうプロポーズしたも同然で。
 これから先の長い人生をずっと側にいてほしいと伝えたつもりだったのだが、……ちゃんと伝わったみたいだ。腕を伸ばして次々溢れてくるその涙を拭いながら尋ねる。

「……分かったか?」
「……うん……っ。……うん……!……じ、……人生最後の年までですよ……」
「ああ」
「や、やくそく、だからね……」
「……当たり前だろ。……死ぬまで離さねーよ」

 込み上げる想いのままに俺は美晴の腕を引き寄せ、その唇を奪う。互いにしっかりと腕を回して抱き合いながら熱い唇を重ねあう。俺は美晴の体をくるりとベッドに横たえ、その上に優しく覆い被さった。
 指を絡め、足を絡めながら何度も唇をついばみ、そして深く舌を交わらせ互いを激しく求め合う。

 朝の光。暖かいベッド。柔らかな美晴の肌の感触。
 何度も何度も幸せをかみしめながら愛しい人の首筋に顔を埋めていると、耳元で甘い声がした。


「響さん、……僕もあなたを愛しています」




   ーーーーー end ーーーーー



 最後まで読んでくださってありがとうございました!
 明日から後日談のようなものをいくつか更新します。




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