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-第七章-ウィンタースノー連邦-霊峰ウルフハウリング・後編~デグレアント帝国・前編-

-第七章二十九節 マサツグの総意と二人の夜と[帰す]言葉-

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さてグレイスの部屋にシロとハティを置いて来るよう寝かせつけ…ロードレクの

遺品である雪冬刀を受け取ったマサツグはそのまま部屋を後にすると、一人考え事を

しながら彷徨う様に…城内を俯き歩いていた。この時もその考えて居た事と言うのは

ドラ子から聞かされた宣戦布告の話であったり、食事中に考えてしまったシロの死に

ついてであったり!…そして今先程聞かされていたロードレクの話であったりと!…

全てがシロと絡んでとてもでは無いが一筋縄では答えが出ない!…厄介極まりない

難題に答えを探し求める様なそんな事を考えて居ると、ただ空しく自身の足音だけが

響く!…そんな静寂の夜を感じていた!…


__コッ…コッ…コッ…コッ…


{…くまさんと親父は当たり前だけど…モツとオリハももう寝た感じか…

…とは言え…まさかここに来るまでにこんな悩む事が多いとは思わなかったな…

始めはシロの目の前で俺が一回死んで…そこからシロの親を探しに行く事になって…

シロがフェンリルの皇女様で…妹のハティが居て…女王様が呪いに掛かってて…}


ただ聞こえて来る自身の足音を耳にしつつ、ふと他の面々が今何をしているのか?が

気になり…と、確認する為に画面を開いた所でその画面にはオフラインの文字が!…

それは既に他のプレイヤー達が落ちている事を表記しており…正真正銘マサツグだけ

しか起きて居ない事も表示すると、マサツグはそれを見て改めて今悩んでいる事と

向き合い始める!…その際その悩むきっかけとなった出来事から思い出し始める!…

それは自身の死がきっかけで始まり、シロがトラウマを抱えて塞ぎ込み!…そこから

巡り巡って今に至る!…同時に色々と知った事も確認し直し!…それらを材料に

答えを探そうとするのだが、思考は脱線!…更にシロとの出会いについて思い出し

始める!…


__コッ…コッ…コッ…コッ…


{…元を正せば春野原の教会廃墟で…

バルデウスと戦い終えた後に見つけた卵からシロを見つけて…

…ここまで来るのに一緒に色々な物を見たり…体験したり…

……本当に…慌ただしい毎日だったな……とは言え…

…そろそろ本気で考えないと駄目なのかもしれない…}


それはまるで時を刻む様に小さく足音が響き…心成しか空しく孤独さを感じさせ…

だがそれでもマサツグは歩き続ける!…そしてシロとの思い出を振り返り!…

忙しかったり楽しかったり!…やはり存外悪いモノではなかった事を思い返すと、

更にシロの事が愛おしくなる!…だが愛おしが故にシロを守る!と言う意味で

頭を抱える!…そして本当に真剣にシロの事を考えないといけない!と言う結論に

行き着いて行くと、自身の本能を黙らせる様に改めてその本題と向き合い始め!…


{…今後のシロの事を考えると…

勿論女王様の元へ帰した方が良いのは間違いないだろう…

…母親だけじゃない…ハティって言う可愛い妹も居るし…

何より俺と一緒に行動するより危険が少ない事も明らか!…

おまけにデグレアントとの戦いが始まったら狙われる可能性も当然出て来る…

…それでもし!…もしそれが理由でシロが死んでしまったら……ッ~~~…}


と言うのも勿論単純にシロをグレイスに帰すか帰さないかと言うモノで!…勿論

シロの身の安全等を考えるとシロを帰した方が良い訳で有り、その際更に自身でも

色々と理由付けをするのだが!…しかしそれを本能が良しとしない様子でも有り!…

一人勝手の城内の通路で葛藤!…俯き色々と思考を巡らせ悩ませ!…更にもしもの

事を考えてこれまた更に感情が負の方へと落ち込んで行くと、ここでマサツグに

異変が!…それは魔王と化してしまいそうになる!…しかし!…


__ズズズズズ!!…ゴゴゴゴゴゴ!!……ッ!?…ブワアァァ!!……


{……っと、あぶないあぶない!…

今感情的になったら今までの鬱憤までもが爆発しそうになる…気を付けよう…

…けど…それだけシロの事を思って居るのもまた事実でも有るんだよな…

だとすればもう自分でも答えは分かっている様なモンで…

…でも何でかその最後の踏ん切りが付けられない!…

頭では分かってるんだけど!…心がそれを拒否する様な!…

…それも分かって居る筈なんだ!…これは俺にとっても!…

シロにとってもそんな簡単な話じゃないってのは!!…

……シロの事を考えろ!!…シロの幸せを考えろ!!!……ッ…}


これまでの様にその負の感情が背中から溢れ出そうになって行く!…しかしここで

マサツグもハッ!と…我に返って自制心を取り戻し!…今ここで爆発させる物では

無い事を改めて考え抑えて行くと、また思考を元の方向へ!…軌道修正を掛けて

行く!…そして三度考えるその自身の気持ちについてやはり葛藤をして行くと、

頭と心で反発し合い!…だがそれは何方もマサツグの本音そのものであって!…

マサツグも自身の中でこの出来事に対して戸惑って見せる!…それはもはや戦争が

始まりそうな位に荒れて行き!…何か別の人格的な物も生まれそうな!…とにかく

自身でも色々と更に心を押し潰す様なそんな葛藤具合を見せて居ると、ここでふと

灯りが…


__ッ~~~~~!!!!……ッ!……コッ…コッ…コッ…コッ…


{…あれ?…謁見の間?…それに扉も開いてるし…

明かりも漏れてる…誰かいるのか?…}


葛藤している最中その光を目に…するとマサツグの中で一時はピタッと騒動が

止まり…ただその漏れ出る灯りに対して何か疑問だけが感じられると、次には

吸い寄せられる様にその漏れ出ている灯りの方へ…まるで虫の様に近づいて

行ってはフラフラとする!…そしてその灯りが漏れ出ている場所と言うのが

謁見の間である事を確認すると、そのまま何も考えない状態でスッと扉の間から

中を覗き!…


__…スッ……ッ!……ッ…


{……え?…女王様?…何でここに?…}


中を覗いた先に居たのは自室に残った筈のグレイスの姿で、その際グレイスは

謁見の間にある大きな扉の様な窓がある方を向いて居り!…そこから見える月を

眺めているのか!…全身に月の光を浴びては神秘的に!…そしてその漏れ出て

いた明かりもグレイスの足元にあるランプから!…漏れ出て居た物と分かって

行くと、その絵画の様な光景にマサツグは黙って息を呑む!…と、同時にこれは?

と言った具合に疑問を持つ!…因みに謁見の間にある窓だけは外に繋がっている

様で謁見の間全体に月の光が差し込み!…そしてグレイスの格好もシースルーの

寝間着に変わり!…とにかくその光景をジッと見詰め!…声を掛けるか掛けないか

で悩んで居ると、グレイスが気が付いた様子で反応!…次にはマサツグに声を

掛ける!…


「…マサツグ様?…何故隠れて見て居られるのですか?…」


__ッ!?…バババッ!!…


「…よろしければもう少し…お話をしませんか?…

…私も…少し眠れないのです…」


「ッ!…ッ……」


まるで既にそこに居るのは分かって居る!と言った様子で優しく声を!…となると

突如声を掛けられた事でマサツグは戸惑い!…思わず反射的に逃げる様なそんな

飛び退き様まで露わにすると、一方でそのマサツグの様子を見えていないのか…

続けてグレイスが言葉を口にして見せる!…それは更にマサツグの感情も読めて

いる様にグレイスも今物思いに老けている事を口にすると、話し相手が欲しい様に

誘って行き!…と、それを聞いてマサツグもスッと冷静さを取り戻し!…次には

その誘いに乗るよう呼吸を改め!…いざそのグレイスの待つ謁見の間の扉を開けて

行くと、まずはグレイスの立っている所まで…苦笑いを浮かべながら歩いて行く!…


__…ギイイィィィ…コッ…コッ…コッ…コッ…ッ…ブルルル!…


「ッ!…ふふふふ♪……ッ…

…マサツグ様達はやはり…デグレアントに挑まれるのですか?…」


その気不味い感じでマサツグが謁見の間の中へと入って行くと、まずはひんやりと

冷えるまるで冷蔵庫の様な空気が迎え!…何ならそれに合わせて息を吐くと白く

凍り!…思わずマサツグも寒さを覚え…一度身震いをする様なそんな反応を見せて

行くと、マサツグの様子に思わずグレイスも笑みを零す!…一度は緊張感を解いて

行く!…さてそうしてマサツグもその微笑むグレイスの元までやって来ると、

次にはグレイスが徐に質問を!…それはやはりあの宣戦布告の話であり!…窓の

外の光景を見詰めながら心配をする様に挑むのかどうかについて!…出来れば行って

欲しくない様な感じで言葉にすると、マサツグもそんなグレイスの反応に戸惑う!…

だがそれでも挑む事を口にする!…


「ッ!…え?…あっ…はい…

…ッ…やっぱり…大切な仲間が誘拐されたので助けに行かないと…

それにこのままやられっぱなしで終わるのは如何にも…」


「……そうですか…いえ、そうですよね?…

大切なご友人が誘拐されたのですから…当然の事です…」


それはやはり気不味そうにしながらも如何しても行かないといけない事を口に!…

勿論理由にリーナを上げ!…何ならずっと煮え湯を飲まされ続けている事!…

更には今回の件…いや、今までシロにも有ったであろう権利が奪われていた事等を

上げて行くと、キリが無く!…その全てを熨斗を付けて返さないと気が済まない事

を苦笑いをしながら話して行くと、やはりグレイスも残念そうに!…そして心配も

する様に返事をする!…その際マサツグの事も分かっている様子で仕方ないと言葉

を零す一方…何か別に含みも感じられる様に聞こえ!…と、マサツグもそれに

対してピクッと反応!…次にはその事についても返事をする!…


「…ッ…女王様が心配しているのは…シロの事ですよね?…」


「ッ!?…あっ!…これはその!!…」


この時グレイスが言い淀んだ様な反応を見せた理由と言うのは、勿論マサツグに

付いて行くであろうシロの事で!…となるとマサツグもそんなグレイスの反応から

察せた様子を!…思わず指摘するよう苦笑いをしながら話し!…そのマサツグの

言葉にグレイスも無意識だったのか?…慌ててハッ!とした様なとにかく取り繕う

そんな反応を露わにすると、申し訳なさそうに言葉に詰まる!…一方でマサツグは

大丈夫とばかりに言葉を続ける!…


「…ぷッ!…あっははは!!…ッ~~~!!!…ッ…

いやぁ~…ごめんなさい!…意地悪な事を言いました…

…女王様の心配はごもっともです…

…と言うよりそれが当然の反応だと思います…」


と言うのも自身でも意地悪な尋ね方であった事を認めて行くと、その慌てる

グレイスの様子を見ながらプッと噴き出し!…だがその後に勿論謝罪をして

行き!…そんなグレイスの気持ちも分かる!と…寧ろその気持ちを肯定する

様に当然!と言ってその言葉を逆に正当化すると、更に自分が悪い!とばかりに

若干俯く!…自身がその悩みの種である事をも認めて行く!…となるとそんな

解釈の仕方を見せるマサツグにグレイスも更に戸惑って見せると、次には

チラッとマサツグを見て!…


「…ッ!…え?…ッ!!…」


「親にとって子は宝…例え血が繋がって居なくても親子としての絆が有れば…

それはもう立派な親子です…今までの記憶が後からだろうが先だろうが…

関係無いと思うんです…ましてや女王様は自分のお腹を痛めてまで生んだ

子供なんですから他人より自分の子の心配をするのは当然です…」


そこで落ち込む様な反応を見せて居るマサツグにグレイスは更に戸惑い!…一体

如何返事をしたら!?とオロオロする様なそんな反応を見せて居ると、一方で

マサツグは話を続ける!…更にグレイスの気持ちを理解して行く!…と言うのも

自身の気持ちも交えて相当なモノである事を語って見せると、自分でもシロと

親子である!と言って大事に思って居る事を口に!…だがそれはグレイスも同じ

であって!…いやそれ以上!…互いに大事に思って居る事を更に語り!…改めて

心配するのは当然!とも一つグレイスの気持ちを肯定すると、一方でそれを聞いた

グレイスも更にも一つ慌てる!…マサツグの気持ちに理解を示す!…


「ッ!?…ッ…で、ですが!!…それでも私は!!…

ティナの事だけを考えて!…マサツグ様のお気持ちには!!…」


「…お気持ちだけで大丈夫ですよ…

母親として当然の反応を見せただけで…

俺は別に気にして居ません…寧ろ安心しました!…」


この時自身も失礼な事を考えた!とばかりに慌ててフォローを!…その際グレイスも

自身を戒める様に!…自分の考えて居た事を素直にマサツグへ話して行くと、身勝手

であった!と言葉を続け!…マサツグに反省の意を露わにする!…この時同時に頭を

下げて謝ろうとするのだが、マサツグが苦笑いをしながら更に返事を!…何なら

母親として当然!と更に肯定して行き!…寧ろその言葉が出て来た事で更に自身も

安堵した事をグレイスに話すと、その言葉でまたグレイスも戸惑った具合に反応を

して見せ!…


「ッ!…ッ…ッ~~~…」


「…だって女王様は…このままデグレアントと戦闘が始まったら…

シロは一緒に付いて行って危険な目に合う!…

もしかすると帰って来ないかもしれない!…って考えたから!…

今こうして眠れない夜を過ごしている訳で…

…シロの心配をして居るからこそ、その反応も見せた訳ですから…

俺がとやかく文句を言う筋合いはない!ってモンですよ!…

気にしないでください!……俺の心配をする必要もありませんよ?…」


「ッ!…ッ……。」


一方でマサツグは淡々と言葉を続けて行く!…それはグレイスを責めると言った事は

一切せず、自分はいつもの事!と既に割り切って見せており!…寧ろその言葉を耳に

してグレイスの事を気遣って行き!…自分がそれに対して文句を言える様な立場で

無い事!…勿論心配も不要である事も口にすると、更に続けてグレイスに苦笑いを

して見せる…と、そんなマサツグの言葉でこれまたグレイスが困惑し出す!…この時

互いにシロの事で悩み心配をしているからこそ分かち合い!…故に互いにその気持ち

を汲んで居るから、本音が出て!…と、互いの間で沈黙が生まれ!…グレイスが

そんなマサツグの言葉でただただオロオロとする様なそんな反応を見せて居ると、

一方でマサツグが!…


__……ギュウゥ!!…


「…そんな女王様にお願いが有ります…」


「ッ!?…え?…は、はい!…何でしょうか?…」


それはまるで何かを決意したよう徐にギュッ!と拳を握って見せる!…そして

グレイスに対してスッと真剣な表情を浮かべて行き!…そこからお願いがある!

と真っ直ぐにその旨をグレイスへ伝えて行くと、突然のお願いにグレイスも

困惑!…その返事に慌てを露わにして見せる!…しかしそれでもちゃんとその

マサツグからのお願いに対して返事をすると、次にはマサツグが一度ギュッ!と

奥歯を噛み締め決意を固めた具合に言葉を続け!…


「…ッ…いや、お願いではありませんね……申し訳ない…」


{…さぁ…言え!…}


「ッ!?…な、何で謝る?…ッ!?…」


{言うんだ!!…自分でも分かってる筈だ!!…

これが最良の選択だって事が!!!…}


この時改まった様子でグレイスを前に!…その際先程の言葉に対して疑問を持ち!…

自身でも訂正をするよう続けて謝罪の言葉を口にすると、次には自身の心と葛藤!…

グレイスに対して俯いて見せる!…するとそんな様子を見せるマサツグに対して

グレイスもこれまた戸惑った具合に吃驚すると、その訳をマサツグに尋ね!…と、

そこでマサツグが俯いて居る様子を目にして行き!…これは何!?と更に驚いた

反応を露わにすると、一方で更にマサツグは心の中で葛藤!…自身の中にある最良の

選択と向き合っていく!…そして!…


__……ザッ!!…ガバァ!!…ッ!?…


「シロを!!………いや!…スコルティナ様を!!……ッ~~~…」


{言え!!…言え!!!…言え!!!!…}


「え!?…ッ!!…と、突然何を!?…」


マサツグは俯いた状態から更にスッと頭を下げて自身の言葉を続ける!…それは

腰を90度にして深々と!…シロの事についてもスコルティナと言い直し!…

自身の考えをそのままグレイスに話そうとするのだが、ここでまた心が邪魔して

来る!…しかしそれでも自身に言え!と念じて決意を固める!…すると一方で

そんなマサツグに頭を下げられたグレイスもも一つ驚き様を露わにすると、

思わず後ろへ仰け反る様にして反応をして見せ!…何なら何事!?と言葉を口に!…

この展開に付いて行けず!…終始戸惑い続けるそんな様子を見せて居ると、

マサツグもマサツグで心に競り勝つ!…遂に決意の言葉を口にする!…


「スコルティナ様を!!!…ッ…女王陛下に!!…お帰し致します!!!!…」


「ッ!!……え?…」


「これがシロの為!!…」と思うとシロの事をスコルティナと呼んで決別を表し!…

その際やはり言葉に詰まる様子も見せるのだが、それでもグレイスを女王様!と…

自身を押し殺す様にして最後の言葉を口にする!…当然マサツグとしても断腸の思い

である訳で、そのまま頭を上げる事が如何しても出来ずに固まってしまい!…と、

一方で突如そんな事を言われた事でグレイスは戸惑い!…目を見開きマサツグを

見詰める!…一体何が起きたのか全く分からない!と言ったそんな反応を見せて居る

と、次にはマサツグに向けて何故か手を伸ばして見せる!…そして更にそこへある

不測の事態が訪れてしまう!…と言うのも…


__ギイイィィィ……ッ!…


「…ッ!?……ティナ!?…ハティ!?…」


「ど、如何言う事ですか?…ご主人様?…」


突如その出入り口の扉の方から軋む音が…するとその物音に反応してグレイスも

ハッ!と我に返り!…慌ててその音の聞こえてきた方へ視線を向けると、そこで

目を覚まして居るシロとハティの姿を見つける!…となるとグレイスも慌てて

言葉を漏らてしまう!…それこそ先程の話を聞かれた!?と言った具合に戸惑って

見せると、やはりハッキリしっかり聞かれていた様子で!…この時シロはジッと

目を見開きマサツグの事を見詰めて居り…絶望の表情を浮かべながら次に疑問の

言葉を口にすると、謁見の間内に緊張が走る!…だがマサツグは頭を下げたまま

動こうとしない!…


__………。


「ご主人様?…答えて下さい!!…ご主人様!?…ご主人様!!!!…」


__………。


まるで石となったかの様に全く動かないマサツグは、そのシロの言葉に返事を

せず!…となるとシロは更に不安感を覚えた様子で!…酷く動揺しながらも

更に答えて!と…必死にマサツグへ呼び掛け嘘だと言って欲しい!とばかりに

願うのだが、それでもマサツグは一切答えない!…やはり頭を下げたまま黙り

続ける!…その際一緒に起きて来たハティも酷く動揺した様子でマサツグを

見ると、シロに寄り添っては二人揃ってカタカタと震え始め!…それは寒さから

来る震え等では勿論無く!…シロと同様に衝撃を受けたよう!…何も言えない

ままにとにかくシロから離れない様子を見せて居ると、グレイスがマサツグに

声を掛ける!…それは冷静さを取り戻した具合に訳を尋ねる!…


「…せめて…理由だけでもお聞かせ願えませんか?…」


「…先程から話していたので女王様ももう分かって居ると思いますが…」


__ッ!!…ッ…


いきなりの事で戸惑いながらも!…これは自分達だけで話しを進めて良い物では

無い事も自覚すると、今シロ達がここに居る事を良い事に!…まるでシロ達にも

納得させる様に返事を求める!…それはちゃんとマサツグの気持ち的にも向き

合わせる必要がある事を理解すると、グレイスもシロ達の方の気持ちになって

マサツグを見詰め!…と、そのグレイスからの言葉を受けてマサツグもスッ!と…

今まで動かさなかった頭を上げ…先程話して居た話の内容から触れて行くと、

マサツグが動き出した事でシロとハティはハッ!と…驚きと戸惑い様を露わに

する!…そして…


「…もうすぐ俺達はこの霊峰を下って行き…

デグレアントとの戦争に参加します!…

それこそ今までの冒険で行ってきた戦闘とは違う!…本当の戦争!!…

そんな所にシロを連れて行く訳には行きません!!!…

…それだけじゃない!…シロは漸く母親と妹に再会する事が出来た!!…

もう無駄に戦わずに済むならそのまま家族と過ごして欲しい!!!…

…いつ死ぬか分からない戦いに出る必要はもう無いのですから…

…女王様にシロをお帰しするのです!!!…」


一方でマサツグは淡々とシロをグレイスに帰す理由を口にする!…理由は勿論

戦争で有り、その戦争も今までとは違う!と…苛烈極まりないモノになる事が

予想出来る!と話して行き!…わざわざそんな所にシロを連れて行く必要は

ない!…何なら無事にこうして親姉妹と再会出来たのだから帰すべきだ!と…

恐らくマサツグの本心であろう言葉がマサツグの口からツラツラと止まる事無く

出て来ると、その言葉にシロとハティは更に衝撃を受ける!…そしてシロは

何か言いたげに口を尖らす!…


__ッ!?!?…ッ…ッ~~~~……


「…マサツグ様……ッ…」


一方でその言葉を耳にして更にマサツグの表情を目にしているグレイスはと言うと、

その時のマサツグの反応を見て戸惑ってしまい!…この時淡々と話しをする一方、

そのマサツグの目は若干潤みを持ち出し!…しかし真っ直ぐにグレイスを見詰め!…

決してシロ達の方を振り向かない!…何か鉄の意志の様なモノが感じられると、ただ

黙って見詰める!…いや目が離せないそんな状態になって居た!…そしてマサツグの

意見を聞いた所でマサツグの事を呼んで見せると、シロも意を決してギュッと一度

奥歯を噛み!…


「ッ~~~!!!…で、でも!…でもでも!!…ご主人様が!?…」


「……ッ…なるほど…分かりました……」


「ッ!?…お、おかあさん!?…」


途端に文句の言葉を口に!…と言うよりマサツグの事を心配する!…そして声を

口にしたものの上手く言葉が出て来ず、ただただでもでも!と若干反抗するだけの

言葉しか出て来ない様子を見せて居ると、一方でグレイスも若干考える様な

素振りを…しかし次には了承をした様子で返事をする!…その際マサツグに対して

慈しむ様な若干悲しげな表情を見えると、一方でその返事にシロが戸惑い!…

と、今度はグレイスをジッと見詰め!…ショックを受けた様なそんな表情を見せる

のだが、グレイスは構わず徐にスッと…マサツグの顔へ向けて両手を伸ばす!…


__スッ…ギュッ…ッ!……


「…ここまでスコルティナを送って頂き…本当に有難う御座いました…

このご恩は一生涯!……忘れる事は無いでしょう!…

貴方様の名はこのアングレイシア・ラグナクロス・フェンリルの魂に!…

しっかりと刻まさせて頂きます!…

…スコルティナだけで無く、ハティビィエールにも…

私と…助けて下さった外界の英雄様に!…敬意を!!!…」


「ッ!?…え!?…ちょ!?…んん!?…」


それは優しく包み込む様に!…マサツグの両頬にその両手でスッと添えて行き!…

と、突如そんな事をされてマサツグも驚きを露わにして見せ!…となるとシロと

ハティもハッ!と驚き!…ただその様子をジッと見詰めて何か嫌な予感がする!

とばかりに戸惑って居ると、グレイスはマサツグに感謝の言葉を!…それは深く!…

心の底から感謝をしている事を伝えて行く!…その際若干の涙を目に浮かべて

微笑んで見せると、まるで愛しい人を前にして居る様な眼でマサツグをジッと

見詰め!…と、そんなグレイスの眼差しにマサツグも途端にタジタジ!…すると

何かシロ達と同じく!…この後に妙な事が起きそうなそんな感覚を感じて居ると、

グレイスはスッとマサツグの顔を自身の方へ近付ける!…そしてそのままキスを

する!…


__んちゅ♥…ッ!?…ッ!!!!!!………パッ♥…


この瞬間まるで時が止まった様な感覚も覚える!…マサツグはグレイスにキスを

された事で当然吃驚、何ならそのまま固まってしまい!…シロとハティはそれを

見て途端にこれまた酷くショックを受けた様子!…特にシロが目を見開いて絶句

しており!…ハティもハティでショック!…いやグレイスのそのキスシーンを

見せられてその反応に困る様な頬の染め様を見せて居ると、時間にして約数十秒…

グレイスが唇を離して行く!…その際グレイスも恥ずかしそうに頬を染めて照れて

見せると、モジモジとしながら言葉を口に!…


「…ご、ごめんなさい!…私もこの御呪いをするのは初めてでして…」


「……ッ!?…お!…おおお!!…おまじないって!!!…

え?…えぇ!?…ちょ、ちょっとぁ!?…」


突然キスをした事に対してマサツグへ謝罪!…その際先程のアレは餞別のつもりで

やったらしく、グレイスは御呪いと言って初めて!と言い…と、そんな説明をされ

ても当然戸惑い!…マサツグは乙女の様に慌てまくり!…その際キスをされた唇を

手で抑えて顔を真っ赤にして見せると、グレイスにツッコミの言葉を!…だが思う

様に出て来ない!…さてそうしてマサツグがドギマギして居ると、グレイスも違う

方向でふと気が付いた様子で言葉を口に!…


「ッ!…あっ!…ご、ご不快だったのなら気にせず…拭いて下さっても…」


「いえ寧ろ有難う!!!…じゃなくて!!!…

お、御呪いって如何言う事ですか!?…」


「え、えぇ~っとぉ?……」


と言うのも不快に感じたのでは?と心配を!…その際自分の事は気にせず…口元を

拭って見せてもいい事を口にすると、スッとハンカチの様な物を差し出し!…すると

マサツグもマサツグでとにかく混乱!…その際そうじゃない!と…寧ろ嬉しかった事

を思わず口にしようとするのだが、ここでハッと我に返る!…そして改めてツッコミ

の言葉を口にして行く!…それこそ突然の事で驚いた反応を全面に出すと、グレイス

もそんなマサツグの反応に苦笑いをし!…と、二人でそんな反応を見せて居る一方…

当然納得が行かない者も存在しており!…それはスッと俯き始め!…カタカタと怒り

に震えるそんな様子を露わにすると、次には爆発!…更に混沌を呼び寄せるので

あった!…

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