誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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7.ひどい……


 ダストの馬鹿……あんまりだ……ひどすぎる……

 泣き続けて目が痛い。

 カバーを剥ぎ取って、顔を埋めていたクッションも、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

 ダストにあんなひどいことを言われた僕は、ショックすぎて、もう泣くことしかできなかった。まともに動くことすらできなくなくて、フュイアルさんに連れられるままに、停めっぱなしだった車に乗った。

 助手席には涙で前が見えない僕。運転席にはフュイアルさん。フュイアルさんは、何も言わず、車を職場に向けて運転していた。

 車の窓からは、街の修繕を行うため役所から派遣された修繕課の魔法使いたちが歩いているのが見える。
 僕の魔法で魔物は灰になったし、明日には多分、街も全部元どおりになっているんだろう。

 ダストは全身火傷で病院に運ばれた。魔物退治中の事故として処理されたから、僕はお咎めなしだ。

 ダスト……ひどい……僕はずっと大好きだったのに、あんなこと言うなんて……

「ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿ダストの馬鹿…………」

 剥ぎ取ったダストのクッションカバーを、魔法で呼び出した絵の具で黒く塗っていると、ハンドルを握るフュイアルさんが、呆れたように言った。

「なにやってるの?」
「呪いの魔法かけてます」
「……クッションカバー塗っても、なんの意味もないんじゃない? 人族のトラシュに、呪いなんて高度な魔法も無理だし」
「……」

 なんで今、そういうムカつくことを言うんだ。もう腹いせに、この人を刺したい。

 だいたい、普段ダストを悪く言うくせに、なんで庇ったんだ? 僕のことは縛り上げて痛めつける冷血上司のくせに。

「フュイアルさん……」
「なに?」
「まさか、ダストを好きになったんですか!?」
「あり得ないね。むしろ、この上なく嫌い」
「じゃあ、なんでダストを庇ったんですか……?」
「なんのこと?」
「さっきダストを僕の魔法から守りましたよね!? ダスト、火傷だけだったじゃないですか!!」
「だって、さすがに巻き込まれた人が死んだとなれば、トラシュはただじゃ済まないよ? 逮捕、とまではいかなくても、しばらくしつこく話聞かれたり、場合によっては謹慎くらいあるかもしれない。そしたら、職場に来れなくなるんだよ?」
「別に仕事なんか行きたくありません……胸が痛すぎて、しばらく仕事なんか無理です」
「無理なんて言わない。魔物の前でボーっとしてたことと、他人を巻き込もうとして俺の手を煩わせたことを減点しても、今日はよくやったよ。合格点のご褒美に、いい酒飲ませてあげる。今夜は俺の部屋に来て」
「いりません。行きません。キモいです。死んでください!!」
「泣いてるくせに断るの早いねー。行くか行かないかなんて、聞いてない。これ、命令だから」
「そんな命令聞けるかっ!! お前になんの権利があるんだ!!」
「俺、上司だよ?」
「だからなんだ!! そんなの、関係ないだろ! 行かない!! 家に帰る!!」
「ダストの写真まみれの家に帰ったら、トラシュ、キレるでしょ。トラシュがマンションとその周辺破壊して捕まったら困る。俺の仕事もキツくなる。帰さないよ」
「帰るっ!! わっっっっ!!!!」

 油断してたら、また鎖で巻かれた。しまった……

 だけどもう、朝みたいに抵抗する力は残っていない。

 泣きながらフュイアルさんを睨みつけるけど、そいつは気にもとめず、笑顔でハンドルを握っていた。

「どうせ夕飯代もないんでしょ? いいもの食べさせてあげるから」
「フュイアルさんなんかに奢られたくない! こんなことする奴が出すもんなんか、怖くて食べられるもんか! 離せっっ!!」
「ダメ。いい子にしてないと、骨が折れるまで締め上げるよ?」

 このっ……最低上司!!

 なにがなんでも逃げたくて、魔法を使おうとするけど、全く使えない。連れて行かれるしかなかった。

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