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第二章 愛娘との幸せな生活を邪魔することは許しません
シャラの愛娘が誘拐されました。
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エルンストはその日も士官を夢見て諸国を放浪していた。
しかし、その日はダレル王宮にて騎士の面接を受けたが、マーマ王国を追放されたと聞いた途端に、面接を打ち切られた。マーマ王国と仲の良くないダレルならなんとかなると思っていたエルンストはがっかりしていた。
「もう、ダメかもしれない」
ボソリとつぶやくと、王宮の門の手前で、思わず立ち止まってしまった。
今まで10年間渡り歩いてきたが、ほとんど腕を見てもらうこともなかった。
何故か涙が止まらなくなった。
後から後から流れて来る。
腕で拭うが、
「大丈夫ですか」
そう言ってハンカチを出してくれた人がいた。
「えっ、すいません」
思わず、その白いハンカチで涙を拭いてしまった。
そして、その相手を見ると輝くような金髪に青い瞳をした少女だった。
「じゃ、私は行くから」
少女は歩き去ろうとした。
「えっ、ちょっとまってください。ハンカチを」
エルンストはハンカチを返そうとした。使ったハンカチを返して良いのかどうか判らなかったが。
「そのハンカチは差し上げます。大丈夫、いつか良いことは必ずあるから」
少女はエルンストを見て微笑むと手を降って去っていった。
エルンストにはその少女を見送ることしか出来なかった。彼にはその少女が女神に見えた。
そして、残されたそのハンカチには大きく『頑張れ』と刺繍されていたのだ。
はっと目が覚めた。気づくとエルンストはベッドに横になっていた。躰のあちこちが痛い。
しかし、それよりもエルンストの前にはその時の少女が心配そうにエルンストを見ていいた。
「えっ、げっ」
慌てて起きようとしてたが、躰に激痛が走った。
「目が覚めたのね。大丈夫?シャラザール様も酷いことするよね」
そう言いながらおでこに充てていたハンカチを取って洗面器の中で濡らしてもう一度載せてくれる。そこにも大きく『頑張れ』と書かれていた。
「すいません。あなたの騎士なのに、守れなくて」
「エルンストは十分にやってくれたよ。魔術を使いたいって言って戦ったのは私なんだから」
クローディアはエルンストを庇った。
「いえ、それと、昔、ハンカチを渡して頂けたのはクローディア様だったのですね。今まで判らなかつたです」
エルンストは気づかなかったことを悔やんだ。
「えっ、あ、このハンカチ、あったから使わせてもらったわ。私のだったから良いかなって。でも、こんな恥ずかしいハンカチまだ持ってくれていたんだ」
「いえ、本当にこのハンカチで勇気をもらえて、今まで宝物にしていました」
「えっ、止めてよ。こんなハンカチ。昔の手習いで刺繍しただけだから。そんなに上手くないし」
クローディアは恥ずかしがった。
「いえ、辛い時に慰めてもらって、本当に嬉しかったです。でも、あの時も恥ずかしいところを見られてしまって。
すいません。本当にいつもクローディア様の前では無様ですね」
エルンストは視線を下ろした。
「そんな事無いよ。
あの時は私も辛くて、でも、泣いているエルンスト見て、私以外にも辛い人はいるんだ。私も頑張ろうってエルンストに勇気づけられたんだから。
でも、辛い人見て勇気づけられるってどうかなとは思うけれど」
クローディアは申し訳無さそうに言った。
「いえ、クローデイア様に少しでもお役に立てたのなら良かったです」
そう言うエルンストは少し息があがって苦しそうだった。
「あ、ごめんなさい。まだ傷も治っていないのに」
クローディアはその様子をみて、慌てた。
「もう話さないで眠って」
クローディアが言う。
ダンッ、
その時に扉がいきなり開いた。
男達が入ってくる。
「何奴だ」
中でクローデイアの後ろにいたステバンが剣を構えるが、
先頭の男が衝撃波をステバンに放った。
ステバンは壁に叩きつけられて倒れた。
「動くな」
もう一人がクローディアにナイフを突き付ける。
あと一人がエルンストの躰にも剣を突きつけていた。
エルンストが剣に手を伸ばそうとしたが、その腹に剣柄で男が殴りつけていた。
「グウェェェ」
腹を抱えてエルンストが呻く。
「お嬢さん。魔術を使おうとはしないことだ。すればこの男が死ぬ」
最初にステバンを弾き飛ばした男が言った。男はエルンストに金縛りの魔術をかける。
「あなた達何者なの」
「何でも良かろう。行くぞ」
魔術師の男はそう言うと周りに合図した。
そして、次の瞬間には男3人とクローディアを連れて転移した。
エルンストはただただそれを呻きながら見ているしか無かった。
しかし、その日はダレル王宮にて騎士の面接を受けたが、マーマ王国を追放されたと聞いた途端に、面接を打ち切られた。マーマ王国と仲の良くないダレルならなんとかなると思っていたエルンストはがっかりしていた。
「もう、ダメかもしれない」
ボソリとつぶやくと、王宮の門の手前で、思わず立ち止まってしまった。
今まで10年間渡り歩いてきたが、ほとんど腕を見てもらうこともなかった。
何故か涙が止まらなくなった。
後から後から流れて来る。
腕で拭うが、
「大丈夫ですか」
そう言ってハンカチを出してくれた人がいた。
「えっ、すいません」
思わず、その白いハンカチで涙を拭いてしまった。
そして、その相手を見ると輝くような金髪に青い瞳をした少女だった。
「じゃ、私は行くから」
少女は歩き去ろうとした。
「えっ、ちょっとまってください。ハンカチを」
エルンストはハンカチを返そうとした。使ったハンカチを返して良いのかどうか判らなかったが。
「そのハンカチは差し上げます。大丈夫、いつか良いことは必ずあるから」
少女はエルンストを見て微笑むと手を降って去っていった。
エルンストにはその少女を見送ることしか出来なかった。彼にはその少女が女神に見えた。
そして、残されたそのハンカチには大きく『頑張れ』と刺繍されていたのだ。
はっと目が覚めた。気づくとエルンストはベッドに横になっていた。躰のあちこちが痛い。
しかし、それよりもエルンストの前にはその時の少女が心配そうにエルンストを見ていいた。
「えっ、げっ」
慌てて起きようとしてたが、躰に激痛が走った。
「目が覚めたのね。大丈夫?シャラザール様も酷いことするよね」
そう言いながらおでこに充てていたハンカチを取って洗面器の中で濡らしてもう一度載せてくれる。そこにも大きく『頑張れ』と書かれていた。
「すいません。あなたの騎士なのに、守れなくて」
「エルンストは十分にやってくれたよ。魔術を使いたいって言って戦ったのは私なんだから」
クローディアはエルンストを庇った。
「いえ、それと、昔、ハンカチを渡して頂けたのはクローディア様だったのですね。今まで判らなかつたです」
エルンストは気づかなかったことを悔やんだ。
「えっ、あ、このハンカチ、あったから使わせてもらったわ。私のだったから良いかなって。でも、こんな恥ずかしいハンカチまだ持ってくれていたんだ」
「いえ、本当にこのハンカチで勇気をもらえて、今まで宝物にしていました」
「えっ、止めてよ。こんなハンカチ。昔の手習いで刺繍しただけだから。そんなに上手くないし」
クローディアは恥ずかしがった。
「いえ、辛い時に慰めてもらって、本当に嬉しかったです。でも、あの時も恥ずかしいところを見られてしまって。
すいません。本当にいつもクローディア様の前では無様ですね」
エルンストは視線を下ろした。
「そんな事無いよ。
あの時は私も辛くて、でも、泣いているエルンスト見て、私以外にも辛い人はいるんだ。私も頑張ろうってエルンストに勇気づけられたんだから。
でも、辛い人見て勇気づけられるってどうかなとは思うけれど」
クローディアは申し訳無さそうに言った。
「いえ、クローデイア様に少しでもお役に立てたのなら良かったです」
そう言うエルンストは少し息があがって苦しそうだった。
「あ、ごめんなさい。まだ傷も治っていないのに」
クローディアはその様子をみて、慌てた。
「もう話さないで眠って」
クローディアが言う。
ダンッ、
その時に扉がいきなり開いた。
男達が入ってくる。
「何奴だ」
中でクローデイアの後ろにいたステバンが剣を構えるが、
先頭の男が衝撃波をステバンに放った。
ステバンは壁に叩きつけられて倒れた。
「動くな」
もう一人がクローディアにナイフを突き付ける。
あと一人がエルンストの躰にも剣を突きつけていた。
エルンストが剣に手を伸ばそうとしたが、その腹に剣柄で男が殴りつけていた。
「グウェェェ」
腹を抱えてエルンストが呻く。
「お嬢さん。魔術を使おうとはしないことだ。すればこの男が死ぬ」
最初にステバンを弾き飛ばした男が言った。男はエルンストに金縛りの魔術をかける。
「あなた達何者なの」
「何でも良かろう。行くぞ」
魔術師の男はそう言うと周りに合図した。
そして、次の瞬間には男3人とクローディアを連れて転移した。
エルンストはただただそれを呻きながら見ているしか無かった。
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