皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

文字の大きさ
60 / 306
第二章 死がふたりを分かつとも

第36話 今夜限りで本当に

しおりを挟む
 客が男娼と寝たければ寝ればいい。
 その気にならなかったというのなら、寝ずに帰ればいいだけだ。

 床入りしないで帰った時でも、レナに恥をかかせないよう、気遣ってくれていたのなら、側付きとして礼を述べたら会話は終わる。


 それで終わらせれば良かった話を、自分が不用意にごじらせた。

 アルベルトも渋面を浮かべて黙り込んだが、サリオンも自分に歯噛みする。


 むず痒いような沈黙が尾を引く中で、互いに視線を逸らし合う。
 早くレナの所に戻れと言ったはずだったのに、これでは自分が引き止めてしまっているかのようだ。


「さっきは……あれだ。ずっと、お前につれなくされて。……腹が立っていたからだ。お前を妬かせてみたくて思わず……、レナを利用した」
「アルベルト!」


 饗宴の間でレナを愛撫し、見せつけた意図を真正直に自白され、一気にサリオンは気色ばむ。
 その挑発に乗せられて、まんまとむくれた自覚がある。
 だからこその腹立たしさと、気恥しさが入り混じり、咄嗟に言葉が出てこない。

 怒りたいのに、何をどうなじればいいのかわからずに、唇だけを喘がせた。


「すまない、サリオン。俺が悪い」

  サリオンが語気を荒げると、アルベルトは一歩退いた。
  剣を喉に突きつけられた、兵卒のように瞠目した。


「あれは謝る。卑怯だった。レナにもお前にも、礼を失した行為だった」


 しどろもどろになって言い、両手を頭の上まで掲げて『降参』の意を現した。ローマ帝国に匹敵する、大国の皇帝だという地位も、アルファの特権も、かなぐり捨てた生身の男が、そこにいた。


 こうして彼は簡単に、それらを自分ではぐってみせる。

 今ここで、そんなものなど介入させたくないかのように、放り出す。

 気持ちの上ではアルベルトは、王族の証のトガも脱いで丸めて床に捨て、腰に下げた長剣も鞘ごと足元に投げつける。
 丸腰で挑みかかって来だけだ。


 サリオンは被ったはずの廻しの仮面も、むしり取られてしまいかねない脅威を感じて口を噤み、俯くことしかできずにいた。

 それでいて、アルベルトの一挙手一投足を目で追う別の自分がいる。
 恐ろしいに目を奪われて囚われる。心をかき乱されていた。

「ただ、レナの居室に移った時は、今夜限りで本当に、お前のことは忘れようと思っていた。本気で諦めるつもりでいた」

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...