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第一章
第19話 リッチ
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魔法を手に入れて下水道を進んでいく。分かれ道がいくつかあったが、スライムが道しるべになっていたのでスライムを蹴散らしながら進んできた。
スライムがでなくなってきて少しすると綺麗な空気を感じるようになってきた。外に通じてるのが分かる。
「グールが入ってきたところが近いってことだね!」
「そのようですね」
ニカが嬉しそうに話してアイラさんが答えた。僕も頷いて答えると嫌な気配を感じて視線を向ける。大きな空洞が見えて、中央に赤い目のグールが佇んでいるのが見えた。
「いた!」
「待ってください!」
「ど、どうしたんですか?」
速攻で倒そうと駆けだすとアイラさんに止められた。
「おかしいですよ。あんな空洞の一番目立つところに棒立ちなんて」
「た、確かに」
アイラさんのもっともな言葉に納得して空洞の観察に徹する。
「お兄ちゃん! 天井にびっしりスライム!」
げげ、ニカの言葉に天井へと視線を向けると緑色のスライムが天井を覆い隠している。壁面が見えないほどの量で見ているだけで吐き気をもようす。
「流石の量ですね……ん?」
アイラさんも同じようで辟易としてる。すると外に通じている空洞の先から一陣の風がないだ。すると赤い目のグールの首が飛んできて、地面に落ちて消えていった。
「ガハハ、操っていたやつはここか?」
「バルバトスさん!」
「ん? おお、確かハヤトだったか? お前もボス狙いか?」
バルバトスさんが現れて悠長に笑ってる。天井を指さして忠告しようとしたらスライムたちが落ちてきた。
「スライムか。では【TwoMagic FireSword】」
バルバトスさんは指を剣に這わせると魔法を唱える。炎が剣にまとわりついて大きな剣を作り出す。彼の頭上のスライムはその熱さだけで蒸発して消えていく。
「ガハハ、弱い弱い! これで仕舞いか?」
落ちてきたスライムを炎で消し去っていく。めんどくさそうに左右に剣を振るうだけで熱風が僕らを襲う。かなり熱いな。
「ん! 水の魔法石もらってよかった」
ニカが魔法石を握って力を入れる。彼も熱かったみたいで水で顔を洗ってる。いやいや、そういう意図で渡したわけじゃ……うん、冷たくて気持ちいい。
「おお、魔法石か。珍しいものが手に入ったな。それだけでも今回の討伐はあたりだったな坊主」
バルバトスさんは魔物を全部倒し終わってニカの頭をガシガシ撫でる。やっぱり珍しいものみたいだな。じゃあ、自然と見つけることは難しいか。異世界商店で買って覚えちゃった方がいいかもな。特に回復魔法なんかは。
「グールの動きが悪いからな。親玉がいると思ったんだがな。ここも外れか?」
「僕らもそう思って来たんですが……」
バルバトスさんは僕らと同じ考えで来たみたいだ。空洞にいた赤い目のグールが怪しかったんだけどな。
『おのれ、人間の分際で』
「お? 親玉が来たか? あたりじゃねえか」
バルバトスさんと空洞を見回していると天井から声が聞こえてきた。スライムがいた天井に隠れていたとは恐れ入る。
「姿を見せたか。降りてきな怖いのか?」
『くくく、面白いな人間』
バルバトスさんが挑発して声をあげる。声の主の骸骨は笑いながら降りてくる。
「お前リッチってやつか?」
「そうだ。私はリッチ。死を操るもの」
「そうか、なら死ね!」
ゴオ! そんな音と共にバルバトスさんが切りかかる。燃え盛る彼の剣がリッチの首を切り離して燃やした。
「ちぃ。捨て駒か」
「くくく、もっと楽しめ」
バルバトスさんが切った骸骨がドロップアイテムを落とさずに消える。彼らの言葉から今のはがわだけの分身みたいなものだと思った。
そして、次の瞬間、地面から無数の骸骨が現れる。
「武器まで持って、グールは飾りか」
「ここからが本番ってことか」
バルバトスさんの近くに走って背中を預ける。彼に視線を送ると頷いて骸骨を蹴散らしていく。
「ははは、いくら倒しても湧き続けるぞ~。お前達が死ぬまでな~」
天井から声が聞こえてくる。奴の言う通り骸骨をいくら倒しても次から次と湧いてくる。無限地獄だ。
「坊主済まねえが耳かしな」
「え?」
バルバトスさんがニカを抱き上げて耳打ちをする。ニカが頷いて答えるとバルバトスさんはニカを投げ飛ばした。
「いけ坊主!」
「ん!」
天井へと飛んでいくニカ。流石に届かなかったけど、中央の天井へと魔法石で水を飛ばす。確かな手応えの音が聞こえる。
「お、おのれ」
水が滴る天井中央、リッチが姿を現した。ニカの魔法はしっかりとやつを捉えたようだ。
「後は俺が! ハッ!」
「そ、そんなもの!」
骸骨が重なり合ってバルバトスさんの炎の剣を防ぐ。
「往生際が悪いな!」
「に、人間などにやられる我では。ぐぬぬ」
力比べが始まる。バルバトスさんがかなり有利だ。僕も何か……そうだ!
「えっと、【ThreeMagic WaterBolt】!」
「!?」
水の塊をリッチに放つ。鋭い水の塊がリッチを壁へと叩きつけた。
「そ、そんな我が下級魔法で!? あぁ、体が消えていく~」
「へ?」
なぜか僕の魔法一発で死んでいくリッチ。
「魔法も使えるとはやるなハヤト。美味しいところ持っていかれちまった」
「あっ、すみません。まさか死ぬなんて」
「ガハハ、なに謝ってんだよ。もっと胸はれ。よし、ギルドに帰るぞ~。今日は宴会だ~」
バルバトスさんは僕の背中を叩くと外への通路に入って行った。魔法のこととか何も聞いてこなかったな。気にしない人なのかな?
「お兄ちゃん! やったね」
「今回の一番の功労者はバルバトスさんかもしれないけど、親玉を倒したのはハヤト殿。良かったですね」
二人が喜んでくれた。そうか、親玉を倒したのか。
『レベルが上がりました』
レベルアップの報告を聞いて実感が湧いてくる。これで10レベルか、群れとの戦闘は激しいからもうやりたくないな。
僕らは下水道から出てギルドへと帰った。は~、体が臭くなっていそうだ。
スライムがでなくなってきて少しすると綺麗な空気を感じるようになってきた。外に通じてるのが分かる。
「グールが入ってきたところが近いってことだね!」
「そのようですね」
ニカが嬉しそうに話してアイラさんが答えた。僕も頷いて答えると嫌な気配を感じて視線を向ける。大きな空洞が見えて、中央に赤い目のグールが佇んでいるのが見えた。
「いた!」
「待ってください!」
「ど、どうしたんですか?」
速攻で倒そうと駆けだすとアイラさんに止められた。
「おかしいですよ。あんな空洞の一番目立つところに棒立ちなんて」
「た、確かに」
アイラさんのもっともな言葉に納得して空洞の観察に徹する。
「お兄ちゃん! 天井にびっしりスライム!」
げげ、ニカの言葉に天井へと視線を向けると緑色のスライムが天井を覆い隠している。壁面が見えないほどの量で見ているだけで吐き気をもようす。
「流石の量ですね……ん?」
アイラさんも同じようで辟易としてる。すると外に通じている空洞の先から一陣の風がないだ。すると赤い目のグールの首が飛んできて、地面に落ちて消えていった。
「ガハハ、操っていたやつはここか?」
「バルバトスさん!」
「ん? おお、確かハヤトだったか? お前もボス狙いか?」
バルバトスさんが現れて悠長に笑ってる。天井を指さして忠告しようとしたらスライムたちが落ちてきた。
「スライムか。では【TwoMagic FireSword】」
バルバトスさんは指を剣に這わせると魔法を唱える。炎が剣にまとわりついて大きな剣を作り出す。彼の頭上のスライムはその熱さだけで蒸発して消えていく。
「ガハハ、弱い弱い! これで仕舞いか?」
落ちてきたスライムを炎で消し去っていく。めんどくさそうに左右に剣を振るうだけで熱風が僕らを襲う。かなり熱いな。
「ん! 水の魔法石もらってよかった」
ニカが魔法石を握って力を入れる。彼も熱かったみたいで水で顔を洗ってる。いやいや、そういう意図で渡したわけじゃ……うん、冷たくて気持ちいい。
「おお、魔法石か。珍しいものが手に入ったな。それだけでも今回の討伐はあたりだったな坊主」
バルバトスさんは魔物を全部倒し終わってニカの頭をガシガシ撫でる。やっぱり珍しいものみたいだな。じゃあ、自然と見つけることは難しいか。異世界商店で買って覚えちゃった方がいいかもな。特に回復魔法なんかは。
「グールの動きが悪いからな。親玉がいると思ったんだがな。ここも外れか?」
「僕らもそう思って来たんですが……」
バルバトスさんは僕らと同じ考えで来たみたいだ。空洞にいた赤い目のグールが怪しかったんだけどな。
『おのれ、人間の分際で』
「お? 親玉が来たか? あたりじゃねえか」
バルバトスさんと空洞を見回していると天井から声が聞こえてきた。スライムがいた天井に隠れていたとは恐れ入る。
「姿を見せたか。降りてきな怖いのか?」
『くくく、面白いな人間』
バルバトスさんが挑発して声をあげる。声の主の骸骨は笑いながら降りてくる。
「お前リッチってやつか?」
「そうだ。私はリッチ。死を操るもの」
「そうか、なら死ね!」
ゴオ! そんな音と共にバルバトスさんが切りかかる。燃え盛る彼の剣がリッチの首を切り離して燃やした。
「ちぃ。捨て駒か」
「くくく、もっと楽しめ」
バルバトスさんが切った骸骨がドロップアイテムを落とさずに消える。彼らの言葉から今のはがわだけの分身みたいなものだと思った。
そして、次の瞬間、地面から無数の骸骨が現れる。
「武器まで持って、グールは飾りか」
「ここからが本番ってことか」
バルバトスさんの近くに走って背中を預ける。彼に視線を送ると頷いて骸骨を蹴散らしていく。
「ははは、いくら倒しても湧き続けるぞ~。お前達が死ぬまでな~」
天井から声が聞こえてくる。奴の言う通り骸骨をいくら倒しても次から次と湧いてくる。無限地獄だ。
「坊主済まねえが耳かしな」
「え?」
バルバトスさんがニカを抱き上げて耳打ちをする。ニカが頷いて答えるとバルバトスさんはニカを投げ飛ばした。
「いけ坊主!」
「ん!」
天井へと飛んでいくニカ。流石に届かなかったけど、中央の天井へと魔法石で水を飛ばす。確かな手応えの音が聞こえる。
「お、おのれ」
水が滴る天井中央、リッチが姿を現した。ニカの魔法はしっかりとやつを捉えたようだ。
「後は俺が! ハッ!」
「そ、そんなもの!」
骸骨が重なり合ってバルバトスさんの炎の剣を防ぐ。
「往生際が悪いな!」
「に、人間などにやられる我では。ぐぬぬ」
力比べが始まる。バルバトスさんがかなり有利だ。僕も何か……そうだ!
「えっと、【ThreeMagic WaterBolt】!」
「!?」
水の塊をリッチに放つ。鋭い水の塊がリッチを壁へと叩きつけた。
「そ、そんな我が下級魔法で!? あぁ、体が消えていく~」
「へ?」
なぜか僕の魔法一発で死んでいくリッチ。
「魔法も使えるとはやるなハヤト。美味しいところ持っていかれちまった」
「あっ、すみません。まさか死ぬなんて」
「ガハハ、なに謝ってんだよ。もっと胸はれ。よし、ギルドに帰るぞ~。今日は宴会だ~」
バルバトスさんは僕の背中を叩くと外への通路に入って行った。魔法のこととか何も聞いてこなかったな。気にしない人なのかな?
「お兄ちゃん! やったね」
「今回の一番の功労者はバルバトスさんかもしれないけど、親玉を倒したのはハヤト殿。良かったですね」
二人が喜んでくれた。そうか、親玉を倒したのか。
『レベルが上がりました』
レベルアップの報告を聞いて実感が湧いてくる。これで10レベルか、群れとの戦闘は激しいからもうやりたくないな。
僕らは下水道から出てギルドへと帰った。は~、体が臭くなっていそうだ。
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