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第7章 ーノエル編ー

14 学園三年目

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「冒険クラブに二人とも入ってくれてよかったわね。本当にノエルは有言実行ね。」

リアとの休日のお茶会も三年生にもなればすっかり定着したイベントとなった。侍女のジェニーともすっかり仲良しである。

「それにしても、ネイトよ。何であんなにアレックスとリアが一緒にいると突っかかってくるの?」


先日の冒険クラブの活動で体力測定をしていた時のことだった。リアがアレックスに飲み物を渡しているところを目ざとく見つけたネイトが走ってきて、暴言を吐いて、また走っていったのだ。

ネイトの名前をだすとジェニーもぴくりと反応することから、マクレガー家では定番の絡みとなっているようだ。


「ネイトは…昔からああなのよ。」

リアも人前ではネイトの奇妙な行動をスルーするが、ノエルと二人の時は顔を暗くする。リアがネイトのことをあまりよく思っていないことは一目瞭然だ。


「ちょっと上手く言えないんだけど…。」

「まあ、問題があればいつでも言って。相談にのるわ。」

どうやらこれは貴族特有の事情が何かあるらしく、詳しく説明することをいつもリアは渋っていた。



ー---



「重大な発表があるんだ。僕、とんでもないものを見つけてしまったよ。」

そういうハロルドの一言で裏生徒会の面々が集められたのはとある日の夜のこと。場所は学園の2階の教職員用の女子トイレの前である。

ノエルとシャーリーは単純に興味津々で、ザラは疑うように、ショーンは戸惑って、その場に集まっていた。ちなみにティナとマックスは欠席である。

「それで、何を?」

「学園の伝説っていくつかあるよね?裏生徒会も伝説の一つだし、他にもいにしえの魔道具の保管所があるとか、学園と王城を結ぶ秘密の通路があるとか。
新入生がこの広すぎる学園を探検して回るのも毎年の恒例だよね。」

うん。ノエルも愛猫のオズマと見て回った。今日のオズマはノエルの足元にいる。

「僕も空き時間を利用して魔法学園を隅々まで調査したんだ。伝説の一つを見つけられないかと思ってね。研究所側には頻繁にいけないから調査はできてないけど、学園側の調査を昨年度に終えたんだ。」

研究所というのは魔法学園に隣接する研究所のことだ。学園の教師たちは皆研究所にも所属してそれぞれのテーマで研究を行っている。


「そして、この、2階の教職員用の女子トイレと隣の部屋との間に謎の空間があることが分かったんだ!ご丁寧に認識阻害の魔法までかけられているよ!」

…それ女子トイレの中にまで入って調べたということだろうか。

ハロルドは壁に歩み寄りある部分をバンバンと叩く。

「ちょうどここの部分だよ!どうやって中に入るのかといろいろ試してみたんだけど、この壁に魔力をながしながら『我、古の魔道具を求めるものなり』って言うと、ほら!」

今のは古語である。ノエルは昨年度と今学期、古語の授業を取っているのでわかる。
そして、ハロルドが示した壁の部分は黒く変色して、通り抜けられるようになっていた。

「入れるようになるんだ!ほら行くよ!」

ハロルドが入口を開けている間に中に入ると、想像していたのよりも何十倍も広いスペースが広がっており、そこにはまるで美術館のように魔道具が陳列されていた。



「すごいよ、ハロルド!大発見じゃないか!」

シャーリーが感嘆の声をあげてハロルドをほめたたえる。ハロルドも胸を張っている。

並べられた魔道具は多岐に渡った。『時間を巻き戻す魔道具』、『無限に物が入るカバン』、『透明になれるマント』、『瞬間移動用転移陣』、『洗脳するための魔道具』とご丁寧に借用記録までついて陳列されている。

「どれも、今のマジックアイテム技術じゃ作れない代物ばかりだよ!この瞬間移動用転移陣なんて、消費魔力ゼロだよ!」

ハロルドの説明にも力が入る。遠くでオズマがニャーとなく声がして進んでみると一つの台座をオズマがカリカリとひっかいていた。

「こら、オズマ!だめよ!」

オズマを抱き上げて台座の上を見ると…何もない。首を傾げる。借用記録を見れば、およそ100年前に借りだされたのちに、返却がなされていない。
魔道具の内容は『思想汚染のネックレス』だ。…これが野に出たままってまずいのでは?


慌ててみんなを呼び集めて事情を説明する。

「それは…まずいね。これ、ベースは闇魔法みたいだけど、魔力量の制限とかないみたいだし、相当強力だ。」


裏生徒会に新しい仕事が降ってきた。



ー---



クリスマス休暇となり、ノエルは父の下に帰ってきていた。大好きなウィザーズのクリスマスマッチが首都の大きな公園でスクリーン中継されることとなり、ショーンとアレックスを誘って試合を見に行くことになっていた。

青と黄色のユニフォームを着て、厚手のボーイッシュな上着とマフラーを着こむ。ズボンは最近平民間で話題のジーンズである。

「行ってくるね!パパン!」

料理の仕込みをしている父に声をかける。

今日はショーンが家に遊びに来てクリスマスパーティーをすることになっているのだ。料理上手な父は準備を張り切っている。もちろんノエルの誕生日ということもあるのだが。

「ああ。気を付けて行っておいで!」


大きな荷物を持ってノエルは元気よく家を飛び出した。


ー---



「ウィザーズ!よくやった!最高!」

青と黄色のマジックインク玉をバンバン投げてみんなでウィザーズの勝利をお祝いする。

「ノエル―!やっぱり来てたんだ!」

「もちろんだよー!ウィザーズ最高だった!!」

非魔法族の学校時代の友達もたくさん来ており、大いに盛り上がった。

「ノエル、すごいたくさん知り合いいるんだね。」

「まあこのあたりの人はね。」


セドリック魔法商会の新商品、カメラで写真を撮る。周りにもこの新作を持っている人は多い。

「それは?」

「マジックアイテムのインスタントカメラよ。撮った写真が5分ぐらいで印刷されるの!写真っていったら高級アイテムだけど、お手頃価格と手ごろさで発売と同時に非魔法族の中で爆売れしてるのよ。」

「へー、僕、それ知らなかったや。」

「貴族と平民では売れるマジックアイテムが全然違うんですって。これは父さんに買ってもらったの。」

そう、今朝一足早く誕生日プレゼントとして渡してくれたのだ。今日使いたいだろうから、と。


盛り上がる公園から出て、ノエルはショーンを連れて家に向かうが、とアレックスの方を見る。どこかで夕飯を食べて帰るとのことだったが、試合終わりでどの店も混んでるだろう。
アレックスも我が家のパーティーに誘うことにした。


「あ、でも帰りはリアたちの車に乗せてもらうことになってるんだ。ちょっと説明に行ってもいい?」

「いいわよ。貴族側の高級商店街の方?ちょっと遠回りになるけど、一緒に行くわ。」

そうして今にも泣きそうな顔のリアと遭遇するのだった。




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