雪・月・華 ー白き魂ー

誠奈

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番外編  ー白き腕ー 野瀬さと・作

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頬を冷たいものが触った。
その感触に目を開けると声が聞こえた。

「智樹…?」

その声のする方を見遣ると、潤一が居た。
懐は五助が居るのか膨らんでいた。

「潤一…来てくれたの…」
「ああ…」

潤一は泣いているようだった。
なぜ泣いているのか智樹にはわからない。
手を伸ばそうとするけど、身体に力が入らなかった。

ジジっと燭台から音が聞こえた。
虫が飛び込んだんだろう。

「腫れているから…冷やそうね…?智樹…」

そういえばさっき頬に衝撃が走ったことを智樹は思い出した。
あの衝撃がきたら、痛い。
そして腫れるのだと智樹は知った。

濡れた手ぬぐいを、潤一は智樹の頬に当てている。
殴られて失神するまで苛まれた智樹の姿に、潤一は涙が止まらなかった。

遊びなんかじゃない。
ただの性玩具だ…

こんなに綺麗なのに…
こんなに無垢なのに…
なぜ智樹がこんな目に遭わなければならない。

いつか…そういつか…

ここから智樹を連れて逃げよう。

潤一の目に力が篭った。
優しく智樹の頬を撫でると、智樹は微笑んだ。
その潤一の手に、智樹の白い手が重なった。

微笑んだまま閉じた目のまつげも、銀糸の様に美しかった。
そのまま眠りについた智樹の唇に、指で触れた。
温かいその唇は、薄紅色…

甘い智樹の唾液を思いながら潤一は目を閉じた。

唇が重なると智樹の瞼が薄っすらと開き、その赤い瞳に潤一を映した。





…嬉しい…潤一…





その白い腕を伸ばして、智樹は潤一を包み込んだ。
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