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第五章 皇帝の寵姫として
第2話 公の場で
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馬車は石畳の広場を直進した。
正面の車寄せは 花崗岩階段と、 白雲母の大理石の列柱が支える軒を頂く壮麗な設しつらえだ。
横づけにされて停車した馬車の御者台から降りた御者は、最初に皇帝が腰かける右側の扉を開けて 頭を垂れる。
石畳に降り立った皇帝は馬車の後部から回り込み、御者より早く自身で左側の戸を開ける。
「サリオン。足元に気をつけろ」
馬車の中に手を伸ばされたサリオンは、一瞬身がすくむ思いがした。
王宮の正面玄関で、皇帝に御者のような真似をさせている。
いつもの事だと言ってしまうには、恐れ多い畏怖の気持ちが湧き出した。
ここは王宮。
これまでのように公娼内での 戯言などでは済まされない。
アルベルトには、その線引きができていない。名目だけの皇妃候補だとはいえ、オメガが公の場で皇帝より 出張る真似は控えたい。
「どうした? 早く降りろ」
焦れたアルベルトに手を掴まれかけ、思わずビクリと身を引いた。
それを拒絶と捉えたのか、アルベルトの目は見開かれる。それが悲嘆の色に変わる前、慌ててサリオンは言い募る。
「馬車には慣れたし、一人でも降りられる」
「そうだとしても、御者になんぞにお前の手を取らせたくない」
「だから一人で降りるから」
「お前は皇妃だ。妃の手を取って何が悪い」
馬車の中でも降りる時にもケンカになる。地位の重みに対する意識が違うのだ。
サリオンはアルベルトを押しのけるようにして手摺りを握り、降下台に足を降ろして、下車をした。
どうせたとえ御者であっても、手を握らせるのは嫌だと思っているのだろう。
今からこれでは先が思いやられると、サリオンは頭が痛くなる。
正面の車寄せは 花崗岩階段と、 白雲母の大理石の列柱が支える軒を頂く壮麗な設しつらえだ。
横づけにされて停車した馬車の御者台から降りた御者は、最初に皇帝が腰かける右側の扉を開けて 頭を垂れる。
石畳に降り立った皇帝は馬車の後部から回り込み、御者より早く自身で左側の戸を開ける。
「サリオン。足元に気をつけろ」
馬車の中に手を伸ばされたサリオンは、一瞬身がすくむ思いがした。
王宮の正面玄関で、皇帝に御者のような真似をさせている。
いつもの事だと言ってしまうには、恐れ多い畏怖の気持ちが湧き出した。
ここは王宮。
これまでのように公娼内での 戯言などでは済まされない。
アルベルトには、その線引きができていない。名目だけの皇妃候補だとはいえ、オメガが公の場で皇帝より 出張る真似は控えたい。
「どうした? 早く降りろ」
焦れたアルベルトに手を掴まれかけ、思わずビクリと身を引いた。
それを拒絶と捉えたのか、アルベルトの目は見開かれる。それが悲嘆の色に変わる前、慌ててサリオンは言い募る。
「馬車には慣れたし、一人でも降りられる」
「そうだとしても、御者になんぞにお前の手を取らせたくない」
「だから一人で降りるから」
「お前は皇妃だ。妃の手を取って何が悪い」
馬車の中でも降りる時にもケンカになる。地位の重みに対する意識が違うのだ。
サリオンはアルベルトを押しのけるようにして手摺りを握り、降下台に足を降ろして、下車をした。
どうせたとえ御者であっても、手を握らせるのは嫌だと思っているのだろう。
今からこれでは先が思いやられると、サリオンは頭が痛くなる。
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