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秀頼ルート 黒幕捜査3
VS 五大老―前編―(エロ度☆☆☆☆☆)
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五大老が揃って大阪城を訪れるのは一体何時ぶりだろう。
五奉行の様に頻繁に大阪に政務で訪れる者達と違い、彼等は主に京の聚楽第で執政を取ることが多い。
特に俺が福岡にいた頃は日本の政治はほぼ彼等が、そして、その先頭で旗を振っていたのは秀次叔父上。
「陛下、お久しゅうございます。お元気そうなご様子、なによりでございます」
秀次叔父上が平伏すのと同時に他の四人も平伏す。どうやらこの五人自体は上手くいってそうで良かった。
「ああ、叔父上も元気そうで何より。他の皆も何時もありがとうね」
前回集まったのは・・・・・・そうだ。正月の挨拶の時だ。
でも、あの時は大名全員が集まるし、基本的に元旦の呑み会のせいで適当に終わらせるためか、挨拶もそこそこにしかしない。
「積もる話もあるかとは思うが・・・・・・本題から終わらせよう。叔父上」
「はっ! では、先ずはこちらを――
「いや、そのまま読み上げてくれ。大体内容は分かっている」
叔父上が小姓に文を渡そうとするのを押し止め、その場で読むように指示する。
「・・・・・・では、我ら五奉行は、罪人・徳川家康の逃亡に連なる一連の問題において、殿に質問させていただきたき議があり参上つかまつりました」
「結論を」
「・・・・・・はっ! 一つ、何故に徳川秀忠を始めとしたその一族の処刑が未だに行われないのか。一つ、その係累である現皇后の処遇が未だに決まらず、なおその地位にあるのは何故か。一つ、その皇后が明で我が軍の指揮を執っていると言う噂についての真偽を確かめさせていただきたい。以上にございます」
さて、予想通りの内容だ。これさえ無ければお千にもっと時間を与え、ゆっくりと侵攻させることも出来ただろう。
「答えは逆から言った方が分かりやすいだろう。先ず、今回の件で俺は処理のために大阪に戻る必要が出た。だが、俺は当時明征伐の真っ最中、何時明が大勢力で攻めて来るか分からん状況で総大将が現場を離れるのは避けたかったのだ」
「し、しかし、何故そこで皇后様が総大将と言う事になるのです!?」
その声を上げたのは(宇喜多)秀家。
この中では若手に当たる。
「あの場には確かに清正がいた。清正に任せることも出来たわけだが・・・・・・。景勝、今の清正の立場はなんだ?」
「殿の、相談役、でございますな」
そう、かつては七将の一人として、豊臣家においては第一級の武将であったが、今は俺の相談役でしかないのだ。
「そうだ。元七将軍であり、大大名だとはいえ、今の立場は違う。清正には部隊の指揮権と軍の指導権はあるが、全軍の指揮権まではない。また、それを与えられる立場にするためにはもう一度七将軍となってもらわねばならない」
「・・・・・・そうなれば関東と九州の両方が加藤殿の指揮下に置かれると言って良い。いえ、それどころか細川と組めば近畿の勢力も、か」
そう、関東の加藤家は細川家からの養子が指揮している。
もしも、七将軍の内の三将が背くことがあれば、豊臣政権にとってどれほどの害となるか。
・・・・・・まぁ、それはただのはったりで、そんな心配は欠片もしなかったけどね。
「それに、お千は皇后だ。俺がいないとなれば総大将となる資格がある」
この時代、女性が指揮を執る理由のほとんどは夫の不在が理由。
家臣たちが実質的な指揮を執るのだとしても、上下関係に無い家臣同士をまとめるのに責任者は必要になるからだ。
明文化はしないまでも誰もがそれを理解している。
「しかし、徳川家康の孫にございます」
もっとも大身である輝元が食い下がってくる。
「その時点では家康が逃亡であるのかも、拉致であったのかも分からなかった」
「それはこの際どうでもよいことにございます」
それは実際、五大老にとっても総意なのだろう。
多少、不遜とも言える輝元の言葉を誰も止めようとはしない。
「そうだ。どうでもいい事だ。どちらにしても断罪はしなければならない。だが、それを決めるまで、俺が大阪でそれを行うまで、明で指揮を執る者が必要となったのだ。実際には清正達がその行動を決めるのだとしても、指揮権を持つ立場の者がそこにいる必要がある」
「・・・・・・皇后様が未だにその地位にあるのは」
「皇后で無くなれば指揮権も無くなる。そうすれば、明の地で戦う軍が混乱してしまう」
「では、徳川秀忠の一族を処断せぬのも?」
「取り調べの最中であることも確か、だが、同時に処断が決まれば・・・・・・お千もそのままと言うわけにもいかないだろう?」
「・・・・・・」
さて、お千の処遇に関しての理屈はこれが全て、お千を救うためだけの後付けの理由の数々に内心では俺も笑っている。
よくもまぁ、こんなに適当なことを言えたものだ。
まぁ、あとは・・・・・・。
「それだけ、でございますか?」
「何がだ?」
「・・・・・・明にいる我が軍に妙な噂が立っているそうにございます。このまま敵を迎え撃った後は南京に攻め入る、と」
「随分と耳が良いな輝元。領地が明に近いからか、それとも・・・・・・」
「問題を挿げ替えないでいただきたい。殿、どうしてそのようなことを?」
政宗と同様に間者を放っているのだろう。
だが、それ自体は既にバレていることは百も承知。
「ふぅ、もう分かっているんだろう?」
一つ息を吐いて周りを見渡す。
「俺はお千を皇后から降ろすつもりはない。南京を攻めさせるのは、その功をもって徳川家の赦免を行うためだ」
「っ! 陛下!?」
「もちろん、これは誰にでもやってやれる措置ではない。そもそも、お千だからこそ出来た方法だしな」
一同が黙り込む。
ここからが本当の戦い、それを皆が理解しているのだ。
俺は当然今の理屈を認めさせ、お千を救うために。
秀次叔父上は表に出さなくても俺に賛同と捉えて良いだろう。
・・・・・・だが、今回ばかりは秀家は不満な様だ。
輝元、景勝は法に照らし処罰することを望んでいる。
唯一、利長だけがその態度を示さないままで黙っている。
利長か秀家をこの場で懐柔する。
それがお千を救い、豊臣家の中にトラブルを残さない唯一の方法となるだろう。
五奉行の様に頻繁に大阪に政務で訪れる者達と違い、彼等は主に京の聚楽第で執政を取ることが多い。
特に俺が福岡にいた頃は日本の政治はほぼ彼等が、そして、その先頭で旗を振っていたのは秀次叔父上。
「陛下、お久しゅうございます。お元気そうなご様子、なによりでございます」
秀次叔父上が平伏すのと同時に他の四人も平伏す。どうやらこの五人自体は上手くいってそうで良かった。
「ああ、叔父上も元気そうで何より。他の皆も何時もありがとうね」
前回集まったのは・・・・・・そうだ。正月の挨拶の時だ。
でも、あの時は大名全員が集まるし、基本的に元旦の呑み会のせいで適当に終わらせるためか、挨拶もそこそこにしかしない。
「積もる話もあるかとは思うが・・・・・・本題から終わらせよう。叔父上」
「はっ! では、先ずはこちらを――
「いや、そのまま読み上げてくれ。大体内容は分かっている」
叔父上が小姓に文を渡そうとするのを押し止め、その場で読むように指示する。
「・・・・・・では、我ら五奉行は、罪人・徳川家康の逃亡に連なる一連の問題において、殿に質問させていただきたき議があり参上つかまつりました」
「結論を」
「・・・・・・はっ! 一つ、何故に徳川秀忠を始めとしたその一族の処刑が未だに行われないのか。一つ、その係累である現皇后の処遇が未だに決まらず、なおその地位にあるのは何故か。一つ、その皇后が明で我が軍の指揮を執っていると言う噂についての真偽を確かめさせていただきたい。以上にございます」
さて、予想通りの内容だ。これさえ無ければお千にもっと時間を与え、ゆっくりと侵攻させることも出来ただろう。
「答えは逆から言った方が分かりやすいだろう。先ず、今回の件で俺は処理のために大阪に戻る必要が出た。だが、俺は当時明征伐の真っ最中、何時明が大勢力で攻めて来るか分からん状況で総大将が現場を離れるのは避けたかったのだ」
「し、しかし、何故そこで皇后様が総大将と言う事になるのです!?」
その声を上げたのは(宇喜多)秀家。
この中では若手に当たる。
「あの場には確かに清正がいた。清正に任せることも出来たわけだが・・・・・・。景勝、今の清正の立場はなんだ?」
「殿の、相談役、でございますな」
そう、かつては七将の一人として、豊臣家においては第一級の武将であったが、今は俺の相談役でしかないのだ。
「そうだ。元七将軍であり、大大名だとはいえ、今の立場は違う。清正には部隊の指揮権と軍の指導権はあるが、全軍の指揮権まではない。また、それを与えられる立場にするためにはもう一度七将軍となってもらわねばならない」
「・・・・・・そうなれば関東と九州の両方が加藤殿の指揮下に置かれると言って良い。いえ、それどころか細川と組めば近畿の勢力も、か」
そう、関東の加藤家は細川家からの養子が指揮している。
もしも、七将軍の内の三将が背くことがあれば、豊臣政権にとってどれほどの害となるか。
・・・・・・まぁ、それはただのはったりで、そんな心配は欠片もしなかったけどね。
「それに、お千は皇后だ。俺がいないとなれば総大将となる資格がある」
この時代、女性が指揮を執る理由のほとんどは夫の不在が理由。
家臣たちが実質的な指揮を執るのだとしても、上下関係に無い家臣同士をまとめるのに責任者は必要になるからだ。
明文化はしないまでも誰もがそれを理解している。
「しかし、徳川家康の孫にございます」
もっとも大身である輝元が食い下がってくる。
「その時点では家康が逃亡であるのかも、拉致であったのかも分からなかった」
「それはこの際どうでもよいことにございます」
それは実際、五大老にとっても総意なのだろう。
多少、不遜とも言える輝元の言葉を誰も止めようとはしない。
「そうだ。どうでもいい事だ。どちらにしても断罪はしなければならない。だが、それを決めるまで、俺が大阪でそれを行うまで、明で指揮を執る者が必要となったのだ。実際には清正達がその行動を決めるのだとしても、指揮権を持つ立場の者がそこにいる必要がある」
「・・・・・・皇后様が未だにその地位にあるのは」
「皇后で無くなれば指揮権も無くなる。そうすれば、明の地で戦う軍が混乱してしまう」
「では、徳川秀忠の一族を処断せぬのも?」
「取り調べの最中であることも確か、だが、同時に処断が決まれば・・・・・・お千もそのままと言うわけにもいかないだろう?」
「・・・・・・」
さて、お千の処遇に関しての理屈はこれが全て、お千を救うためだけの後付けの理由の数々に内心では俺も笑っている。
よくもまぁ、こんなに適当なことを言えたものだ。
まぁ、あとは・・・・・・。
「それだけ、でございますか?」
「何がだ?」
「・・・・・・明にいる我が軍に妙な噂が立っているそうにございます。このまま敵を迎え撃った後は南京に攻め入る、と」
「随分と耳が良いな輝元。領地が明に近いからか、それとも・・・・・・」
「問題を挿げ替えないでいただきたい。殿、どうしてそのようなことを?」
政宗と同様に間者を放っているのだろう。
だが、それ自体は既にバレていることは百も承知。
「ふぅ、もう分かっているんだろう?」
一つ息を吐いて周りを見渡す。
「俺はお千を皇后から降ろすつもりはない。南京を攻めさせるのは、その功をもって徳川家の赦免を行うためだ」
「っ! 陛下!?」
「もちろん、これは誰にでもやってやれる措置ではない。そもそも、お千だからこそ出来た方法だしな」
一同が黙り込む。
ここからが本当の戦い、それを皆が理解しているのだ。
俺は当然今の理屈を認めさせ、お千を救うために。
秀次叔父上は表に出さなくても俺に賛同と捉えて良いだろう。
・・・・・・だが、今回ばかりは秀家は不満な様だ。
輝元、景勝は法に照らし処罰することを望んでいる。
唯一、利長だけがその態度を示さないままで黙っている。
利長か秀家をこの場で懐柔する。
それがお千を救い、豊臣家の中にトラブルを残さない唯一の方法となるだろう。
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