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23.僕もマスターの
しおりを挟む狼の姿になったレヴェリルインは、僕を背中に乗せたまま、店の奥にあった「関係者以外立ち入り禁止!」って書かれたうさぎのプレートが下がったドアを器用に開けて、その中に入っていく。
「あ、あのっ……! あの、ま、ま、ま、マスター」
「黙って連れて行かれていろ」
「……」
僕、怪我はしていないから、一人で歩けるのに……
それに、こうしていると、初めて会った時のことを思い出す。
初めて、レヴェリルインに会って………………ずーーーーっと追い回されたことを……
恐怖の記憶だ。
レヴェリルインは、小さな狼のつもりのようだったけど、背の高いレヴェリルインから見て小さいのと、たまに少年と勘違いされるくらい背の低い僕から見た小さい狼とでは、ずいぶん差がある。
腰くらいまで体高のある狼にずーーーーっと追い回されて、メソメソ泣いていたら、彼は僕が怯えていることに気づいてくれたらしく、今度は小型犬くらいに縮んで見せてくれた。それでも十分怖い。
僕はずっとビクビクしてたけど、追いかけられて、一回捕まると、彼は噛みついたりはしてこなくて、隣にいるくらいだった。長い追いかけっこの後は、二人で並んで座っていた。
レヴェリルインは獲物を追いかけるのが楽しいみたいだったけど、彼がそばにいる間は、僕は家で殴られることはなかった。
僕は子供の時に魔法具で魔力を増強されたから、魔力はあった。だけど臆病で、そのせいでよく魔法も失敗して、親に失望されていた。兄たちにも馬鹿にされて、魔法の特訓では、よく殴られたりしていたから、狼が隣にいるだけであの恐ろしい特訓から逃れられるなら、それでいいかと思うようになった。
そうしているうちに、恐怖は薄れて、少しなら、レヴェリルインとも話せるようになった。
レヴェリルインの城に呼ばれることになって、あの屋敷から逃れられて、僕は、味を占めた。ここにいたいと思った矢先、すごい力が手に入れられるって言われて、まるで初めて甘いお菓子を食べたような気になった。
失敗したら廃棄って言われたけど、大した痛みには感じなかった。多分、頭のどこかで、失敗するんじゃないかって考えていたのかもしれない。それでもいい。そう思って頷いた。
そして、結果は失敗。失敗作って通告されて、すごくショックだった。頷いたし同意したけど、いざとなったら怖くなった。本当に、僕は気弱で臆病。
あのとき僕が頷かなかったら、レヴェリルインだって、城も爵位も失わずに済んだのかもしれない。
「あ、あのっ……マスターー!!」
「……なぜ言わなかった?」
「え!? あ、あの……」
「足だ。防御の魔法をかけていたが、痛かったのか……?」
「あ…………い、いえ……そんなこと……」
「……」
レヴェリルインは無言で、店の廊下を奥まで進んでいく。彼が奥にあったドアを開くと、そこは、衣装を合わせるための部屋のようだった。
大きなガラスの窓の向こうには、月が光っている。部屋の端にはハンガーラックがあって、いくつも服がかけられていた。大きな姿見もあって、そのそばの棚には、多分アクセサリーの箱なんだろう、綺麗な箱がいくつも積んである。
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