誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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番外編

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 あれだけの魔物を、振り向きもせずに一掃したフュイアルさんは、僕に向き直って微笑んで、僕の膨らんだあたりを強く扱く。散々我慢させられた僕は、彼にされるがままに、溜まりきったものを噴き出した。もう、下半身はぐちゃぐちゃだ。こんなところで縛られて、服を着たまま射精させられて、ひどく恥ずかしいのに、気持ちよくてたまらない。

「うっ……ひ、ひど…………もう、く、鎖、外せっ……!」
「え? なんで?」
「……ぇ……? だ、だって…………だって……」
「俺、全然イってないから。こんなにトラシュがエロい顔してるのに、俺がここで止めると思う?」
「だ、だって……ぼ、僕、もう、げ、限界…………」
「大丈夫。トラシュの身体は、もうすっかり俺のものになってるから。気持ちよくさせるのも、意識飛ばすのも、全部俺の意のまま。よかったね」
「はっ……!?」

 さすがに震え上がる僕に、そいつは凶悪に笑う。
 この男に騙されちゃダメだ。何もかも持っていかれる。
 拒絶したいのに、僕は、この男がこうやって独占欲に塗れた顔で僕を見下ろして笑う様が好きになっちゃったんだ。

 そんなこと、フュイアルさんにだって、もちろん知られてしまっている。

「そんなに嬉しい? 俺にこんなところで縛られて犯されるの」
「……ぅっ…………」

 違う、普段なら即座に否定するのに、もう、この男にたっぷり嬲られて、気持ちよくされたあとだ。すでに身体は、彼の言葉に反応して、期待してしまっている。

 僕だって、まだ抱かれてない。いじられて快楽を味わったばかりなのに、この男の意のままにされた身体は、それ以上を欲しがっている。
 きっと、わざと僕が物足りなく感じるようにしているんだ。満たさないまま放り出して、自分では動けずに喘ぐ僕が屈服する様を楽しんでる。
 そんな恐ろしく嗜虐的な顔で、目の前の彼が微笑んだ。

 彼から顔を背ける僕だけど、俯いていたら簡単に顎を上げられてしまい、首輪についた鎖がじゃらっと鳴った。その音で、自分が全身を強く拘束されていることを思い知らされてしまう。

 ますます、彼のことが欲しくなる。

 そいつの血のような色の前髪が、僕の顔にかかって、甘い吐息だけで溶かされそう。

「ぼ、僕だって……もうっ……むりぃ…………は、はやくっ…………」
「可愛いっ……!! 死ぬほど喘いでね」

 けれど、フュイアルさんが僕に触れたところで、誰かが走ってくる足音がする。

 フュイアルさんも、それにすぐに気づいて、僕の鎖を解くと、僕の体を魔法で出した毛布で包んで振り向いた。

 大通りの向こうから走ってくるのは、オーイレールだ。フュイアルさんが人払いの魔法をかけていたのに、いつのまにか解けていたのか?

 そしてこういう時、オーイレールはまるで遠慮しない。

「フュイアルーーーー!! 大丈夫かーー!! 助けに来たぞーー!」
「うん。全然いらない。帰れ」

 つめたーーーく言って、フュイアルさんがオーイレールを睨みつけるけど、彼はまるで気にしていない。フュイアルさんに隠されている僕にまで近づこうとして、フュイアルさんに妨害されている。

 まるで気にしてない彼の代わりに、フュイアルさんは、後ろから彼を追って走ってきたズモアルケを睨みつけた。何でこんな空気読めないやつ連れてきたの? って視線だ。

 だけど、いつも猪突猛進で、ついでに天真爛漫なオーイレールを抑えておけなんて、魔物の群れの一掃より難しいって、フュイアルさんだって分かっているはずだ。

 ズモアルケも、疲れたように言った。

「向こうの魔物は倒したが、こっちの方に蠢く魔物の影が見えたんだ。気づいたら、オーイレールは勝手に走り出していた。俺たちが来るのが嫌なら、人払いの魔法くらいかけておけ」
「かけたよ。ただ、魔物吹っ飛ばした時に、結界も飛ばしたみたい」
「……自分で作った結界を自分で破壊するな……」
「そんなこと言ったって、トラシュを可愛がりながら、魔物吹っ飛ばしてたんだ。そんなところに寄ってくるのなんて、そこにいる、恐怖って感情がまるでない男くらいだろ」

 フュイアルさんは、オーイレールに怖い目をして振り向くけど、彼はまるで気にしてなくて、「どうしたんだー?」なんて言ってる。彼くらいだ。フュイアルさんを困らせることができるのなんて。

 ズモアルケは、肩をすくめて言った。

「お前は人族に夢中になりすぎだ。それにばかり夢中になっているから、自分で結界を壊したことにも気づけないんだ」
「だって、トラシュが可愛いんだもん」
「……悪い知らせがある。やけに強い力を使ったせいで、駅に向かう道まで破壊されているぞ」
「はあーーーー!!??」
「だから言っているだろう。お前は、その人族に夢中になりすぎなんだ」
「それじゃ、せっかく魔物吹っ飛ばしたのに、結局列車に乗れないままじゃないか!! じゃあ、俺の旅行は!?」
「その人族は行く気がまるでないようだぞ。この際だ。旅行は中止して、連休は陛下にお会いしてこい」
「絶対に嫌だ……俺はトラシュと旅行に行くから……」
「……俺の話もたまには聞け。それは人族だ。無体を働いているうちに死にでもしたら、これより恐ろしいことが…………フュイアル!?」

 フュイアルさんは、すでに空に飛び上がっている。

「俺、この辺りの魔物吹っ飛ばしてくる。それから道路修復してくるから」
「……おい。待て。フュイアル!」

 フュイアルさん、全然聞いてない。魔物が多いって言ってた噴水の方に飛んでいっちゃう。

 僕の体も、毛布の下でいつの間にか、すっかり綺麗になってて、濡れてた服も元に戻ってる。

 だけど、僕を置いて行くなんてだめ。結局僕は、もうすっかりあいつに落とされていて、少しでも離されるのが我慢できないんだ。

「僕も行ってきます」
「……人族。やめておけ。貴様の腹立たしい魔力は認めるが、貴様が死ぬと、フュイアルが何をするか分からない」
「なんですか? 僕の心配ですか?」
「多少はする」
「は!? 嘘!!」
「勘違いするなよ! 貴様の生死を案じているんじゃない! 貴様は役立たずの人族だが、死んだらフュイアルがどれだけ暴れるか、考えたくないだけだ!」
「……僕、多分、死にません。フュイアルさんの魔力、いっぱい体に注がれてるみたいだし……自分じゃ魔力の抜き方なんて、わからないし、フュイアルさんが魔力抜いてくれないと……多分死ねないんじゃないのかな……」
「………………貴様……生死まで握られているのか?」
「握られてるわけじゃありません。握らせてやってるんです! 勘違いしないでくださいっ……! 別に、そうされたいわけじゃない! 本当に……僕、そうされたいわけじゃないので……そ、そこだけは、勘違いしないようにしてもらわないと……あれ? どうしたんですか? ズモアルケさん。顔色が悪いって言うか……真っ青ですよ?」
「……いや…………そんなことはない……」

 ズモアルケは、僕から顔を背けてしまう。
 すると、オーイレールが呑気そうに言った。

「ズモアルケは、勘違いじゃなくて本当にトラシュのこと、心配してるんだよー」
「…………え?」

 ズモアルケに振り向くと、彼は「そんなはずがないだろう!」って、怒鳴っている。

「誰がこんな人族を助けるか!!」
「こ、こっちだって……! やめてください!! ストレス解消に、給湯室でぶん殴る相手がいなくなるので!」

 僕だって怒鳴り返すと、彼はいつもどおり言い返してくる。

「なんだと貴様!! どういう意味だ!!」
「なんでもないでーす」

 そう言って、僕は、魔法を使って空に飛び上がった。
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