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22.夢?
しおりを挟む眠っていた瞼に、明るい光があたった気がして、私は目を開いた。
右を見て、左を見て。キョトンとしてしまう。
確か昨日、閣下にここで眠ってほしいと言われて、どうしていいのか分からず、ソファで悩んでいたら、眠くなってきて……そのまま眠ってしまったはず。
それなのに、今の私はベッドにいる。
その上、寝ている途中で閣下とお話ししたような気がするのですが……あまり覚えていない。
もしかして、夢?
でも、それだと私は、寝ている私のそばにイールヴィルイ様がいる夢を見たということになるのでは!?
閣下はドアの向こうで見張りをしてくださっていたのに、私はなんて夢を……
なんだか申し訳ないような気持ちだ。それに、昨日会ったばかりの閣下を夢に見てしまうなんて、何を考えているのかしら……
は、恥ずかしくなってきた。
もう起きよう。
窓の外は真っ赤な朝焼け。まだ日が昇る頃。起きるには早いような気がするけれど、もう眠れそうにない。
しかし……朝日って、西にあるものだったかしら? 私、朝日は東から上るものと考えていましたが……
そうだ。西に沈むのは夕日! ということは、空が赤いのは朝焼けではなく夕焼け!? もう夕方??
ゆ、夕方まで眠ってしまった……
すぐに起きなければっ……! 今日は一日、魔法で魔物を城から遠ざけるように言われていたのに、なんてことを……!
それに閣下はどうしたのかしら。ドアの外で見張りをしてくれていたはず!!
ベッドから起きてドアノブに手をかける。けれど、やはり開かない。
「か、閣下!? 閣下!!」
どれだけ呼んでも返事はなくて、ドアノブを回しても、ドアは開かない。おそらく魔法で扉が閉ざされている。
なぜ!?? 昨日はそんなもの、かかっていなかったのに。
しかも、相当強い魔法らしく、ドアはびくともしない。
まさか……閉じ込められた!!?? 私が逃げないように?!
使者としては私に逃げられるのは困るでしょうし……
けれど、昨日の閣下を思い出すと、そんなことをするとは思えない。奴隷同然の私に、あんな風に人として接してくれたのだから。
閣下はどこに行ってしまったのでしょう……嫌な予感がする。
何しろこの城では、誰もが使者たちを歓迎するふりをしながら、早く出ていってほしいと考えている。閣下に何かあったのでは……
とにかく、外に出なくては。
ドアをもう一度試してみても、やはり開かなかったけれど、バルコニーに出る扉は開いていた。
けれど、地面ははるか下。
そうだった……ここは五階!! 魔法の一つも使えれば地面に着地することができますが、私にはそんな魔法は使えない。
けれど、この客間の真下の部屋にも全く同じ作りのバルコニーがあるし、魔法がなくても、下の部屋のバルコニーに降りることはできるかもしれない。
生身の体でここから下に降りることを考えると、さすがに足がすくむけど、私はこんなところで寝ている場合ではない! 使者たちと共に、行方不明の竜を探すんだから!
下のバルコニーまで降りれば、今の時間なら、バルコニーの扉の鍵は開いているはず。
私は、バルコニーの手すりを乗り越え、下のバルコニーに足を伸ばした。
やっぱり高い……
もうっ……! なるようになれ! です!
思い切って手すりを握っていた手を離す。すると、ちゃんと下の階のバルコニーまで落ちることができた。
あら。なんとかなるものですわ!
けれど、そのバルコニーには、先客がいた。
落ちてきた私に全く動じる様子もなく、美しい藍色の髪を風に靡かせて、煌びやかなドレスに身を包んだ女性が振り向く。
「あら……リリヴァリルフィラン様……」
「フィレスレア様。お久しぶりですわね」
私はすぐに立ち上がり、飛び降りた時に乱れた服を直して優雅に礼をする。
彼女の前で弱みなんて見せたら、それこそ終わりだ!
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