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王女の侍女は大国公爵令息に剣術を教えてもらいました
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その後何故かアルバートが構ってくることが多くなった。先日のお出かけに私達についてきた時は、絶対にクリスが気になってついて来たはずなのに。何故かその後私にも構ってくれるようになったのだ。
私としても彼の胸で泣き尽くしてしまったという負い目があるので、と言うか、何であんな事が出来たんだろう。いくら両親が殺されたという衝撃の真実が判ったからといって、小国の平民の女が超大国の公爵家の方の胸で泣くなどあり得なかったとし、本来ならば許される訳はなかった。
彼は自分と対戦して気絶させてしまった私の様子を、たまたま少し見に来てくれただけなのだ。本来はうら若い淑女の寝顔を見せるなどという恥ずかしいことが、許されるわけはないと思うのだが、それを許したミアも許しがたいのだが、彼と対戦して気絶させてしまったから責任をとって様子を見る、という申し出を断りきれなかったと言われれば仕方がなかった。
彼は礼儀正しい筆頭魔導師様の近衛騎士なのだから。
いくらショックを受けていたからと言って、その胸で泣いてしまった私が悪いのだ。
抱きつき令嬢を怖れていると聞いていたのに、私が抱きつき令嬢になってしまった。それも泣き付き令嬢だ。アルバートが優しかったから許してくれたのだろうと思うし、気絶させたと言う負い目から許してくれたのだろうと思う。もっとも私が能力以上の障壁を出して勝手に気絶しただけなのだが。
でも、これは止めて欲しい。
放課後、剣を構えて教えてもらっているのだが、やたらに近いのだ。絶対に近すぎる。
今もほとんど密着するようにして腕の振り方を教えてくれているのだ。
彼は真剣に教えてくれているだけで、決して邪な考えはないのは判る。
でも、アルバートはイケメンで、凛々しい男性なのだ。
そして、私もこんなのでも一応女なのだ。
いくら私でも意識してしまう。
「ソニア、ぼうっとしないで。もっと強く振る」
アルバートが注意してくれる。
「すいません」
私は必死に集中しようとした。そう、彼は私のために訓練についてくれているのだ。
真面目にやらなくてどうする。
でも、どうしても多少意識してしまうのは許してほしかった。
「ソニアさん。あなたアルバート様と近すぎるのではなくて」
数学の授業が終わった後に私は令嬢達に囲まれてしまった。
実践コースの数学の実力があまりにも皆かけ離れているので、数学は魔導師コースと合同でレベル別に分けられたのだ。
私は当然の最下位クラスだった。
そして、当然このクラスにはアルバートもクリスもいないのでボフミエお貴族様方に囲まれてしまったのだ。
「アルバート様はドラフォード王国の公爵家令息なのよ。あなたみたいな平民が近づいていい相手ではないのよ」
「そうよ。あなた、昨日も訓練場でアルバート様にしなだれかかっていたわね」
「本当に可愛い顔してよくやるわ」
「さすが、淫乱王国から来た者は違うわね」
その最後の言葉に私はピキッと切れた。私個人がいくら貶められようとそれは良い。しかし、故国インダルを淫乱と呼ばれたら黙っているわけには行かなかった。
「さすがにボフミエのお貴族様はオツムのお弱い方が多いのですね」
私は馬鹿にしたように周りを見回した。
「なんですって」
キーキー言っていたどこぞの伯爵令嬢が目の色を変えた。
「だってインダルを淫乱としか読めないんですから。もう一度文字の読み方の勉強を一からしたほうが良いのでは」
私がイヤミたらたら言う。
「何言うのよ。そんなの判っているわよ。わざとに違いないでしょ」
キーキー声で令嬢が言い返してきた。
「ふんっ。だから低能だと言っているのよ。そんな酒場の酔っ払いの親父がするような低能な言い間違いをして恥ずかしくないの。貴族だって威張りたからったらもっとウィットに富んだ嫌味を言いなさいよ」
「なんですって。ちょっと自分が外国人でう、ウィ何とかって言葉を知っているから威張るなんてもう許さないわ」
この馬鹿令嬢ウィットも知らなかったんだ。ふん。馬鹿め。私も昨日クリスに聞いたところなのよ。貴族は当然知っていると思ったのに、平民のクリスのほうが余程物知りだし、姿勢も美しいし、叡智に富んでいるわ。
で、令嬢たちが近づいてきたけれど、ここで障壁張ってもいいかな。私は流石に危険を感じてそう思った。
「やめろ。そこまでだ」
大声で止められた。
そこには怒っているアルバートがいた。
「ボフミエの貴族共も集団でしょうもないことをするなよな。
そもそもソニア嬢の剣術を見ているのは私が筆頭魔導師様から命令されたからだ。その方共は筆頭魔導師様に逆らうのか」
アルバートは怒りの冷気を漂わせながら仁王立ちしていた。
「も、申し訳ありません」
令嬢達は慌てて頭を下げると散り散りに逃げて行った。
私はアルバートに助けてもらってホっとした。
でも、やっぱりアルバートが私の面倒見てくれているのは筆頭魔導師様に言われたからなんだ。
少し前なら筆頭魔導師様が私のことを考えていただけたなんてと大喜びしたと思うのに、何故かがっかりしている私がそこにいた。
何にがっかりしているんだろう。
「助けて頂いてありがとう御差いました」
私が頭を下げる。
「もう少し見ていても良かったのだが、あそこでソニアに障壁を使われると被害が甚大だからな。何しろ私でも吹き飛ばされたくらだから」
ニコっと笑ってアルバートが言った。
いやもう言うの止めて欲しい。本当に卑怯なことをしたと反省しています。本来ならば私の能力では絶対にアルバートには勝てなかったのだ。それは実際に教えてもらってよく判る。彼は剣術でも魔術でも、ボフミエの中で指折りだった。
それを奇襲で攻撃してたまたま勝てただけなのだ。
「何してる時間がない。行くぞ」
そう言うとアルバートが私の手を掴んで歩き出したのだ。
えっ、止めて。
私は真っ赤になった。頭の中もパニクる。
でもそんな私にお構いなしにアルバートは私の手を引いてずんずん歩いていった。
私としても彼の胸で泣き尽くしてしまったという負い目があるので、と言うか、何であんな事が出来たんだろう。いくら両親が殺されたという衝撃の真実が判ったからといって、小国の平民の女が超大国の公爵家の方の胸で泣くなどあり得なかったとし、本来ならば許される訳はなかった。
彼は自分と対戦して気絶させてしまった私の様子を、たまたま少し見に来てくれただけなのだ。本来はうら若い淑女の寝顔を見せるなどという恥ずかしいことが、許されるわけはないと思うのだが、それを許したミアも許しがたいのだが、彼と対戦して気絶させてしまったから責任をとって様子を見る、という申し出を断りきれなかったと言われれば仕方がなかった。
彼は礼儀正しい筆頭魔導師様の近衛騎士なのだから。
いくらショックを受けていたからと言って、その胸で泣いてしまった私が悪いのだ。
抱きつき令嬢を怖れていると聞いていたのに、私が抱きつき令嬢になってしまった。それも泣き付き令嬢だ。アルバートが優しかったから許してくれたのだろうと思うし、気絶させたと言う負い目から許してくれたのだろうと思う。もっとも私が能力以上の障壁を出して勝手に気絶しただけなのだが。
でも、これは止めて欲しい。
放課後、剣を構えて教えてもらっているのだが、やたらに近いのだ。絶対に近すぎる。
今もほとんど密着するようにして腕の振り方を教えてくれているのだ。
彼は真剣に教えてくれているだけで、決して邪な考えはないのは判る。
でも、アルバートはイケメンで、凛々しい男性なのだ。
そして、私もこんなのでも一応女なのだ。
いくら私でも意識してしまう。
「ソニア、ぼうっとしないで。もっと強く振る」
アルバートが注意してくれる。
「すいません」
私は必死に集中しようとした。そう、彼は私のために訓練についてくれているのだ。
真面目にやらなくてどうする。
でも、どうしても多少意識してしまうのは許してほしかった。
「ソニアさん。あなたアルバート様と近すぎるのではなくて」
数学の授業が終わった後に私は令嬢達に囲まれてしまった。
実践コースの数学の実力があまりにも皆かけ離れているので、数学は魔導師コースと合同でレベル別に分けられたのだ。
私は当然の最下位クラスだった。
そして、当然このクラスにはアルバートもクリスもいないのでボフミエお貴族様方に囲まれてしまったのだ。
「アルバート様はドラフォード王国の公爵家令息なのよ。あなたみたいな平民が近づいていい相手ではないのよ」
「そうよ。あなた、昨日も訓練場でアルバート様にしなだれかかっていたわね」
「本当に可愛い顔してよくやるわ」
「さすが、淫乱王国から来た者は違うわね」
その最後の言葉に私はピキッと切れた。私個人がいくら貶められようとそれは良い。しかし、故国インダルを淫乱と呼ばれたら黙っているわけには行かなかった。
「さすがにボフミエのお貴族様はオツムのお弱い方が多いのですね」
私は馬鹿にしたように周りを見回した。
「なんですって」
キーキー言っていたどこぞの伯爵令嬢が目の色を変えた。
「だってインダルを淫乱としか読めないんですから。もう一度文字の読み方の勉強を一からしたほうが良いのでは」
私がイヤミたらたら言う。
「何言うのよ。そんなの判っているわよ。わざとに違いないでしょ」
キーキー声で令嬢が言い返してきた。
「ふんっ。だから低能だと言っているのよ。そんな酒場の酔っ払いの親父がするような低能な言い間違いをして恥ずかしくないの。貴族だって威張りたからったらもっとウィットに富んだ嫌味を言いなさいよ」
「なんですって。ちょっと自分が外国人でう、ウィ何とかって言葉を知っているから威張るなんてもう許さないわ」
この馬鹿令嬢ウィットも知らなかったんだ。ふん。馬鹿め。私も昨日クリスに聞いたところなのよ。貴族は当然知っていると思ったのに、平民のクリスのほうが余程物知りだし、姿勢も美しいし、叡智に富んでいるわ。
で、令嬢たちが近づいてきたけれど、ここで障壁張ってもいいかな。私は流石に危険を感じてそう思った。
「やめろ。そこまでだ」
大声で止められた。
そこには怒っているアルバートがいた。
「ボフミエの貴族共も集団でしょうもないことをするなよな。
そもそもソニア嬢の剣術を見ているのは私が筆頭魔導師様から命令されたからだ。その方共は筆頭魔導師様に逆らうのか」
アルバートは怒りの冷気を漂わせながら仁王立ちしていた。
「も、申し訳ありません」
令嬢達は慌てて頭を下げると散り散りに逃げて行った。
私はアルバートに助けてもらってホっとした。
でも、やっぱりアルバートが私の面倒見てくれているのは筆頭魔導師様に言われたからなんだ。
少し前なら筆頭魔導師様が私のことを考えていただけたなんてと大喜びしたと思うのに、何故かがっかりしている私がそこにいた。
何にがっかりしているんだろう。
「助けて頂いてありがとう御差いました」
私が頭を下げる。
「もう少し見ていても良かったのだが、あそこでソニアに障壁を使われると被害が甚大だからな。何しろ私でも吹き飛ばされたくらだから」
ニコっと笑ってアルバートが言った。
いやもう言うの止めて欲しい。本当に卑怯なことをしたと反省しています。本来ならば私の能力では絶対にアルバートには勝てなかったのだ。それは実際に教えてもらってよく判る。彼は剣術でも魔術でも、ボフミエの中で指折りだった。
それを奇襲で攻撃してたまたま勝てただけなのだ。
「何してる時間がない。行くぞ」
そう言うとアルバートが私の手を掴んで歩き出したのだ。
えっ、止めて。
私は真っ赤になった。頭の中もパニクる。
でもそんな私にお構いなしにアルバートは私の手を引いてずんずん歩いていった。
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