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34.丸投げ!?
しおりを挟む私がとぼけたような態度をとると、トレイトライル様は声を張り上げた。
「お前の話に惑わされる間抜けは、この城には存在しない!! お前のような恥晒しの女が、日頃から城を守っている魔法使いに手を上げるとはっ……!!」
「トレイトライル様。先に手を出したのはダイティーイ様だと申し上げているではありませんか」
「お前が先に言いがかりをつけて暴行したのだろう! 反省もなく言い訳ばかり……なんて女だ!!」
「…………」
いつものことですが、あっさり私が悪いことになっていく……
これで私に罰が与えられることは決まったも同然。トレイトライル様はいつもこうやって私に懲罰を言い渡してきたのだから。
これで地下牢に行ける。
けれど、そこでトレイトライル様は何も言わなくなってしまう。
塔の部屋に、息苦しくなりそうな声が響いたからだ。
「……彼女から離れろ。トレイトライル」
溢れた魔力を風にして纏い、部屋の中に入ってきたのは、今度は使い魔ではなく、本物のイールヴィルイ様。
……一体、何をしてますの!!??
閣下が来てしまったら、トレイトライル様たちだって、私を竜のいる地下牢には連れて行かない。
あと少しだったのに……なぜもう出て来るの!!?
唖然とする私。
トレイトライル様まで、一歩下がってしまう。だって閣下が魔力の風を纏いながらトレイトライル様に近づいて行くのだから。
私は慌てて閣下の手を握って止めた。
「かっ……閣下っ……!! お待ちください!!!!」
「……っ! リリヴァリルフィラン!?」
閣下は、随分驚いた顔で振り向く。
無礼であることは分かっている。しかも、咄嗟とはいえ、国王陛下が派遣された使者であるイールヴィルイ様の手を握ってしまった。
それに気づいた私は、すぐに閣下の手を離した。
「も、申し訳ございませんっ…………」
「…………構わない。どうした? リリヴァリルフィラン」
「ど、どうしたって……な、なぜここにいらっしゃいますの!? あと少しでっ……!」
地下牢に行けたのに、そう言ってしまいそうで、私はあわてて口を閉じた。
すると、今度は閣下が私の手を握った。いつもと同じように力強いのに、痛くはない。私を傷つけることを、恐れているのかしら。
閣下ほどの方が……なぜ…………?
「あと少しであっても、やはり俺は、あなたが理不尽になぶられているのを黙って見てはいられない」
「な、何をおっしゃっていますの!?? 訳がわかりません!!!!」
気づけば、私は叫んでいた。
敵意や悪意なら慣れているのにっ……罪人扱いもなじられることも、いつものこと。だけど、こんな風に庇われることは初めてで…………もう怖いです!
それを見ていたトレイトライル様が声を張り上げる。
「か、閣下!! リリヴァリルフィランは、ダイティーイに手をあげたのです! その女は罪を犯したっ……! その女は罪人です!!」
「黙れ。貴様はその場にいたわけではないだろう」
なんで!?? なんで、イールヴィルイ閣下が私の邪魔をするの!?? 計画を忘れたわけではないはずなのに! 先ほどだって、分かってくださったのではなかったの!?
おろおろしていると、背後にいたトルティールス様の使い魔が、小声で私を呼びます。
『…………リリヴァリルフィラン……これはきっと、イールヴィルイの作戦です』
「さ、作戦!? どういったものです?」
『それは僕にも分かりません』
「え!?? ええ!!??」
『僕にも分かりませんが、きっと何か、イールヴィルイにも考えがあるはずです。多分。だから、とにかく早くなんとかして地下牢に向かってください』
とにかく早くなんとかしてって、なんですの!!?? 私にどうしろと!?
けれど、トルティールス様の使い魔は、言いたいことだけ言って、こっそりベッドの中に隠れてしまいます。
ま、丸投げっ……!??
ひどい……せめて、その作戦とやらについて教えてくださってもいいではありませんか……
けれどっ……! そもそも、これは私が言い出した作戦!! この作戦を遂行して見せます!
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