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第1章

18. ショタっ子と副会長

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それから歓迎会の部屋に着くまでの道程で自己紹介をすることにした。

ウサ耳ショタっ子は、僕の方をチラチラ見ながら

「あの…僕はローザ・パルマと言います。女の子みたいな名前ですけど、男です!ローランド様、宜しくお願い致します。」

「いや、そんな畏まらないでよ。僕はフェンネル・ローランド。フェルって呼んでくれたらいいから。」

「いえ!そんな!侯爵家の方をそんな親しげに呼ぶなんて出来ません!ローランド様とお呼びします!」

ウサ耳ショタっ子改めローザは耳をピクピク動かしながら首を振ってイヤイヤとした。

「(やっぱ小説でもあったけど、こういう身分制度って絶対なのかなぁ…?僕としては最低限はいると思うけど、同級生でましてやこんな幼い年齢でそれを徹底してたら嫌だけど。ローザにはどう言ったら聞いてくれるかな?)」

僕がそう考えているのを怒ったと勘違いしたローザは「もっ!申し訳ございません!何か気分を害される発言を申したでしょうか!?」と半泣きだ。

「違う、違う。ローザは可愛いなぁ、って思ってただけだよ。じゃあ僕のことはせめて名前に様付けで呼んでくれる?」

「…それなら…フェル様でよろしいでしょうか。」

と言ってくれた。

「(こういう場合、変に呼び捨てにこだわっても仕方ないしね。)」

僕は呼んでた小説と照らし合わせながら言葉の選択をする。

その後はお互いの家族の話や趣味などを話し、目的の部屋まで楽しくお喋りが出来た。

「(やっと念願のショタっ子と仲良くなれた…!ローザとくっつく幸運な攻めを僕が見つけてあげるからね!)」

と僕は勝手に意気込む。

目的の部屋まで着くと、生徒会会長とは違う優しげな雰囲気の先輩が指揮をとり始めた。

「改めまして、皆さんご入学おめでとうございます。私は生徒会副会長のヘムロック・スプルースと言います。以後、お見知り置きください。水の能力者の先輩として歓迎致します。今から上級生による歓迎セレモニーを行います。危険が伴うこともありますので、新入生はその場を動かないで下さいね。それでは皆さん、天井をご覧下さい。」

そう言われて新入生は皆、天井を見上げた。すると左右から水が噴射され天井には巨大な虹がかかる。

僕を含めて全員「うわぁー。」と声を上げて天井を眺めた。

そしてサイドから更に水が噴射される。皆が「(濡れる!)」と身構えたにも関わらず、その水はそのまま美しい女性の姿の氷の彫刻となって固まった。

「この方は水の精霊ウンディーネ様です。私たち水の能力者は彼女を讃えています。彼女の加護があるからこそ魔法が使えるのです、皆さんも彼女の存在を忘れないで下さいね。」

その声を聞いた後、氷の彫刻は光輝き次の瞬間、消えて無くなった。しかし、すぐに氷の柱が水面から現れ、水面を凍らせ始める。

「では、この氷上で今からアイスショーを致します。」

音楽と共に2人の男女の先輩が現れた。2人は息の合ったダンスを行い、そろそろクライマックスと思った時、2人の先輩は天井に手をかざす。すると天井から雪が降り始め、僕達が天井に気を取られている内に氷上には2人の先輩だけでなく、他の上級生が並んでいた。

「(うわっ!凄い!一瞬で並んでる!)」

僕は目を丸くしてその光景を眺めた。

「私達の歓迎セレモニーは楽しめましたでしょうか?これから皆さんは魔法について色んなことを学びます。けして楽しいことだけではありません。しかし、私たちは出来る限り君達のサポートをしていきます。なので在学中の3年間、有意義な生活を送れるように頑張りましょう。では、これで歓迎セレモニーは終わります。皆さんは各自、上級生がペアになり教室まで案内します。その場で待っていて下さい。」

そう放送が鳴り、新入生の拍手で締めくくられた。

氷上にいる上級生が次々と上へ上がってくる。順番に新入生とペアになり、退席していった。

僕も自分の番が来るのを待っていたが相手はまさかの副会長。僕はビックリしながらも冷静なフリをした。

「(えぇ~。なんで僕が副会長とペアなの!?それこそ、ローザとペアになってるのを見てニヤニヤしたいのに~!)」と僕は心の中で嘆いた。

すると副会長が僕に手を差し出して「フェンネル様、どうぞ私の手を取って頂けませんか?」と言う。

「(えっ!なんで副会長も様付けなの!?)
あの!副会長様、僕に様付けとかしなくて大丈夫ですよ…?」

と断ると副会長は僕の耳元に「それは出来かねます。理事長よりフェンネル様の護衛を仰せつかっております。」と告げる。

「えっ、いや!大丈夫です!そんな学院で何か起きるわけじゃないですし…!それに僕はそんな護衛がいる程の者じゃありませんから…!
(そんなの断固拒否だ!護衛なんて付いたら自由にBLウォッチングが出来ないじゃないか!)」

僕は手をブンブンと降って拒否する。

「ですが…。」と、副会長は差し出した手を引っ込めた。

その顔は余りにも哀しそうで心が痛んだが、護衛だけは拒否したいのが僕の本心だった。

「あの!もし理事長に言い辛かったら僕からお断りの話をしておきますので!副会長のお手を煩わすわけにもいきませんし…!」

と僕は必死だった。

しかし、副会長はポロポロと涙を流しながら僕の手を握る。

「…ご迷惑でしたか…?」

「(えぇー!何!?この状況!僕が副会長を泣かせたの!?そんなに泣いて困ることだった!?こんなの可哀想で、うん、って言っちゃうじゃん!てか、理事長もそんなこと頼まなくていいのに!学院で何が起こるっていうのさ!)」

と僕が必死に返答を考えていると、副会長が驚きの発言をする。

「実は…先程の理事長に頼まれているというのは嘘なんです…。申し訳ございません…。私はローランド侯爵家に代々仕える家系で、その中でも自分の持っている能力の方(かた)に仕えます。その証拠に私の兄は火の能力を持っており、今はタジェット様に仕え、騎士団にも所属しています。なので、水の能力を持つ私はフェンネル様にお仕えする為に生まれてきたのです。」と涙ながらに訴えられた。

「(初耳なんですけどー!!!)」

僕は手を握り締められたまま、唖然とした。
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