次期魔王の教育係に任命された

ミイ

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第3章

86. 本音

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彼の項垂れる様子からそれが本心だと言うことが分かる。いつもの僕ならここで許していただろう、しかし、ここで許してしまえば今後の僕の身が今以上に危なくなるのは目に見えている。前回は僕が不用意に気を許していたことで起こった自業自得な出来事だとしても今回のことは別問題のはずだ。

僕は彼を真っ直ぐ見据えると今までお世話になっているという負い目から口に出来なかった気持ちを彼に向かって告げた。

「インカさん…、インカさんの気持ちも分からなくはないですが、それで僕に手を出すのは違うと思います。フラフラと優柔不断な態度をとっていた僕にも非はあります。でもそれが僕の気持ちを疎かにしていいことにはならないはずです…。僕、始めに言いましたよね、貴方の気持ちを"今は"受け入れられないと。インカさんの気持ちが嫌なわけではありません、むしろこんなに好意を持ってもらって嬉しくもあったんです。でもインカさんが今回みたいな自分勝手な行動を起こすのであれば僕にも考えがあります。」

僕の言葉に彼がゴクリと生唾を飲む。

「アクアのことは心配ですが、僕はここを出て行きます。そして一生、この村には訪れません。」

「そっ…そんな…ッ!」

彼は目に見えて落胆する。

「嫌だと思うなら僕の気持ちも考えて下さい!僕だってインカさんに酷い態度をとっているという自覚はあります。貴方の言う通り職場で精神的に追い詰められてインカさんの元に逃げてきました。そこで貴方が自分にもチャンスがあると思うのは仕方ありません。でも、僕の気持ちを蔑ろにしてアクアに嘘を吐いたり、無理矢理押し通すことに幸せな未来はあるんですか…?」

僕は自分の気持ちを伝えながらだんだんと感情が溢れ出し最後には目に涙が溜まるほど心乱していた。辛うじて涙を流すことまでは避けられたが、真正面にいた彼にはバレてしまっているだろう。

その後、押し黙ったインカさんは何かを考え込んだ体勢から動かなくなってしまった。






それから僕が夕食の準備のために席を立つとアクアが帰ってきた。

「ただいま!パパ!ママ!…あれ、パパは?」

僕は「おかえり。」という言葉と共にソファーを指差す。アクアは不思議そうな顔をしながらインカさんの姿を見つけると嬉しそうに抱き着いた。そして2人でコソコソと何かを話したかと思うといつも通りテーブルに腰掛ける。
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