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第二章~恋人扱編~
041 鉄の掟
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イリヤから突然何の前触れもなく真摯に告げられた言葉の意味をちゃんと理解するまで私は少しの時間を要していた。私とフェルディナンを大好きだと言われて見守ると言われて、余りにも想定外の言葉の数々に頭が追い付かない。
自室のベッドの上で私は放心したように少しボーっとしながらイリヤの顔を眺めてしまっていた。そうして呆けた顔でベッドの上に座り込んでいる私の横で何も言わずに立っているイリヤを静かに見上げていると、何を思ったのかイリヤは私の顎に手を伸ばしてきた。軽く掴まれてそのままクイッと上向かせられる。
「……イリヤ?」
どうしたんだろう? とやっと口を開いた私の喉元にイリヤは指先を移動させてこちょこちょと指を動かした。
「っ! ひゃあっ!?」
余りのくすぐったさに身悶えしながら私は咄嗟にイリヤの手を掴んで止めた。
「なっ、な、な、……突然なにするんですか――っ!」
顔を真っ赤にして怒る私の様子を見てイリヤは満足そうな顔をしてくすくす笑っている。何時もは妖艶な色をしているイリヤの深紅の瞳が、今は悪戯に成功して喜んでいる子供のように純粋なものへと変わった様に見えた。
「だってさ、月瑠があんまり変な顔してるからちょっと心配になって」
「心配って――だからって何でくすぐる必要があるんですかっ!」
「俺が楽しいから?」
「何ですかその理由は……」
訳が分からないと何時もとは立場を逆にして私はイリヤに呆れたような視線を向ける。懲りない様子で楽しそうに笑顔を向けて来るイリヤを子供扱いして大人の様に振舞いながら私はボソリと呟いた。
「……イリヤは私のこと嫌いじゃないの?」
「――はっ?」
「だから、イリヤは私のこと嫌いじゃないのって聞いて……」
「何で俺が月瑠を嫌いになる必要があるんだよ?」
何言ってるの? と続く言葉を飲み込んでイリヤは剣呑な目付きでこちらを見ている。先程までの人懐っこい笑顔が消えてちょっと怒った口調になったイリヤに怯んで身体が縮こまってしまう。
「恨んでいる訳じゃないの? だって私は……」
……結良さんが亡くなる原因を作ったようなものだし。
「あのさ、何でそんなに不安そうな顔してるの? それに恨んでいるって……月瑠それ本気で言ってるんじゃないよね?」
「…………」
怖い顔をしているイリヤに本気で言っていますとは言えなくて、言葉を失くしてベッドの上で固まって動けなくなる。私は足元の毛布を口元まで引き上げながらそろそろと上目遣いにイリヤを見返した。
「月瑠?」
イリヤが私の事を嫌っていないのが分かって嬉しい反面、どう返答したらいいのか分からない。黙り込んでしまった私の顔をイリヤは驚いた表情を浮かべながら見つめている。
「……信じられないな。確かに結良が亡くなった時は暫く荒れていてフェルディナンに当たったこともあったけどさ、月瑠を恨むのがお門違いな事だってことくらい分かっているよ?」
イリヤはそう言って溜息を付くと頭に手を当てて天井を仰ぎ見た。どうやら相当に参っているようだ。
「……ごめんなさい。でも、あのっ、人ってやっぱり弱いからあんまり酷い事があるとそんな綺麗事でおさまりきらないような感情を持ってしまってもおかしくはないと思うし。フェルディナンもその、ちょっとイリヤの事を心配しているみたいだったし……」
どう説明したものかと思って話しているうちに私はうっかりフェルディナンの事まで口にしていた。そしてそれを聞いた瞬間イリヤが一瞬だけハッとしたような表情を浮かべて。余計なことをやってしまったことに私は気が付いた。
「そっか、成程ね。粗方の検討は付いたよ。フェルディナンからそれとなく言われたんでしょ?」
イリヤに少し怒ったような強い眼差しを向けられて仕方なく私は口を開いた。
「……あまり、近づけたくなかったとは」
「それって多分だけど。フェルディナンは月瑠を傷付ける可能性が少しでもあれば用心するだろうから、何事においてもホワホワしてて危なっかしい月瑠に少し釘を刺したってことなんじゃないかな?」
「ほ、ほわほわって何ですか……それに釘を刺したって? イリヤにではなく私に?」
逆なのでは? と思って不思議な顔をしてイリヤを見上げると、イリヤはやれやれと少し疲れた様子で首を縦に振った。
「俺に近づき過ぎて月瑠が傷付かないようにっていう配慮だろうね」
「私が傷付く?」
「月瑠ってさ、必要以上に他人に深く関わって知る必要のない事まで知ろうとして、相手の感情に共感して心を痛めて落ち込んじゃうような所があるでしょ? 自分とは関係ないのにさ」
「それは……」
やっぱり大切な人とか好きな人のことは知りたくなる訳で。そういう人達が一人で重荷を背負って耐えているような姿は見たくない。
「だから俺の話も聞いたらきっと月瑠はどうしたって傷付くだろうし、だからフェルディナンは俺を近づけたくなかったんじゃないかな?」
「……じゃあ、あの、……イリヤはフェルディナンのことも恨んではいないんだよね?」
「なにそれ? 俺そんな事一度も言った事ないんだけど……」
寝耳に水でイリヤは目をぱちくりさせている。
「だってフェルディナンがそう言って――あっ、ごめんなさい! 今のは聞かなかったことにして!」
「聞かなかったことにって言われてもね。もうしっかりと聞いちゃったんだけど」
「そうなんだけど、そうなんだけどね。でもお願いイリヤ」
「フェルディナンがまさかそんな風に思っていたなんてね」
「はうぅっ! お願い忘れて下さい!」
「さてどうしたものかな?」
他人事のように話しているイリヤがとても穏やかな表情を浮かべているから。その反応がどうにも不思議過ぎて妙に心がざわついて落ち着かない。
「……何だか思っていたよりもイリヤ落ち着いてますね」
「そう? 俺はこれでも一応動揺してるんだけど」
「動揺してるの? あまりそうは見えな……」
「まあいいや。それはこっちで解決するから月瑠は気にしなくていいよ?」
「解決って、……イリヤ?」
飄々と返事を返すイリヤに、何する気なの? と心配そうな顔をしているとイリヤは私の頭を数回撫でてから、唇に人差し指を立ててにっこりと笑った。
つまり、これ以上は何も教えてくれないってことですね……
イリヤの言葉を伴わない仕草から確固たる意志を感じて何も聞けなくなる。だから私は閉ざされてしまった話の代わりに別の事を聞く事にした。
「分かりました。それについてはもう聞きません」
「うんそうしてくれると助かるよ」
「でも……」
「でも?」
「見守るってイリヤは言ってくれたけど……もうフェルディナンの生殖時期は終わった訳だし、ユーリーが王命で私を警護するように言う位、そこまで私には守ってもらう程の何かがあるわけでもないんだし、そんなに過保護にしなくても大丈夫だと思うの」
嫌われたくないと思っていたところに大好きだと言われて、意表を突くようなイリヤの言葉に驚いているのはこちらの方だと言いたかった。そして常々自分に対する周りの評価が高過ぎて、余りにも買い被り過ぎだと誰かに言いたくて仕方がなかった思いが、妙な具合にごちゃ混ぜになって口から出てきてしまっていた。
「やっぱり君って……本当に本当の意味で分かってないみたいだから何度でも言うけど、その容姿能力に関係なく異邦人は常に狙われる存在なんだよ。それもあらゆる輩からね。フェルディナンが生殖時期に入って女体化したなんて万が一にも知れたらその隙をついて君を奪いに来るだろうね。還元剤を使用して男に戻っているとはいえ、身体の自由はあまり利かないからね」
「奪いにって……」
そう言われても漠然とし過ぎていてどうにも実感が湧かない。
「だからフェルディナンは生殖時期の間、君を傍に置いて片時も離さなかっただろう?」
ずっと放さないどころかフェルディナンの部屋に半ば監禁状態でしたけど……
「あの、前々から思っていたのですが。この世界の人は生殖時期に入って女体化した時はその、……周りの人に告知とかしてないんですか?」
「そんなことするわけないよ。生殖時期を教えるってことは所謂自分の弱点を曝け出す事と同じだからね」
「でも毎回同じ時期に長期的に休みを取ってたら他の人だってそれとなく察してしまいそうだけど……」
「その時期だけ同じ行動を取っていたらそうなるだろうね。だからそれを勘付かれないように生殖時期が短い奴は毎月同じような休暇日を取ったり、フェルディナンのように一週間だったり長期の奴は同じような長期休みをランダムで取る様にしているんだよ。それで特定出来ないように調整しているから大丈夫なんだ」
「でもフェルディナンが生殖時期に入っていることはイリヤもバートランドさんもそれにシャノンさんと屋敷の使用人達も知っているんですよね? いいんですか?」
流石にちょっと心配になってしまった。
「フェルディナン位になるとそれなりに秘密を共有する者が増えるのは仕方のないことだよ。でも知っているのは皆口が堅い者ばかりだからね。それに武道の当主であるフェルディナンの秘密を漏らすような愚か者がいるとは思えない」
「どうして?」
「どうしてって……そうか、月瑠は別の世界から来たからこの世界の常識についてはまだまだ疎いんだよね」
「?」
「そもそも生殖時期を他人に漏らすことはこの世界に生きる者達の間では絶対にしてはいけない”鉄の掟”なんだよ」
「鉄の掟……」
「だからどんな悪人でも人々から死の烙印を押されるような咎人であったとしてもそれだけは絶対に破ることはない。それをしてしまた場合、どんな報復を受けようとも文句は言えないし。例え殺されてその首を町中に晒されたとしても誰も同情はしないだろうね。それもフェルディナンが相手となれば一族を路頭に迷わせるどころか、滅ぼされるぞ――」
「!?」
そういう一面がフェルディナンにもあるんだとイリヤに言われたような気がしてドクンと心臓が大きく鳴って身体が揺れるような感覚に支配される。そしてその恐ろしい単語の数々に身体を強張らせて緊張した面持ちで話を聞いていた私の様子を見て。イリヤは話の途中で私が本当に怖がっている事に気付いたようでそれ以上の話をする事を止めてしまった。
「まあだからさ、フェルディナンにそんな事をしたら後が怖いのは皆周知しているし。漏れることはないから大丈夫だよって話だよ。それかそういうのも全て覚悟した上で、よっぽど君を欲している誰かの圧力が働いた時にはあり得るかもしれないけどさ。可能性が無い訳じゃないけど、それをするにはかなりの高位者じゃないと無理な話だしね」
怯えている私を落ち着かせるようにイリヤはポンポンと私の頭を叩いて優しく目を細めた。
「……何でそうまでして異邦人を皆欲しがるの? そんなに狙われるの? 珍しくて何時でもそういうことが……出来るからって言う理由だけではやっぱりどうにもしっくりこないというか……」
「異邦人が生む子供は大抵なんらかの特殊な能力を持って生まれてくることが多いんだ」
「特殊能力って?」
「――フェルディナンが持ってる癒しの魔力のことは月瑠も知ってるでしょ?」
「うん」
光属性の使い手であるフェルディナンが持っているその力で、怪我をしてこれまでフェルディナンに何度か治してもらっていたけれど――知っているどころか何度もお世話になりました。何て言ったらイリヤに何て言われるだろう。
きっと微妙な顔して文句でも言われるんだろうなぁ……
そう考えてうーんと唸っているとイリヤが苦笑いしながら少しだけ首を傾けた。
「なんだかその反応、けっこう覚えがありそうな感じだね。まあこれ以上は聞かないけどさ、――とにかくそのフェルディナンが持っている魔力と同じように俺も火の魔力を持ってるんだ。こんな風に……」
そう言ってイリヤは私の前で片手を上向かせた。その掌の丁度中心部分からボウッと真っ赤な炎が何もない空間に発生して部屋の中を明るく照らし出す。血のように赤かった炎がやがて夕焼けのような柔らかい色に変わって。イリヤの掌で静かに燃えている炎が本当に熱いのか確かめたくなった。それに手を伸ばして触ろうとしたところでイリヤは炎を引っ込めてしまった。
「本当に熱いんだから触っちゃ駄目だよ?」
玩具じゃないんだと言い聞かすように優しく言われて私は物足りなさにジーとイリヤを見てしまった。もう一度出して? と言いかねない私の様子を、困った顔をして見守りながらイリヤは炎を出していた掌をグッと握り締めた。
「自由に元素を使いこなすことが出来る。こういう力を持っているのは異邦人の子孫なんだよ。だからそんな特殊な能力を持つ子供を子孫に残したいと思う人間がいることは至極当然なことなんだ」
「ということはイリヤもフェルディナンも異邦人の子孫って事なの?」
「一応俺もフェルディナンも王族だからね。異邦人と関りを持つことが多いのは必然のようなものだから。そういうことにもなりやすくなる」
イリヤは私が乗っているベッドの端にストンと座ると、ふうっと溜息を付いてからまたポンポンと頭を叩いてきた。
「大分長話になっちゃったね。月瑠が眠るまで俺がここで見ているから。大人しくもう寝てくれないかな?」
「出て行かないの?」
「俺が出て行った後に君が何かやらかさないか心配している方が心臓に悪そうだからね」
「やらかすって……」
「いろいろと前科があるでしょ?」
「…………」
この乙女ゲーム世界でやらかした事はまあいろいろとある。思わず目を泳がせながらもじもじと居心地が悪そうにしているとイリヤが隣でくすっと小さく笑った。出来の悪い妹を持った兄が怒るに怒れなくて途方に暮れているような。そんな雰囲気が流れて忘れていた疲れと眠気が少しずつ戻って来た。
次第に襲って来る眠気の波に負けて。私は仕方なくイリヤに言われた通り布団の中に潜り込んで寝る準備を始めた。ぴょこんと顔だけを布団から出してベッドの端に座るイリヤに視線を向けると、イリヤは優しい表情を浮かべてこちらを見ている。
「それにしても本当にフェルディナンは君に弱いし甘いよね」
そう言いながらイリヤは毛布の上からトントンとあやすように叩いて眠る様に促してくる。子守歌の代わりに話をしながら穏やかな表情で見下ろしているイリヤの長い銀髪がスルッと私の方に落ちてきて私はそれをそっと握り締めた。
「……どうしてそう思うの?」
「女体化の還元剤を使用すればああなるって分かっていたのに、君が女性のフェルディナンと関係するのに相当戸惑っていたからあっさり還元剤を使ったんだよ? 男になったら君に無理強いしそうになるだろうし、それを抑制するって並大抵のことじゃ出来ないからね。生殖時期では」
「…………」
「無理強いしないのを前提にしてそれに耐えられるだけの精神力がないと合意していない相手を前にして普通は男になんて戻れないよ。相当に月瑠が大切で大事だから出来たんだろうね。フェルディナンは当然のようにやってのけてたけど。普通はなかなか出来ない事なんだよ」
「そう、なの……?」
「うん。まあそうは言ってもフェルディナンもそうだけど、月瑠も相当に大変だったよね」
段々と眠気が増してきてイリヤの話がちゃんと頭に入らなくなってくる。苦笑して他人事のように話しているイリヤが、話をしている間もずっと優しく一定のリズムで毛布をトントン叩いてくれているから。その心地よさに思考がとろんと眠気に流されてしまう。
「……う……ん……」
「月瑠はもうそろそろ寝ないとね」
イリヤは眠れずにぐずっている子供をあやすようにトントンと同じ調子で毛布の上を軽く叩いている。私の様子を見守りながらふんわりと包み込んでくれるイリヤといるとフェルディナンの時とは違う、恋人とは別のまるで家族といるような安心感を覚えてしまうことに少し戸惑いながらも、イリヤの本質をその温かくて優しい仕草から感じてとても離れがたい気持ちになる。
「……イ、リヤ」
「何?」
「どこにも、いかないで……ね?」
「行かないよ。傍にいる」
見守るって言ったでしょ? と言われたような気がしたけれど眠気に邪魔されてよく聞こえない。イリヤの一定のリズムでトントンと優しく毛布を叩く音だけが頭の中に響いてきて、その心地良さに負けて私はそのまま眠りに落ちてしまった。
自室のベッドの上で私は放心したように少しボーっとしながらイリヤの顔を眺めてしまっていた。そうして呆けた顔でベッドの上に座り込んでいる私の横で何も言わずに立っているイリヤを静かに見上げていると、何を思ったのかイリヤは私の顎に手を伸ばしてきた。軽く掴まれてそのままクイッと上向かせられる。
「……イリヤ?」
どうしたんだろう? とやっと口を開いた私の喉元にイリヤは指先を移動させてこちょこちょと指を動かした。
「っ! ひゃあっ!?」
余りのくすぐったさに身悶えしながら私は咄嗟にイリヤの手を掴んで止めた。
「なっ、な、な、……突然なにするんですか――っ!」
顔を真っ赤にして怒る私の様子を見てイリヤは満足そうな顔をしてくすくす笑っている。何時もは妖艶な色をしているイリヤの深紅の瞳が、今は悪戯に成功して喜んでいる子供のように純粋なものへと変わった様に見えた。
「だってさ、月瑠があんまり変な顔してるからちょっと心配になって」
「心配って――だからって何でくすぐる必要があるんですかっ!」
「俺が楽しいから?」
「何ですかその理由は……」
訳が分からないと何時もとは立場を逆にして私はイリヤに呆れたような視線を向ける。懲りない様子で楽しそうに笑顔を向けて来るイリヤを子供扱いして大人の様に振舞いながら私はボソリと呟いた。
「……イリヤは私のこと嫌いじゃないの?」
「――はっ?」
「だから、イリヤは私のこと嫌いじゃないのって聞いて……」
「何で俺が月瑠を嫌いになる必要があるんだよ?」
何言ってるの? と続く言葉を飲み込んでイリヤは剣呑な目付きでこちらを見ている。先程までの人懐っこい笑顔が消えてちょっと怒った口調になったイリヤに怯んで身体が縮こまってしまう。
「恨んでいる訳じゃないの? だって私は……」
……結良さんが亡くなる原因を作ったようなものだし。
「あのさ、何でそんなに不安そうな顔してるの? それに恨んでいるって……月瑠それ本気で言ってるんじゃないよね?」
「…………」
怖い顔をしているイリヤに本気で言っていますとは言えなくて、言葉を失くしてベッドの上で固まって動けなくなる。私は足元の毛布を口元まで引き上げながらそろそろと上目遣いにイリヤを見返した。
「月瑠?」
イリヤが私の事を嫌っていないのが分かって嬉しい反面、どう返答したらいいのか分からない。黙り込んでしまった私の顔をイリヤは驚いた表情を浮かべながら見つめている。
「……信じられないな。確かに結良が亡くなった時は暫く荒れていてフェルディナンに当たったこともあったけどさ、月瑠を恨むのがお門違いな事だってことくらい分かっているよ?」
イリヤはそう言って溜息を付くと頭に手を当てて天井を仰ぎ見た。どうやら相当に参っているようだ。
「……ごめんなさい。でも、あのっ、人ってやっぱり弱いからあんまり酷い事があるとそんな綺麗事でおさまりきらないような感情を持ってしまってもおかしくはないと思うし。フェルディナンもその、ちょっとイリヤの事を心配しているみたいだったし……」
どう説明したものかと思って話しているうちに私はうっかりフェルディナンの事まで口にしていた。そしてそれを聞いた瞬間イリヤが一瞬だけハッとしたような表情を浮かべて。余計なことをやってしまったことに私は気が付いた。
「そっか、成程ね。粗方の検討は付いたよ。フェルディナンからそれとなく言われたんでしょ?」
イリヤに少し怒ったような強い眼差しを向けられて仕方なく私は口を開いた。
「……あまり、近づけたくなかったとは」
「それって多分だけど。フェルディナンは月瑠を傷付ける可能性が少しでもあれば用心するだろうから、何事においてもホワホワしてて危なっかしい月瑠に少し釘を刺したってことなんじゃないかな?」
「ほ、ほわほわって何ですか……それに釘を刺したって? イリヤにではなく私に?」
逆なのでは? と思って不思議な顔をしてイリヤを見上げると、イリヤはやれやれと少し疲れた様子で首を縦に振った。
「俺に近づき過ぎて月瑠が傷付かないようにっていう配慮だろうね」
「私が傷付く?」
「月瑠ってさ、必要以上に他人に深く関わって知る必要のない事まで知ろうとして、相手の感情に共感して心を痛めて落ち込んじゃうような所があるでしょ? 自分とは関係ないのにさ」
「それは……」
やっぱり大切な人とか好きな人のことは知りたくなる訳で。そういう人達が一人で重荷を背負って耐えているような姿は見たくない。
「だから俺の話も聞いたらきっと月瑠はどうしたって傷付くだろうし、だからフェルディナンは俺を近づけたくなかったんじゃないかな?」
「……じゃあ、あの、……イリヤはフェルディナンのことも恨んではいないんだよね?」
「なにそれ? 俺そんな事一度も言った事ないんだけど……」
寝耳に水でイリヤは目をぱちくりさせている。
「だってフェルディナンがそう言って――あっ、ごめんなさい! 今のは聞かなかったことにして!」
「聞かなかったことにって言われてもね。もうしっかりと聞いちゃったんだけど」
「そうなんだけど、そうなんだけどね。でもお願いイリヤ」
「フェルディナンがまさかそんな風に思っていたなんてね」
「はうぅっ! お願い忘れて下さい!」
「さてどうしたものかな?」
他人事のように話しているイリヤがとても穏やかな表情を浮かべているから。その反応がどうにも不思議過ぎて妙に心がざわついて落ち着かない。
「……何だか思っていたよりもイリヤ落ち着いてますね」
「そう? 俺はこれでも一応動揺してるんだけど」
「動揺してるの? あまりそうは見えな……」
「まあいいや。それはこっちで解決するから月瑠は気にしなくていいよ?」
「解決って、……イリヤ?」
飄々と返事を返すイリヤに、何する気なの? と心配そうな顔をしているとイリヤは私の頭を数回撫でてから、唇に人差し指を立ててにっこりと笑った。
つまり、これ以上は何も教えてくれないってことですね……
イリヤの言葉を伴わない仕草から確固たる意志を感じて何も聞けなくなる。だから私は閉ざされてしまった話の代わりに別の事を聞く事にした。
「分かりました。それについてはもう聞きません」
「うんそうしてくれると助かるよ」
「でも……」
「でも?」
「見守るってイリヤは言ってくれたけど……もうフェルディナンの生殖時期は終わった訳だし、ユーリーが王命で私を警護するように言う位、そこまで私には守ってもらう程の何かがあるわけでもないんだし、そんなに過保護にしなくても大丈夫だと思うの」
嫌われたくないと思っていたところに大好きだと言われて、意表を突くようなイリヤの言葉に驚いているのはこちらの方だと言いたかった。そして常々自分に対する周りの評価が高過ぎて、余りにも買い被り過ぎだと誰かに言いたくて仕方がなかった思いが、妙な具合にごちゃ混ぜになって口から出てきてしまっていた。
「やっぱり君って……本当に本当の意味で分かってないみたいだから何度でも言うけど、その容姿能力に関係なく異邦人は常に狙われる存在なんだよ。それもあらゆる輩からね。フェルディナンが生殖時期に入って女体化したなんて万が一にも知れたらその隙をついて君を奪いに来るだろうね。還元剤を使用して男に戻っているとはいえ、身体の自由はあまり利かないからね」
「奪いにって……」
そう言われても漠然とし過ぎていてどうにも実感が湧かない。
「だからフェルディナンは生殖時期の間、君を傍に置いて片時も離さなかっただろう?」
ずっと放さないどころかフェルディナンの部屋に半ば監禁状態でしたけど……
「あの、前々から思っていたのですが。この世界の人は生殖時期に入って女体化した時はその、……周りの人に告知とかしてないんですか?」
「そんなことするわけないよ。生殖時期を教えるってことは所謂自分の弱点を曝け出す事と同じだからね」
「でも毎回同じ時期に長期的に休みを取ってたら他の人だってそれとなく察してしまいそうだけど……」
「その時期だけ同じ行動を取っていたらそうなるだろうね。だからそれを勘付かれないように生殖時期が短い奴は毎月同じような休暇日を取ったり、フェルディナンのように一週間だったり長期の奴は同じような長期休みをランダムで取る様にしているんだよ。それで特定出来ないように調整しているから大丈夫なんだ」
「でもフェルディナンが生殖時期に入っていることはイリヤもバートランドさんもそれにシャノンさんと屋敷の使用人達も知っているんですよね? いいんですか?」
流石にちょっと心配になってしまった。
「フェルディナン位になるとそれなりに秘密を共有する者が増えるのは仕方のないことだよ。でも知っているのは皆口が堅い者ばかりだからね。それに武道の当主であるフェルディナンの秘密を漏らすような愚か者がいるとは思えない」
「どうして?」
「どうしてって……そうか、月瑠は別の世界から来たからこの世界の常識についてはまだまだ疎いんだよね」
「?」
「そもそも生殖時期を他人に漏らすことはこの世界に生きる者達の間では絶対にしてはいけない”鉄の掟”なんだよ」
「鉄の掟……」
「だからどんな悪人でも人々から死の烙印を押されるような咎人であったとしてもそれだけは絶対に破ることはない。それをしてしまた場合、どんな報復を受けようとも文句は言えないし。例え殺されてその首を町中に晒されたとしても誰も同情はしないだろうね。それもフェルディナンが相手となれば一族を路頭に迷わせるどころか、滅ぼされるぞ――」
「!?」
そういう一面がフェルディナンにもあるんだとイリヤに言われたような気がしてドクンと心臓が大きく鳴って身体が揺れるような感覚に支配される。そしてその恐ろしい単語の数々に身体を強張らせて緊張した面持ちで話を聞いていた私の様子を見て。イリヤは話の途中で私が本当に怖がっている事に気付いたようでそれ以上の話をする事を止めてしまった。
「まあだからさ、フェルディナンにそんな事をしたら後が怖いのは皆周知しているし。漏れることはないから大丈夫だよって話だよ。それかそういうのも全て覚悟した上で、よっぽど君を欲している誰かの圧力が働いた時にはあり得るかもしれないけどさ。可能性が無い訳じゃないけど、それをするにはかなりの高位者じゃないと無理な話だしね」
怯えている私を落ち着かせるようにイリヤはポンポンと私の頭を叩いて優しく目を細めた。
「……何でそうまでして異邦人を皆欲しがるの? そんなに狙われるの? 珍しくて何時でもそういうことが……出来るからって言う理由だけではやっぱりどうにもしっくりこないというか……」
「異邦人が生む子供は大抵なんらかの特殊な能力を持って生まれてくることが多いんだ」
「特殊能力って?」
「――フェルディナンが持ってる癒しの魔力のことは月瑠も知ってるでしょ?」
「うん」
光属性の使い手であるフェルディナンが持っているその力で、怪我をしてこれまでフェルディナンに何度か治してもらっていたけれど――知っているどころか何度もお世話になりました。何て言ったらイリヤに何て言われるだろう。
きっと微妙な顔して文句でも言われるんだろうなぁ……
そう考えてうーんと唸っているとイリヤが苦笑いしながら少しだけ首を傾けた。
「なんだかその反応、けっこう覚えがありそうな感じだね。まあこれ以上は聞かないけどさ、――とにかくそのフェルディナンが持っている魔力と同じように俺も火の魔力を持ってるんだ。こんな風に……」
そう言ってイリヤは私の前で片手を上向かせた。その掌の丁度中心部分からボウッと真っ赤な炎が何もない空間に発生して部屋の中を明るく照らし出す。血のように赤かった炎がやがて夕焼けのような柔らかい色に変わって。イリヤの掌で静かに燃えている炎が本当に熱いのか確かめたくなった。それに手を伸ばして触ろうとしたところでイリヤは炎を引っ込めてしまった。
「本当に熱いんだから触っちゃ駄目だよ?」
玩具じゃないんだと言い聞かすように優しく言われて私は物足りなさにジーとイリヤを見てしまった。もう一度出して? と言いかねない私の様子を、困った顔をして見守りながらイリヤは炎を出していた掌をグッと握り締めた。
「自由に元素を使いこなすことが出来る。こういう力を持っているのは異邦人の子孫なんだよ。だからそんな特殊な能力を持つ子供を子孫に残したいと思う人間がいることは至極当然なことなんだ」
「ということはイリヤもフェルディナンも異邦人の子孫って事なの?」
「一応俺もフェルディナンも王族だからね。異邦人と関りを持つことが多いのは必然のようなものだから。そういうことにもなりやすくなる」
イリヤは私が乗っているベッドの端にストンと座ると、ふうっと溜息を付いてからまたポンポンと頭を叩いてきた。
「大分長話になっちゃったね。月瑠が眠るまで俺がここで見ているから。大人しくもう寝てくれないかな?」
「出て行かないの?」
「俺が出て行った後に君が何かやらかさないか心配している方が心臓に悪そうだからね」
「やらかすって……」
「いろいろと前科があるでしょ?」
「…………」
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「それにしても本当にフェルディナンは君に弱いし甘いよね」
そう言いながらイリヤは毛布の上からトントンとあやすように叩いて眠る様に促してくる。子守歌の代わりに話をしながら穏やかな表情で見下ろしているイリヤの長い銀髪がスルッと私の方に落ちてきて私はそれをそっと握り締めた。
「……どうしてそう思うの?」
「女体化の還元剤を使用すればああなるって分かっていたのに、君が女性のフェルディナンと関係するのに相当戸惑っていたからあっさり還元剤を使ったんだよ? 男になったら君に無理強いしそうになるだろうし、それを抑制するって並大抵のことじゃ出来ないからね。生殖時期では」
「…………」
「無理強いしないのを前提にしてそれに耐えられるだけの精神力がないと合意していない相手を前にして普通は男になんて戻れないよ。相当に月瑠が大切で大事だから出来たんだろうね。フェルディナンは当然のようにやってのけてたけど。普通はなかなか出来ない事なんだよ」
「そう、なの……?」
「うん。まあそうは言ってもフェルディナンもそうだけど、月瑠も相当に大変だったよね」
段々と眠気が増してきてイリヤの話がちゃんと頭に入らなくなってくる。苦笑して他人事のように話しているイリヤが、話をしている間もずっと優しく一定のリズムで毛布をトントン叩いてくれているから。その心地よさに思考がとろんと眠気に流されてしまう。
「……う……ん……」
「月瑠はもうそろそろ寝ないとね」
イリヤは眠れずにぐずっている子供をあやすようにトントンと同じ調子で毛布の上を軽く叩いている。私の様子を見守りながらふんわりと包み込んでくれるイリヤといるとフェルディナンの時とは違う、恋人とは別のまるで家族といるような安心感を覚えてしまうことに少し戸惑いながらも、イリヤの本質をその温かくて優しい仕草から感じてとても離れがたい気持ちになる。
「……イ、リヤ」
「何?」
「どこにも、いかないで……ね?」
「行かないよ。傍にいる」
見守るって言ったでしょ? と言われたような気がしたけれど眠気に邪魔されてよく聞こえない。イリヤの一定のリズムでトントンと優しく毛布を叩く音だけが頭の中に響いてきて、その心地良さに負けて私はそのまま眠りに落ちてしまった。
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これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
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本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
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