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第四章
39.一緒に行ってもいいですか?
しおりを挟むその日の晩、チイルは、部屋で一人ポツンと、布団の上に座っていた。
どうしても、二人の重荷になりたくなかった。フィーレアはああ言ったが、自分の魔力が原因ではないかという不安は残る。それに、そうでなかったとしても、自分が二人の迷惑になっているのではないかと考えてしまう。
自分を助けてくれた二人に、迷惑はかけたくない。その思いで、人魂の処理を申し出たが、無理に頼み込んだせいで、余計に迷惑をかけてしまったのかもしれない。大人しく、フィーレアの言うことを聞くべきだったのかもしれない。
チイルは布団の上で頭を抱えた。
(どうしよう……僕……フィーレアさまに盾ついたりして…………フィーレアさまは、僕を心配してくれたのに……)
そもそも、自分が行って、本当に役に立てるのか、デスフーイと、魔力の玉を追う練習をして、できるようになった気でいるが、本当にうまくやれるのか。
部屋でじっとしていると、不安になるばかりだった。
じっと俯いていると、障子を叩く音がする。どうぞと答えると、それを開いて、フィーレアが入ってきた。
「チイル……ちょっと良いですか?」
「……フィーレアさま…………」
びくんと、体が震えるのが分かった。さっきのことで怒られるのではないかと、そう思ったからだ。
チイルが俯いていると、フィーレアはチイルの前に座った。
「チイル……」
「……!」
びくっと、体が震える。もうお前なんかいらない、そう言われるのかと思った。
しかし、フィーレアは、優しくチイルの頭に手を置いた。
「フィーレアさま……?」
「……さっきは……ごめんなさい。ひどいことを言ってしまいました……」
「そ、そんなっ……フィーレアさまは悪くないんです!! 僕がっ……わがまま言ったから……」
何度も首を横に振る。すると、フィーレアは、かすかに笑った。
「あなたのわがままではありません。気持ちは分かります。あなたは何も引け目に感じることなんてないんです。ただし、城下町へ行くときは、私たちも行きます。絶対に、危ないことをしてはいけませんよ?」
「はい!! 任せてください!!」
「それと、あなたには話しておきますが、あなたの魔力を狙う者がいます」
「ぼ、僕の? 魔力を?」
「はい。あなたの魔力は一見危険なものに見えますが、利用価値があります。城下町に出るということは、その危険に自ら身を投じることになるかもしれません。それでも、行きますか?」
「フィーレアさま……」
胸の奥が一気に温まっていくようだ。そこから涙が湧いてくるような気持ちだった。
ずっと、フィーレアたちが自分を持て余しているのではと不安だった。だから、一生懸命魔力の扱いを学んだし、うまくできたなとデスフーイに褒められたときは、飛び上がるほど嬉しかった。
けれど、迷惑に思うどころか、彼らはずっと、チイルの身を案じてくれていたのだ。
「フィーレアさま……ありがとうございます……」
「……? 私はまだ、何もしていません。魔力の件以外でも、城下町には危険なものがたくさんあります。町へ出たあなたのことは守る気でいますが、礼は、それができた時に聞きます」
「そ、そうじゃありません!! ぼ、僕……嬉しいんです!!」
「……?? なにがですか?」
「フィーレアさまが、そうおっしゃってくれたことが、です!! ぼ、僕、がんばります!!」
「……くれぐれも、無茶はしないように。約束です」
「はい!!」
「……では、今日はゆっくり休んでください……私はこれで……」
「ま、待ってください!!」
チイルはたまらず、フィーレアの着物を掴んだ。
驚いたのか、フィーレアは少し焦った様子で振り向く。
「チイル……? どうしました?」
「あ、あのっ……あの!! お部屋に戻るんですか!?」
「はい……これから、あの村と城下町に向かう準備をしなくてはなりませんから」
「ぼ、僕も行っていいですか!?」
「城下町へは一緒に行く、そういう話をしたばかりではありませんか」
「そ、そうじゃなくて、今、フィーレアさまのお部屋に、です!」
「………………え?」
「ぼ、僕も、フィーレアさまのお部屋に行きたいんです!! だ、ダメですか!?」
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