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57.反逆者
しおりを挟むレヴェリルインは、不思議そうに僕を見上げている。今はあんまり見られたくない。
僕……嫉妬してるんだ。スキノレールに。マスターに、自分以外の人が触れたからって。マスターが、他の人にマスターって呼ばれたからって、そんなの、僕が口を出していいことのはずがないのに。
何考えてるんだ。僕はただの従者じゃないか。そもそも、全く役に立ててないくせに、レヴェリルインが他の人に触れられているのが気に入らないなんて。
彼の視線から逃れて、僕は、自分に言い聞かせた。
こんなこと、考えちゃいけない。レヴェリルインが僕に良くしてくれるのは、彼が僕のマスターだからで、他に意味なんてない。精一杯仕えるって決めておいて、何を早速分不相応なこと考えてるんだ。
僕は、顔を上げた。
そして、スキノレールに向かって、頭を下げた。
「あ、あのっ……! あ、ありがとうございました!! 薬の瓶…………た! たすかりました! ぼ、僕……こ、これで失礼します!」
「うん。頼んだよ」
スキノレールがそう答えて、その時、窓の外から大きな音がした。まるで、爆発の音のようだ。そして、その轟音とほとんど同時に、外から朗々とした声が聞こえてきた。
「反逆者レヴェリルイン!! 出て来い!! 貴様がそこにいるのは、わかっているんだぞ!!」
この声……
窓に駆け寄る。すると、この家の玄関の前で第五王子のクリウールトが喚いているのが見えた。彼の背後には、魔法使いたちがたくさん控えていて、みんな杖をこっちに向けている。その杖には、すでに火の玉が灯っていた。言うとおりにしなかったら、この家を焼いてしまいそうな勢いだ。
スキノレールがそれを見て「あの馬鹿王子……家ごと焼く気か?」って、冷めた目をして言っていた。
クリウールトは、僕らを追ってきたんだ。
そいつの後ろにいる魔法使いたちが、ドルニテットやラックトラートさん、アトウェントラを取り囲んで、杖を向けている。
ドルニテットは平然としているようだったけど、ラックトラートさんは今にも泣き出しそうな顔をしている。あんな風に囲まれたら怖いに決まってる。その少し離れたところに、馬になった伯爵もいたけど、誰も彼が伯爵とは気づかないのか、彼の方には見向きもしない。
レヴェリルインは、元の姿に戻って、僕らに振り向いた。そして、突然子犬が元伯爵の弟になって驚いているスキノレールさんに「リフィノセスには少し眠ってもらっただけだ」と言って、彼に向かって小さな瓶を投げる。
「空瓶の礼の魔法薬だ。次に魔物にやられたら、それを使えばいい。邪魔したな」
「あ……はい……レヴェリルイン様……な、なんでここにいるんですか?」
「……アトウェントラが掴まされた魔法薬について調べている。アトウェントラは、騙されただけだ。倒れた連中のために、一人きりで必死になっていただけだ」
すると、スキノレールは「知ってますよ、そんなこと」と言って、肩を竦めていた。
「ほかに魔法薬が欲しければ、その瓶を飛ばせ。使い魔になって俺の元へ飛んでくるはずだ」
そう言って、レヴェリルインは僕の手を握った。
「行くぞ。コフィレグトグス」
「は、はい!」
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