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7.差し出した手
しおりを挟む僕は、布団の中でドキドキしていた。
なんの話をしているんだろう……
ここが、明け渡される? そんな話、聞いたことない。だってさっきまで下でパーティーが開かれていたのに。なんでいきなり明け渡しなんて話になるんだ? ここがそんなことになったら、レヴェリルインたちは……どうなるんだ?
レヴェリルインは、王子が差し出した手を振り払う。
「明け渡しはしません。あなたに、ここを管理できるとも思えない」
「……レヴェリルイン殿……もうすでにこれは決定したことだ。非常に残念だが、覆しようがない。私とて、不本意なのだ。優秀だったあなた方に代わって、私のような、まだ経験の浅い者がここを統治するなんて……もちろん、私は反対した。しかし、力及ばす……本当に申し訳ない。何しろ、この決定を下したのは、国王陛下だ。なんとか口添えしようと思ったのだが……残念なことに、陛下はそれはそれはお怒りで……あなた方のその、不甲斐なさに」
王子が部屋に響くくらい高らかに言って、レヴェリルインとドルニテットの目に、一気に冷気が増す。
あからさまに侮蔑の視線を向けられたからだろう。けれど、王子の方はなんだか楽しそう。
「すまない……失言だった。不甲斐ないだなんて……本当に申し訳ない。あなた方も、ご自身の失態を恥じているだろうに……ここは、数多の魔法使いが集まる城。そして、それらが頼りにする魔法具が集まる街を管轄している。いくつもの魔法の植物が育つ森もだ。それらを統治し、繁栄に導く……そんなことが簡単にできるはずがない。そんな大役を、世間知らずの伯爵一人に背負わせてしまったことは、私を筆頭に、国王陛下も深く反省している。それがストレスだったのだろう? 優秀だった伯爵もあんな風に」
「あいつは昔からああだ」
「あいつは昔からあのままだ」
話の腰を折るように、レヴェリルインとドルニテットに言われて、王子は少しびっくりしたみたい。だけどすぐに気を取り直して話し出す。
「あなたたちには荷が重いのを承知の上で、私たちが大変な役割を押し付けてしまった。大変だっただろう? 辛かったはずだ。でも、もう安心していい。私が来たのだから。ここはこれより、私が統治する。どうかあなた方には、ぜひ、ぜひ、私の補佐をお願いしたい。何しろ私は、その魔法な腕を見込まれて、ここを任されただけの若輩者。あなた方は、ここを崩壊させたとはいえ、地理くらいには詳しいのだろう? それに、つてもある。ああ、もちろん悪い輩との付き合いは困る。私は、横領なんてする気はないのだから。ああ、すまない。また失言だったな」
そう言って、王子が笑い出すと、背後にいた人たちも笑い出す。
……横領とか、なんの話だろう。
それに、さっきから一人でめちゃくちゃよく喋る。マスターたち二人を馬鹿にして、どういうつもりなんだろう。
話を聞きながら、布団の下でじっとしていたら、王子は辺りをキョロキョロと見回して言った。
「それで? あの廃棄物はどうした?」
「……なんの話です?」
レヴェリルインは、心底不思議なふうに聞くけど、王子は僕のことを聞いているんだよな……?
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