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6.ごめんなさい!

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 どうしよう……オーフィザン様が起きちゃった……

 ベッドの上で、眠そうに目をこすっている。

 どうしよう……気づかれないようにしなきゃ……

「お、オーフィザン様……お、お、おはようございます……」
「ああ……早いな……朝はいつも早いのか?」
「は、はい……仕事がありますので…………あ……」
「どうした?」
「……ぼ、僕の名前……」
「名前がどうした?」
「ご存知だったんですか?」
「ああ。クラジュ、そこにある棚から一番大きいグラスを取ってこい。水を飲む」
「は、はい!!」

 僕は急いで言われたとおり、棚からグラスを取り出した。水差しののった盆にグラスを置いて、急いでオーフィザン様のところへ持って行くけど、オーフィザン様は首を傾げてしまう。

「一番大きいものだと言っただろう」
「え、え、えっと……こ、こっちの方がいいかなって……思ったので……」
「……そうか」

 よかったー。深く聞かないでくれた。一番大きいのはもうないんです。僕が割っちゃったから、もう使えないんです! ごめんなさい!!

 心の中でむちゃくちゃ謝りながら、僕は水をグラスに注いで、オーフィザン様に差し出した。オーフィザン様はそれを受け取り、一気に飲み干してから、僕に振り向く。

「どうした?」
「え?」
「まだ怖いのか? 震えているぞ」
「あ、あの……それは……えっと………………ぐ、グラス……間違えちゃったので……」
「……馬鹿らしい」
「え!?」
「そんなことにまで怯えるな」
「……」

 あ、あれ? 怒らせちゃった? グラス、間違えたから?

 慌てる僕の頭に、オーフィザン様がポンと手を置いた。顔を上げても、オーフィザン様はこっちを向いてくれない。グラスを僕に預けてから、小さな声で言った。

「気にするなという意味だ」
「……え?」

 なんだ……怒ったんじゃないのか……よかった……
 ホッとしていると、オーフィザン様が僕のバスローブをつまんで言った。

「大きいな……」
「え? え? な、なにが……ですか?」
「このバスローブだ。お前のために用意させたはずだが……」
「え!? ぼ、僕のために?」
「お前、小さすぎないか? ぶかぶかだ」
「ご、ごめんなさい……」
「謝らなくていい。お前にあうサイズを用意させる。しかし……」

 オーフィザン様が、また頭をポンポンする。

 うう……頭、触られるの苦手だ。だって、なんか恥ずかしいんだもん。

「あるか……? お前のサイズ……」
「な、ないならないで……自分で服、持ってきます……」
「………………ダメだ」
「え?」
「俺の隣にいるときは色気のある格好をしろ」
「い、いろ……?」
「着替える。服を持ってこい」
「は、はい!」

 僕は返事をして急いでベッドから降りた。だけど、走り出したらすぐにバスローブの裾を踏んで倒れそうになる。それなのに、床に倒れることはなかった。

 う、うわ。僕の体、浮いてる!! オーフィザン様の魔法だ!! 振り返ると、オーフィザン様は僕に向かって微笑んでいた。

「危なっかしい猫だ」
「ね、猫じゃありません。おろしてください……」
「またこけるんじゃないか? 泳いで行け」
「ええ!?」

 む、無茶言って……ひどい!

 しぶしぶ僕は、両手両足を動かして泳いでみた。
 あ、ちゃんと前に進む。なんとかクローゼットまでついた。
 ふわふわした状態でクローゼットを開けようとするけど、体が浮いているせいか、力が入らなくて、クローゼットを開けようとしても、開かない。

「お、オーフィザン様……あの……あ、開かないです! 下ろしてください!」
「はは。自分でなんとかしろ」

 ひどい! 笑ってる。やっぱりひどい人だ!

 ううー……いくらドアの取っ手を引っ張ろうとしても、くるくる体が回るだけで開かない。僕は本当に困っているのに、オーフィザン様は困る僕を見てにやにやしてる。

「早くしろ。待たせすぎだぞ」
「うう……」

 いくら頑張ってもやっぱり開かない。ううー、オーフィザン様、手伝ってくれればいいのに! もうこうなった体当たりで開ける!

 勢いをつけて、クローゼットにぶつかりに行こうとするけど、ぶつかる寸前で止められた。

 あ、あれ? 前に進まない。

 バタバタ手足を動かしていると、オーフィザン様が歩いてきた。

「危ないぞ。ぶつかってどうする?」
「だ、だって……ぶつかったら開くかなって……」
「クローゼットは体当たりしても開かない。覚えておけ」
「はい……」

 オーフィザン様は僕をおろしてくれた。ちょっと凹む僕だけど、オーフィザン様が頭を撫でてくれる。

「後で頑張った褒美をやる」
「え?」

 褒めてくれた……オーフィザン様の笑顔、好きだなあ。意地悪じゃない時のだけど。

 そう思っていたら、オーフィザン様はクローゼットを開け、すぐに笑顔を消してしまう。

「おい、お前、クローゼットを開けたか?」
「え!? い、いえ……」
「…………嘘をつくことは許さないぞ……」
「あ……」

 オーフィザン様が怒った時の顔で僕を見る。この顔は本当に怖い。

「え、えっと……あ、あのあの……あの……」
「早く答えろ。嘘はつくなよ」
「……」

 どうしよう……オーフィザン様の顔を見ていたら、嘘をついてもバレる気がしてきた。この人をごまかすなんて、不可能だ。嘘をつき通す根性もない僕は、あっさり白旗を振る。

「ご、ごめんなさい……開けました……あの……ふ、服を探したくて……」
「服?」
「は、裸だったのでつい……ご、ごめんなさい!!」

 急いで頭を下げると、オーフィザン様は一度ため息をつき、僕の頭の上に手を置いた。

「……後でちゃんとお前のサイズの服をやる」
「は、はい」

 うう……罪悪感がムクムク湧いてくる。ごめんなさい……

「そう落ち込むな。裸のままにしておいて、悪かった」

 あ……落ち込んでるって思われた……違うのに。

 な、なんだか自分がめちゃくちゃ悪い奴みたいな気がしてきた……

 オーフィザン様の手が僕の髪を撫でる。やっぱり、髪に触られるのはちょっと苦手だ。くすぐったい……それに、昨日のことも思い出しちゃう。昨日……僕が気絶してから、なにしてたんだろう。

 オーフィザン様を見上げると、彼は僕に微笑んだ。

「朝から裸で驚いたのか?」
「は、はい……オーフィザン様、あの……昨日……」
「昨日?」
「あの……昨日、僕、すぐに気を失っちゃって……あの、お、覚えてなくて……僕、その……夜……あ、あの後……どうなったんですか?」
「気絶したお前を洗い、体を拭いてここに運んだ。お前にかけられた魔法を探ってからは、ずっとここに寝かせておいた。それだけだ」
「え……そ、それだけ?」
「俺が、寝ているお前を犯したと思ったのか?」
「あ……え、えっと……」
「……俺を見くびるな……」
「……ひゃっ!」

 オーフィザン様は、僕のバスローブを引っ張り、僕の胸をペロッと舐めた。

「ひっ!!」
「感じ易すぎだ……うまそうな奴め」
「え?」
「……夜にするか……」
「え? え?」

 慌てる僕を置いて、オーフィザン様はクローゼットから服を取り出し、ベッドの方へ行ってしまう。

 なんだかオーフィザン様、意地悪……
 でも、されてなかったんだ。誤解して、悪かったな……

 それに、オーフィザン様はちゃんとバスローブを用意してくれてたのに、杖を折って下着と一緒に捨てて香炉壊してグラス割ってマント破いて……

 僕、最悪じゃないか。あ、謝りたい…だけど、謝ったら絶対怒られる。

 謝ろうかどうしようか悩んでいると、オーフィザン様が低い声で僕を呼んだ。

「おい、クラジュ」
「は、はい!」
「俺の杖はどこへ行った?」
「え?」

 まずい……杖がないこと、もうバレた……

 オーフィザン様が、僕を睨みながら近づいてくる。

 ああ……お、怒ってる……

「……どういうことだ? クラジュ……」
「ひっ!」

 うう……こ、怖い……だけど、い、言わないと……あ、謝らなきゃ……

 僕は急いで頭を下げた。

「あの……も、申し訳ございません!! その……」
「なんだ? さっさと言え」
「あ、あの……も、もも申し訳ございません!! 杖折っちゃって、下着と一緒に窓から捨てて、香炉割ってグラス割ってマント破きました!!」
「……」

 オーフィザン様はしばらく黙って、僕の胸ぐらを掴み、軽々とベッドの上に投げた。ベッドの上で震えながら、オーフィザン様に振り返ると、彼は黙って僕に近づいてきて、乱暴に僕のバスローブを剥ぎ取る。

「や、やだ!」
「大人しくしていろ。仕置きしてやる」

 え? え? 仕置きって何されるの!?

 怯える僕の前で、オーフィザン様は、いつの間にか右手に持っていた石鹸を、左手の指でくるくる撫でる。あれ、昨日お風呂で見た石鹸と同じだ。きっと魔法で出したんだろう。

 指についたモコモコの泡を、オーフィザン様は僕の乳首に塗りつける。

 な、なんだこれ……あ、泡なのに……硬くて、僕の胸の上で動いてる。

 オーフィザン様は、僕を冷たい目で見下ろし、言った。

「俺に触れられているようだろう?」
「あ、あ、ああ! あうぅぅ……」

 何度も体の奥で弾ける熱いものに耐えきれず、僕は体を丸めて喘いだ。
 泡を取ろうとするけど、全然消えない。
 それはコロコロ動いて、何度も僕の乳首を刺激してる。何これ……すごく感じる……

「う、う……」
「さあ、杖を探してこい」
「え……?」
「お前が捨てた杖を探してくるんだ。夜になるまで待ってやる。探し出せなければ罰を与える」
「そ、そんな……」

 そんなの絶対無理……だけど、オーフィザン様は本当に怒っている。見つけてこないと、もっとひどいことをされるかもしれない。僕は震えながら頷き、はいと返事をした。
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