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あなたの隣に立ちたくて
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「俺が求めたのは、未来の社長夫人なんかじゃない。生涯一緒にいたい伴侶を選んだんだ。それは決して君ではない」
「なっ」
碧斗さんからの強い否定に、姉の顔が瞬時に怒りに染まる。
「俺が君に、社長夫人としてふさわしくあるように一度でも求めたか?」
それを望んでいたのなら、婚約期間にほかの男性との交際を許すはずがない。
さすがにそれがわかったのか、姉がわなわなと唇を震わせた。
「俺が求めるのは、音羽だけだ」
「そ、それじゃあ、私と婚約しておきながら、あなただって妹とそういう……」
「君と一緒にしないでもらいたい」
婚約していた頃の彼の不貞を疑う姉に腹が立ち、前のめりになりかける。
碧斗さんはそんな私を手で制して、姉の言葉をきっぱりと否定した。
「もちろん音羽とは、君との婚約がなくなるまで異性としていっさい接触していない」
それは事実だと、私もうなずいた。
「君との婚約がなくなり、波川サイドはかなり焦っていた。うちが関係を絶てば、波川屋はたちまち立ちいかなくなるだろうからな」
姉は少しでも会社の都合を考えていただろうか。そこで働く社員らの心配をしたことはあるのか。
「音羽との結婚を持ち出したのは、俺の方からだ。彼女は会社のために、それを決意してくれた。君のせいで、小野寺家によく思われていないだろうとわかっていたのにな」
姉の瞳から、激しい感情が薄れていく。
婚約を結んだ時点で、お互いの気持ちは明かしていない。
だから彼にどう思われているのか、義理の家族の心情はどうなのかと不安は大きかった。
それでも承諾したのは、波川屋を守りたいと思ったからだ。
同時に、ここまでしてくれる碧斗さんを支えたかった。
「君に、その覚悟があるか?」
碧斗さんに追い詰められて、姉は無言のままうつむいた。
しばらくして顔を上げた姉の表情に怒りの感情は見られないが、複雑にゆがんだままだ。彼女の中では、まだいろいろな葛藤があるのだろう。
「邪魔して、悪かったわ」
それでも、すんなりそう認めたのは、彼女の中にも波川屋を思う気持ちがあったからだと信じたい。
さっと立ち上がった姉は、それ以上なにも言わないまま店を後にした。
相変わらず正式な謝罪がないのは、碧斗さんに対して申し訳ない。
ただ、心がこもっていなければ意味がなく、無理にそれを求めるつもりはない。
自分の気持ちを押しつける気はないが、姉が少しでも自身の言動を振り返ってくれるように願った。
「なっ」
碧斗さんからの強い否定に、姉の顔が瞬時に怒りに染まる。
「俺が君に、社長夫人としてふさわしくあるように一度でも求めたか?」
それを望んでいたのなら、婚約期間にほかの男性との交際を許すはずがない。
さすがにそれがわかったのか、姉がわなわなと唇を震わせた。
「俺が求めるのは、音羽だけだ」
「そ、それじゃあ、私と婚約しておきながら、あなただって妹とそういう……」
「君と一緒にしないでもらいたい」
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碧斗さんはそんな私を手で制して、姉の言葉をきっぱりと否定した。
「もちろん音羽とは、君との婚約がなくなるまで異性としていっさい接触していない」
それは事実だと、私もうなずいた。
「君との婚約がなくなり、波川サイドはかなり焦っていた。うちが関係を絶てば、波川屋はたちまち立ちいかなくなるだろうからな」
姉は少しでも会社の都合を考えていただろうか。そこで働く社員らの心配をしたことはあるのか。
「音羽との結婚を持ち出したのは、俺の方からだ。彼女は会社のために、それを決意してくれた。君のせいで、小野寺家によく思われていないだろうとわかっていたのにな」
姉の瞳から、激しい感情が薄れていく。
婚約を結んだ時点で、お互いの気持ちは明かしていない。
だから彼にどう思われているのか、義理の家族の心情はどうなのかと不安は大きかった。
それでも承諾したのは、波川屋を守りたいと思ったからだ。
同時に、ここまでしてくれる碧斗さんを支えたかった。
「君に、その覚悟があるか?」
碧斗さんに追い詰められて、姉は無言のままうつむいた。
しばらくして顔を上げた姉の表情に怒りの感情は見られないが、複雑にゆがんだままだ。彼女の中では、まだいろいろな葛藤があるのだろう。
「邪魔して、悪かったわ」
それでも、すんなりそう認めたのは、彼女の中にも波川屋を思う気持ちがあったからだと信じたい。
さっと立ち上がった姉は、それ以上なにも言わないまま店を後にした。
相変わらず正式な謝罪がないのは、碧斗さんに対して申し訳ない。
ただ、心がこもっていなければ意味がなく、無理にそれを求めるつもりはない。
自分の気持ちを押しつける気はないが、姉が少しでも自身の言動を振り返ってくれるように願った。
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