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第一章 ー雪ー
三
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「さあ、入りな」
照に連れられ通されたのは、小さな明り取りの為の窓が一つあるだけの、畳にすればニ畳程の小さな板張りの部屋だった。
壁際には、暖かそうな布団の代わりに、ぺしゃんこの煎餅布団が一組積んである。
「あ、あの……俺、この家の子になるんじゃ……」
照は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに口の端を上げ、
「いいかい、よくお聞き? あの男がなんて言ってお前を連れて来たかなんて、あたしには関係ないことだ。だけどね、一つ言えるのは、お前はこの屋敷で奉公する為に連れて来られたんだよ。どうせ親の借金のカタに売られたんだろ?」
そう言って照は潤一の手に着物を渡した。
『借金のカタに売られた』
幼い潤一に、その言葉の意味は分からなかった。
でもその言葉が酷く悲しい言葉だということは、幼いながらにも容易に理解することが出来き、言われるがまま着ていた着物を脱ぎ、渡された着物に袖を通す間、潤一の涙が止まることはなかった。
それでも容赦のない照の言葉が潤一に降り注ぐ。
「ぐずぐずするんじゃないよ、さっさとおし!」
潤一はなんとか着替えを済ませ、足早に前を歩く照の後を必死で着いて歩いた。
自分の置かれた境遇を悲しむ暇も与えられないまま、その日から潤一の大田家での奉公は始まった。
照に連れられ通されたのは、小さな明り取りの為の窓が一つあるだけの、畳にすればニ畳程の小さな板張りの部屋だった。
壁際には、暖かそうな布団の代わりに、ぺしゃんこの煎餅布団が一組積んである。
「あ、あの……俺、この家の子になるんじゃ……」
照は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに口の端を上げ、
「いいかい、よくお聞き? あの男がなんて言ってお前を連れて来たかなんて、あたしには関係ないことだ。だけどね、一つ言えるのは、お前はこの屋敷で奉公する為に連れて来られたんだよ。どうせ親の借金のカタに売られたんだろ?」
そう言って照は潤一の手に着物を渡した。
『借金のカタに売られた』
幼い潤一に、その言葉の意味は分からなかった。
でもその言葉が酷く悲しい言葉だということは、幼いながらにも容易に理解することが出来き、言われるがまま着ていた着物を脱ぎ、渡された着物に袖を通す間、潤一の涙が止まることはなかった。
それでも容赦のない照の言葉が潤一に降り注ぐ。
「ぐずぐずするんじゃないよ、さっさとおし!」
潤一はなんとか着替えを済ませ、足早に前を歩く照の後を必死で着いて歩いた。
自分の置かれた境遇を悲しむ暇も与えられないまま、その日から潤一の大田家での奉公は始まった。
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