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王女の侍女に国王死去の報が届きました

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これってキスだ。キスだよね。でも何で私に・・・・・

アルバートの唇が離れた時には、私は完全に固まっていた。

それは一瞬のことだったとはずだが、私にはとても長い時間のように感じた。

「ゴメン。無事に帰ってくる、おまじないだから」
そう言うとアルバートは離れた。

えっ、おまじない?おまじないでキスするの?

私には青天の霹靂と言うか何がなんだか判らなかった。

アルバートには色々聞きたかったが、ちょうどその時に授業の終わりのベルがなった。

「じゃあ、絶対に無事に帰ってくるから、必ず待っていて欲しい」

私は頭の中が働かなくて真っ赤になったまま頷くしか出来なかった。

そのままアルバートに教室まで送られてそこで別れた。

私はあまりにもショックが大きくて何も話せなかった。

戦場に向かうアルバートにもう少し何か言葉をかければ良かったと思ったのは後の祭りだった。




次の魔術の実技の授業は散々だった。

ファイアーボールはまたUターンして返ってくるし、衝撃波を放つと横の人の的に当たるわと散々だった。、

「ソニアさん。魔王のクロチア侵攻はショックかも知れませんが、授業に集中してくださいね」
マルクス先生に注意された。

魔王のクロチア侵攻なんてそもそも頭の外に飛んでいたのだが、それ以上にアルバートのことが気になって私の頭の中はアルバート一色になっていた。


でも、大半の人間は魔王のクロチア侵攻で自国インダルがどうなるか気になって、私の行動がおかしくなっていると取ってくれたみたいだった。


昼休みが来た。クリスがいれば色々相談に乗ってもらうところだが、クリスはいない。アルバートと一緒に戦場に出るんだろうか。

ケチャとメリが横にいたが、こんな事相談したらあっという間に広まってしまう。アルバートからキスされたなんて絶対に相談できなかった。

そもそも、アルバートからしたら、彼女がいないから適当な年下女性の私がいたから無事に帰るお守りのつもりで、私にキスしたに違いないのだ。
愛情表現とかそんなのはあり得ない。
お守りと言うかおまじないで女性とキスするのかという問題はあるが、南方はそういうことがルーズだと聞いたことがある。北方は厳格だが、南の方は普通に挨拶だけでキスする国とかもあるそうだ。

公爵家の令息のアルバートが弱小国の平民の私に恋する感情を抱くはずはない。単なるおまじないでキスしたんだと私は思うことにした。

「ねえ、ソニア、そのペンダントどうしたの?」
ケチャが聞いてきた。
胸にはアルバートからもらった風車のモチーフのペンダントが光っていた。


「戦場に出るからアルバート様が預かって欲しいって」
「えっ、そうなの。それってアルバート様の愛情表現?」
ケチャが言ってきた。そう、ケチャなら絶対にそう言うと思っていた。

「そんなのあるわけ無いでしょ。アルバート様は私の護身術の師匠なのよ。弟子が持っていると安全祈願になるんだって」
私は適当な言い訳、おそらくあっていると思うが、を言った。

「そうなの?」
「師匠と弟子の愛が育まれたんじゃ」
メリまで言ってくる。

「そんな訳無いでしょう。アルバート様はまだ、インダルを助けるという賭けを実行していないから気にされているのよ。その担保みたいなものだと思うわ」
「そうなのかな」
「そんなのでアクセサリーをソニアに預ける?」
二人はからかってきた。

「だってアルバート様は超大国のドラフォード王国の筆頭公爵家の方なのよ。
容姿端麗、世界最強筆頭魔導師様の護衛騎士として筆頭魔導師様の覚えも目出度い出世株よ。
方や私は超弱小国でお家騒動真っ只中の王女付きの平民の侍女だよ。
やることなすこと失敗だらけで、容姿も人並み、インダル出身のドジっ子平民だって周りから思われている私と釣り合うわけもないじゃない。
このクラスで一番可能性のない私よ」
私は言い切った。

「何もそこまで言うこと無いのに」
「そうよ、そこまで聞くとソニアが可愛そうになってくるわ」
ケチャとメリが頷く。

おい、そこは、そんな事無いよって少しくらい私の良いところあげてくれて慰めてくれるのが普通なんじゃないの。

何みんなして可哀そうなものを見るように見てるのよ。
私は大声で言いたかった。

でも、周りから冷静に見れば私が言ったとおりなのだろう。

いつも突っかかってくる貴族の令嬢方からも可哀そうな者を見るように見られるし。

私としてはアルバートとクリスが無事に帰ってくれば良いと思うようにした。
魔王がインダル王国にちょっかい出す前に、ボフミエ軍が魔王軍を殲滅してくれることを祈っていた。


しかし、物事は私が思うようには進まなかった。

その1週間後にインダル国王死去の報がもたらされたのだ。
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