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第一章
第6話 ニカ
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「ハヤト兄ちゃんおはよ~」
「おはよ、ベロニカさんもおはようございます」
雷の宿屋で朝を迎えた。ベッドは難しいと思っていたけど、宿屋に泊れてよかった。
「あれ? ハヤト兄ちゃん、その剣は?」
「え?」
寝る前に剣を異世界商店で買った。これから下水とかの魔物を狩りに行くことにしたからね。危険なところに行くんだからそれなりに準備しないといけない。鎧は目立つから外に行ってから買う予定だ。
「ちょっとね」
「ふ~ん……」
指を咥えて剣を見てくるニカ。欲しいのかな? 宿代も碌に払えてないし、代わりにあげてもいいかな。
「あげるよ」
「え? でも」
「宿代の代わりってことで。剣術スキルをもってるんだろ?」
「う、うん」
戸惑いながらも受け取ってくれるニカ。
「いいのかな? 宿代よりも高い剣だと思うけど」
ニカは剣を眺めながら呟く。異世界商店で10Gだったから安いものだと思うけどな。普通の鉄の剣だしね。
「ありがとうねハヤトさん。朝ごはんも用意してあるから席について待っててね」
「あっ、ありがとうございます」
ベロニカさんにお礼を言われて席に着くと机に料理が並んでいく。そういえば、料理のスキルも手に入ったんだよな。覚えたタイミングを鑑みると食べるのも料理ってことになるんだよな。まあ、いいんだけどさ。
「ハヤト兄ちゃんは冒険者ギルドに行くの?」
「あ~、うん。お金ないからね」
「じゃあついていっていい?」
「え? でも?」
ニカの言葉を聞いてベロニカさんを見るとお願いのポーズを取られる。二人共僕の事を信用しすぎでは? まあ、いいんだけどさ。
「別にいいけど、何しに行くの?」
「僕もそろそろ冒険者になろうと思って」
「え? 宿屋を継ぐからいらないでしょ?」
「兄ちゃん。この宿屋を見てよ」
ニカに言われて宿屋を隅々まで見渡す。うん、誰もいない……。
「ね? このままじゃ潰れちゃうよ。だから、僕も働きたいわけ」
「そ、そうか~」
ニカの言葉に答えながらベロニカさんを見ると申し訳なさそうにしてる。それなら仕方ないな。でも、なんでこの宿屋は人が来ないんだろう? 雷の宿屋って言うのは確かにうるさそうって言う印象をうけるけど、別に宿屋って言ってるわけだから人が来ると思うけどな。
まあ、この町に来たばかりの僕が分かるはずもないか。少し調べてみるかな。
「行ってきます母ちゃん」
「行ってらっしゃいニカ。ハヤトさんも」
「行ってきます」
ベロニカさんに見送られて宿屋を後にする。控えめに手を振るとクスクス笑われてしまった。あんまりこういったアクションする機会がなかったから、恥ずかしいんだよな。
「兄ちゃん。剣の代わりにこっちあげるよ。使うだろ?」
ギルドに向かって歩いているとニカが短剣を手渡してくる。僕のあげた剣よりも少し短い剣。犬の獣人達が持っていたナイフよりも少し長いくらいの剣だな。
「いいの?」
「うん。僕は兄ちゃんからもらったこの剣があるから大丈夫」
ニヒッと笑うニカ。大事にしてくれるようでよかったけど、少し恥ずかしいな。
短剣を受け取って腰に差す。僕が買った剣もそうだけど、鞘は普通にセットで着いてるんだな。この世界の常識ってことかな。
とか思っている間にギルドの表に着いた。
朝はあんまり冒険者はいないのかな。裏手に回った昨日より中に人の気配がしない。
ニカと共に中に入るとやっぱり人がいない。
受付に人がいるだけで他には人が見当たらないな。
裏手にいた時に対応してくれたヴェインがいるのが見える。どうせなら知っている人の方がいいか。ということでヴェインの受付に、
「いらっしゃい何か用か? ってあんた?」
「どうも」
昨日は裏手から来たもんだから驚いてる。ドッキリ大成功ってところかな。
「なんだよ。路地生活じゃなかったのかよ。通りで」
「え?」
「クレイジーラットを倒せるやつが路地で生活なんておかしいと思ってたんだよ。普通に冒険者出来るからな」
ん~、やっぱりスキルがいい仕事してるのかな? それならありがたいけど。
「とりあえず、登録を」
「ああそういうことかで、そっちの子は?」
たぶん登録しないといけないと思って、登録をお願いするとやっぱりあるみたいでよかった。ヴェインは視線を落としてニカを見つめてる。まだ十歳くらいのニカがいるのが気になるみたいだな。
「僕も登録したくて」
「済まねえな坊主。登録は14歳からなんだ」
「それは知ってるんですけど……。少しでも早く働きたくて」
「そうか。偉いな。親御さんは?」
ヴェインは親身になって質問していく。ニカも素直に答えていく。
「ん~、じゃあ、こうしよう。ハヤトさんのサポーターとして働いて依頼を達成するんだ。登録するときに反映されるってわけだ。どうだ?」
「サポーター?」
「ハヤトさんも初めてでしたね。サポーターっていうのは荷物持ちみたいなものですよ。アイテムを持ってもらって危ない時にアイテムを使って助けてもらったりするんです」
ヴェインの提案に疑問を投げかけると説明してくれた。戦闘はしないって感じか。それならベロニカさんもいいって言うかな?
「ん~。僕も戦いたい」
「まあ、そこはハヤトさんと相談ってことで」
「ん~分かりました」
渋々納得する形でサポーターになることになった。……って僕の意思は?
「ハヤト兄ちゃん、ありがとう」
少し疑問に思っていたらニカが嬉しそうに微笑んでお礼を言って来た。こんなに喜んでるのに断るのも悪いよな。
この町にいる間くらいは一緒に行動するか。
「よし、初の二人の依頼。何する? ゴブリンの討伐依頼とかあるけど?」
「汚れ仕事あります?」
ヴェインが手を叩いて何にするか聞いてきた。僕は一度やったことのある汚れ仕事の依頼があるか聞く。彼は頭を抱えてしまった。
「いやいや、流石にニカ君にはきついよあれは」
「え? 何々?」
「下水の仕事だよ。ネズミとか詰まっているものの掃除とかね」
怪訝な表情で説明するヴェインに質問するニカ。ヴェインが説明し終わるとニカは目を輝かせて嬉しそうに口を開いた。
「楽しそう! 地下にそんなところがあるなんて知らなかった! だから、ハヤト兄ちゃん川で体洗ってたのか~」
「はあ? ハヤトさん。そんなことしてたのかよ」
ニカの言葉に僕へと視線を移すヴェイン。蔑む視線は冷たい。
「じゃあ、決まりだな。はぁ~あんまりお勧めしないんだけどな。ニカ君がいいって言うならいいか」
「やった~。ありがとうハヤト兄ちゃん」
呆れるヴェインに楽しそうなニカ。抱き着いてくるニカはまだまだ子供って感じだな。
「おはよ、ベロニカさんもおはようございます」
雷の宿屋で朝を迎えた。ベッドは難しいと思っていたけど、宿屋に泊れてよかった。
「あれ? ハヤト兄ちゃん、その剣は?」
「え?」
寝る前に剣を異世界商店で買った。これから下水とかの魔物を狩りに行くことにしたからね。危険なところに行くんだからそれなりに準備しないといけない。鎧は目立つから外に行ってから買う予定だ。
「ちょっとね」
「ふ~ん……」
指を咥えて剣を見てくるニカ。欲しいのかな? 宿代も碌に払えてないし、代わりにあげてもいいかな。
「あげるよ」
「え? でも」
「宿代の代わりってことで。剣術スキルをもってるんだろ?」
「う、うん」
戸惑いながらも受け取ってくれるニカ。
「いいのかな? 宿代よりも高い剣だと思うけど」
ニカは剣を眺めながら呟く。異世界商店で10Gだったから安いものだと思うけどな。普通の鉄の剣だしね。
「ありがとうねハヤトさん。朝ごはんも用意してあるから席について待っててね」
「あっ、ありがとうございます」
ベロニカさんにお礼を言われて席に着くと机に料理が並んでいく。そういえば、料理のスキルも手に入ったんだよな。覚えたタイミングを鑑みると食べるのも料理ってことになるんだよな。まあ、いいんだけどさ。
「ハヤト兄ちゃんは冒険者ギルドに行くの?」
「あ~、うん。お金ないからね」
「じゃあついていっていい?」
「え? でも?」
ニカの言葉を聞いてベロニカさんを見るとお願いのポーズを取られる。二人共僕の事を信用しすぎでは? まあ、いいんだけどさ。
「別にいいけど、何しに行くの?」
「僕もそろそろ冒険者になろうと思って」
「え? 宿屋を継ぐからいらないでしょ?」
「兄ちゃん。この宿屋を見てよ」
ニカに言われて宿屋を隅々まで見渡す。うん、誰もいない……。
「ね? このままじゃ潰れちゃうよ。だから、僕も働きたいわけ」
「そ、そうか~」
ニカの言葉に答えながらベロニカさんを見ると申し訳なさそうにしてる。それなら仕方ないな。でも、なんでこの宿屋は人が来ないんだろう? 雷の宿屋って言うのは確かにうるさそうって言う印象をうけるけど、別に宿屋って言ってるわけだから人が来ると思うけどな。
まあ、この町に来たばかりの僕が分かるはずもないか。少し調べてみるかな。
「行ってきます母ちゃん」
「行ってらっしゃいニカ。ハヤトさんも」
「行ってきます」
ベロニカさんに見送られて宿屋を後にする。控えめに手を振るとクスクス笑われてしまった。あんまりこういったアクションする機会がなかったから、恥ずかしいんだよな。
「兄ちゃん。剣の代わりにこっちあげるよ。使うだろ?」
ギルドに向かって歩いているとニカが短剣を手渡してくる。僕のあげた剣よりも少し短い剣。犬の獣人達が持っていたナイフよりも少し長いくらいの剣だな。
「いいの?」
「うん。僕は兄ちゃんからもらったこの剣があるから大丈夫」
ニヒッと笑うニカ。大事にしてくれるようでよかったけど、少し恥ずかしいな。
短剣を受け取って腰に差す。僕が買った剣もそうだけど、鞘は普通にセットで着いてるんだな。この世界の常識ってことかな。
とか思っている間にギルドの表に着いた。
朝はあんまり冒険者はいないのかな。裏手に回った昨日より中に人の気配がしない。
ニカと共に中に入るとやっぱり人がいない。
受付に人がいるだけで他には人が見当たらないな。
裏手にいた時に対応してくれたヴェインがいるのが見える。どうせなら知っている人の方がいいか。ということでヴェインの受付に、
「いらっしゃい何か用か? ってあんた?」
「どうも」
昨日は裏手から来たもんだから驚いてる。ドッキリ大成功ってところかな。
「なんだよ。路地生活じゃなかったのかよ。通りで」
「え?」
「クレイジーラットを倒せるやつが路地で生活なんておかしいと思ってたんだよ。普通に冒険者出来るからな」
ん~、やっぱりスキルがいい仕事してるのかな? それならありがたいけど。
「とりあえず、登録を」
「ああそういうことかで、そっちの子は?」
たぶん登録しないといけないと思って、登録をお願いするとやっぱりあるみたいでよかった。ヴェインは視線を落としてニカを見つめてる。まだ十歳くらいのニカがいるのが気になるみたいだな。
「僕も登録したくて」
「済まねえな坊主。登録は14歳からなんだ」
「それは知ってるんですけど……。少しでも早く働きたくて」
「そうか。偉いな。親御さんは?」
ヴェインは親身になって質問していく。ニカも素直に答えていく。
「ん~、じゃあ、こうしよう。ハヤトさんのサポーターとして働いて依頼を達成するんだ。登録するときに反映されるってわけだ。どうだ?」
「サポーター?」
「ハヤトさんも初めてでしたね。サポーターっていうのは荷物持ちみたいなものですよ。アイテムを持ってもらって危ない時にアイテムを使って助けてもらったりするんです」
ヴェインの提案に疑問を投げかけると説明してくれた。戦闘はしないって感じか。それならベロニカさんもいいって言うかな?
「ん~。僕も戦いたい」
「まあ、そこはハヤトさんと相談ってことで」
「ん~分かりました」
渋々納得する形でサポーターになることになった。……って僕の意思は?
「ハヤト兄ちゃん、ありがとう」
少し疑問に思っていたらニカが嬉しそうに微笑んでお礼を言って来た。こんなに喜んでるのに断るのも悪いよな。
この町にいる間くらいは一緒に行動するか。
「よし、初の二人の依頼。何する? ゴブリンの討伐依頼とかあるけど?」
「汚れ仕事あります?」
ヴェインが手を叩いて何にするか聞いてきた。僕は一度やったことのある汚れ仕事の依頼があるか聞く。彼は頭を抱えてしまった。
「いやいや、流石にニカ君にはきついよあれは」
「え? 何々?」
「下水の仕事だよ。ネズミとか詰まっているものの掃除とかね」
怪訝な表情で説明するヴェインに質問するニカ。ヴェインが説明し終わるとニカは目を輝かせて嬉しそうに口を開いた。
「楽しそう! 地下にそんなところがあるなんて知らなかった! だから、ハヤト兄ちゃん川で体洗ってたのか~」
「はあ? ハヤトさん。そんなことしてたのかよ」
ニカの言葉に僕へと視線を移すヴェイン。蔑む視線は冷たい。
「じゃあ、決まりだな。はぁ~あんまりお勧めしないんだけどな。ニカ君がいいって言うならいいか」
「やった~。ありがとうハヤト兄ちゃん」
呆れるヴェインに楽しそうなニカ。抱き着いてくるニカはまだまだ子供って感じだな。
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