6 / 8
第6話
しおりを挟む
伯爵とマルチナは暴れるが、すぐに後ろ手に縛られる。王子による婚約者選びは国の大事な伝統である。それを汚した者は重く罰せられるのが決まりである。やがて親子は床に跪かされると、ウォレスを見上げた。
「どうして……! どうしてアデルなのよ……!?」
「そうだ……! あんな平民女が選ばれる理由はない……!」
「アデルが平民? 伯爵、あなたは本気でそう言っているのか?」
ウォレスは椅子に腰かけると、冷たく親子を見下ろした。
「アデルは平民ではない。伯爵、あなたの妹の娘――つまり姪だろう?」
「ち、違うッ! 私の姪は賊に襲われ、家族ごと死んだッ!」
「ナハルネック公爵家襲撃事件のことだね?」
「そうだッ! アデルは何の関係もない平民だッ!」
そう叫ぶ伯爵にウォレスは告げた。
「残念だったね、伯爵。この間、ついに賊が捕まったよ。その連中は口を揃えてアバルティエ伯爵に頼まれてナハルネック公爵家を襲ったと白状した。さらには娘をひとり取り逃がしたとも言っていた。あなたは昔から妹を虐げており、その妹が公爵家に嫁いだことをずっと根に持っていたようだね。まあ、同機は何であれ、あなたの未来は決定している――死罪だ」
「は? は……――」
「それと生き残りであるアデルを侍女の身分に落とし、虐げてきたね? マルチナは父の悪事を全て知った上で、アデルを虐待して利用してきた。この罪は死罪にまでは届かないが、重い罪として君に伸しかかるだろう」
「う、嘘……そんな……――」
その言葉に伯爵とマルチナは狼狽える。しかし従者がその体を引いて連れていこうとすると、親子は大騒ぎした。アデルはそんな様子を無言と無表情のままで、じっと眺めていた。ウォレスはそんな彼女を悲し気な目で見るのだった。
「どうして……! どうしてアデルなのよ……!?」
「そうだ……! あんな平民女が選ばれる理由はない……!」
「アデルが平民? 伯爵、あなたは本気でそう言っているのか?」
ウォレスは椅子に腰かけると、冷たく親子を見下ろした。
「アデルは平民ではない。伯爵、あなたの妹の娘――つまり姪だろう?」
「ち、違うッ! 私の姪は賊に襲われ、家族ごと死んだッ!」
「ナハルネック公爵家襲撃事件のことだね?」
「そうだッ! アデルは何の関係もない平民だッ!」
そう叫ぶ伯爵にウォレスは告げた。
「残念だったね、伯爵。この間、ついに賊が捕まったよ。その連中は口を揃えてアバルティエ伯爵に頼まれてナハルネック公爵家を襲ったと白状した。さらには娘をひとり取り逃がしたとも言っていた。あなたは昔から妹を虐げており、その妹が公爵家に嫁いだことをずっと根に持っていたようだね。まあ、同機は何であれ、あなたの未来は決定している――死罪だ」
「は? は……――」
「それと生き残りであるアデルを侍女の身分に落とし、虐げてきたね? マルチナは父の悪事を全て知った上で、アデルを虐待して利用してきた。この罪は死罪にまでは届かないが、重い罪として君に伸しかかるだろう」
「う、嘘……そんな……――」
その言葉に伯爵とマルチナは狼狽える。しかし従者がその体を引いて連れていこうとすると、親子は大騒ぎした。アデルはそんな様子を無言と無表情のままで、じっと眺めていた。ウォレスはそんな彼女を悲し気な目で見るのだった。
42
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、推しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
【完結・全10話】偽物の愛だったようですね。そうですか、婚約者様?婚約破棄ですね、勝手になさい。
BBやっこ
恋愛
アンネ、君と別れたい。そういっぱしに別れ話を持ち出した私の婚約者、7歳。
ひとつ年上の私が我慢することも多かった。それも、両親同士が仲良かったためで。
けして、この子が好きとかでは断じて無い。だって、この子バカな男になる気がする。その片鱗がもう出ている。なんでコレが婚約者なのか両親に問いただしたいことが何回あったか。
まあ、両親の友達の子だからで続いた関係が、やっと終わるらしい。
【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜
よどら文鳥
恋愛
ジュリエル=ディラウは、生まれながらに婚約者が決まっていた。
ハーベスト=ドルチャと正式に結婚する前に、一度彼の実家で同居をすることも決まっている。
同居生活が始まり、最初は順調かとジュリエルは思っていたが、ハーベストの義理の妹、シャロン=ドルチャは病弱だった。
ドルチャ家の人間はシャロンのことを溺愛しているため、折角のデートも病気を理由に断られてしまう。それが例え僅かな微熱でもだ。
あることがキッカケでシャロンの病気は実は仮病だとわかり、ジュリエルは真実を訴えようとする。
だが、シャロンを溺愛しているドルチャ家の人間は聞く耳持たず、更にジュリエルを苦しめるようになってしまった。
ハーベストは、ジュリエルが意図的に苦しめられていることを知らなかった。
【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう
水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。
しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。
マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。
マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。
そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。
しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。
怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。
そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。
そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる