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第一章

第31話 捜索隊

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 施設が追加されて次の日。冒険者はみんなギルドに集められた。
 グールの群れが北から流れてきたことについて、カタリナ様が捜索隊を組むことになったらしい。
 国全体の危機と言う話でバルバトスさんを軸に隊が組まれて街道沿いを北に進んでいくとか、ん~早く魔道兵工房を使ってみたいんだけどな~。

「俺の隊が先行して、後方にはハヤトたちについてもらいたい」

「ええ!?」

 二階から声をあげるバルバトスさんの言葉に視線が僕らに集まった。
 いやいや、僕はまだ鉄の冒険者なんだけど。

「鉄の冒険者の僕が?」

 当然のことを叫ぶとバルバトスさんがニカっと笑って、

「何いってんだ銀の冒険者だろ。グールとの戦いのときの功績は大きい。特にポーションによる支援がな」

 そう話すと更に耳元で『城壁を直した魔法とかも』とウインクしてくる。
 流石に情報が早い、カタリナ様から話は行ってたんだった。

「でも、僕なんかじゃ……」

 周りの冒険者を見回す。ダンもその中にいて、顔がしかめっ面。やはり少し嫌みたいだな。

「ダン? 何か言うことはあるか?」

「いえ、妥当だと思います」

「え?」

 僕に視線に気が付いたバルバトスさんがダンに声をかける。すると思いもよらない言葉がかけられた。

「ハヤトは周りへの気配りも早い。支援してもらえると思うと戦闘に集中できると思います」

「はは、ダンも大人になったな」

 ダンの言葉を聞いて喜ぶバルバトスさん。ダンもリーサさんの件で僕への評価を変えてくれたみたいだな。

「もちろん、ダンも俺の隊に入ってもらってる。あと二人程選んでる。全員了承してくれてるってわけだ。今回は助かった村人の捜索も視野に入れてる。ハヤトのような人材がいてくれると助かるんだ。ダメか?」

 僕を振り返ったバルバトスさん。気持ちのいい笑顔でお願いしてくるとリーサさんへと視線を向ける。彼女は小さくガッツポーズをとって僕を見てくれた。

「お兄ちゃん。僕らなら大丈夫だよ」

「ええ~。でもさ~」

「ハヤト。私も大丈夫だと思うぞ」

 ニカが袖を引っ張って声をあげるとアイラも同意して話す。ルキナちゃんは分かってないみたいで二人の真似をするだけだな。
 別に行ってもいいんだけどさ、ゴミを換金して魔道兵工房を作りたいんだよな~。
 まあ、みんなが行きたいならその場で異世界商店のお金に換えられそうなものを入れていけばいいか。

「分かりました。みんなも行きたいみたいなので」

「よし! ありがとうハヤト。実はな王都からも騎士団が動き出すらしくてな。急がないとエンプレスのギルドは使えないってレッテルが張られちまうんだ。威信がかかってるわけなんだよ」

 バルバトスさんはそういって頭を掻いてる。騎士団って言葉にアイラがピクッと動いたような気がする。

「そういうわけだ。更に、第一騎士団隊長自ら出向くようだよバル」

「やはりそうか、イクシオン」

 二階からバルバトスさんとは別の声が聞こえてきてバルバトスさんが答えた。銀髪切れ長の目の美形が僕らを見下ろしてくる。

「みな……そんなに見つめないでくれ」

「あ~、すまん。イクシオンは視線に弱くてな。捜索隊以外は解散してくれ」

 イクシオンさんは頭を抱えて二階の奥へと帰っていった。捜索隊に選ばれた僕らと三名が二階にあがる。

「この間のグール討伐にもいたんだが一応紹介する。エンプレスの冒険者ギルドを統括してるイクシオンだ。マスターというやつだな」

「め、目立つの苦手なのでな。いる時はバルに任せているんだ」

 バルバトスさんに紹介されて、汗をかきながら説明してくれるイクシオンさん。控えめに行っても美形だな。男性か女性かわからないほどだ、髪も長いしね。

「それじゃ、準備ができ次第北門に集合だ」

 イクシオンさんのことも考えて早々に話を切り上げるバルバトスさん。目立つのが苦手なのにマスターなんて大変だな。

 僕らは依頼をやろうとおもってギルドに来ていたので準備は出来てる。なので一度、遠出することをベロニカさんに伝えるために雷の宿屋に帰ることにした。

「母ちゃんただいま~」

「お帰り早かったわね」

 抱き着くニカを抱きとめるベロニカさん。

「実は少し遠出することになっちゃって」

「あら? そうなの?」

「それでニカも行ってくれるみたいなんですがベロニカさんの許可を」

 ニカは未成年だからね。遠出となると今までとは話が違う。一日で帰ってこれない距離は流石にね。

「母ちゃんダメ?」

「ううん。大丈夫よ。だけど、決して帰ってこれないなんてことにはならないでね。また置いてかれるのは嫌だから」

「母ちゃん……」

 ニカのお願いにベロニカさんは答えてくれた。彼女の言葉を聞いて旦那さんは魔法使いだったことを思い出す。ニカを連れて行っちゃいけないような気がするな。

「ハヤト兄ちゃん! 僕は行くからね」

「え?」

「兄ちゃん優しいからダメとか言いそうだったもん」

 色々と考えていたらニカに心を読まれてしまった。頬を含ませて怒る姿はリスにしか見えないな。

「ニカは男の子ってことだよハヤト」

「ニカお兄ちゃん偉いにゃ!」

 アイラがそういうとルキナちゃんがニカに抱き着く。

「分かったよ」

 ニカを危険に晒さないように頑張ろう

「じゃあ行ってくるね母ちゃん」

「はい、行ってらっしゃい。皆さんも無事に帰ってきてね。お客さんはハヤトさん達だけですからね」

 ベロニカさんに見送られて宿屋を後にした。
 
 北門に着くとダンたちが待っているのが見える。ダンは大きな斧を背負っていて、他の二人は魔法職っぽい服装だ。

「バルバトスさんと一緒じゃなかったの?」

「ん? ああ、そっちと一緒だと思ってたぞ」

 ダンに声をかける。普通に接してくれるようになって本当に良かった。

「さっきは自己紹介できなかったわね。私はルビア、こっちはエナよ」

「どうもです」

 ダンの後ろにいた女の子達が自己紹介をしてくれた。ダンと同じパーティーなのかな?
 バルバトスさんに選ばれた先頭を任せられるメンバーに入っているってことは相当な魔法を使える人なんだろうな。

「エナは無口だけど、言っていることは理解してくれるから」

「……」

「よ、よろしく」

 ルビアさんに説明されてエナさんを見ると無言で見つめてくる。長身で黒服だから威圧感が凄いな。

「不思議……」

「!? エナが喋った。ちょっとエナ~」

 エナさんが顔を近づけてきて呟くとルビアさんが驚いて声をあげる。エナさんは呟くと北門の方へと歩いていってしまった。慌ててルビアさんが追いかけていく。

「不思議な奴らだ」

「ん? ダンさんはあの人たちと一緒のパーティーじゃ?」

「いや、違う。俺は雇われで急遽入ることはあっても属さないからな」

 ダンのパーティーメンバーだと思ったら違うみたいだな。彼はソロ専門ってことか。

「マスター」

「ん? どうしたの? ルキナちゃん?」

 ズボンの裾を引っ張ってくるルキナちゃん。彼の視線を追うとバルバトスさん達が見えた。

「よし。みんな集まったな。出発だ」

 バルバトスさんの号令で町を旅立つ。
 は~、遠出は緊張するな~。
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