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49 牛鬼
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「………」
「………」
佐久夜と京平は、牛車を目の前にして、言葉を失って呆然としていた。
「お客人、どうしましたか?」
牛車自体は、一眼見て、大変豪華だと理解していた。真っ黒な車体には螺鈿が散りばめられ、とても華やかな装飾が施され、車内も真っ赤な布が敷き詰められていた。
問題は、牛車に繋がれている牛だ。フコフコと鼻息が荒く、口から大量の涎を垂らし、脚は八本、目は赤い六つの複眼が額にあり、佐久夜たちが知る牛とは大きく異なっていた。
「牛車ですよね…コレ」
牛車に近づこうものなら、襲われるのではないかと思われるくらい、近くに寄るのを謀れてしまう。
「おや?牛鬼は、初めてですか?」
初めても何も、佐久夜たちは、生まれてこの方見たこともない。
「佐久夜、京平。牛鬼は、大人しい妖怪だから、問題ないにゃ」
朧は、スタスタと前を歩き、牛車に乗り込む。続いて、浅葱、朱丸も牛鬼に笑顔を振りまいて、牛車に乗り込んだ。
ブモモモモモ~
雄叫びのような鳴き声をあげ、牛鬼は乗車する三人を迎え入れた。
「行くか?」
「お、おう」
佐久夜と京平は、お互い声を掛け合い、牛車へ乗り込むために一歩近づいた。
ブモ~ブモ~
けたたましく大きな鳴き声をあげ、佐久夜たちは、思わず耳を塞いだ。
ポコン
「お客人を歓ぶのは、わかるが静かにせい」
牛鬼よりはるかに小さな鴉天狗は、柄杓で牛鬼の頭を叩いた。叱られた牛鬼は、頭を下げて、しょげてしまう。
フコフコと鼻息だけが、聞こえくるが、赤い八つの目から、悲しそうに涙が溢れはじめた。
「ごめん、怒らないでやってください。俺たちが、勝手に怖がってしまって」
「俺たちが悪かったよ。だから、泣かないで」
しょぼくれた後姿が、余りにも哀愁が漂っていたため、佐久夜たちは慌てて声をかけた。
ブモ?ブモモモモモ~
牛鬼は、ぴょこんと顔をあげ、再び機嫌良く鳴き始めた。
「喜んでる?」
「たぶん…喜んでると思う」
見た目の恐ろしさとは、相反し、牛鬼は上下に頭を揺らし、鳴き続けた。
「なんか、可愛い…のかなぁ?」
「可愛いんじゃ……ないのかなぁ?」
見た目は、ボスキャラのように恐ろしくあるも、繊細で優しい乙女のような牛鬼だなと、二人は思った。
「よろしくな」
ブモ~ブモ~
「ありがとう」
ブモモ~ブモモ~
佐久夜と京平も、牛鬼に声をかけて、牛車に乗り込んだ。
鴉天狗は、扉を閉めると錠をかけ、御者台に乗り込んだ。
「ハッ!」
パシんと手綱を振るうと、牛鬼はゆっくりと歩を進め出す。
「ハァ、さっきの彼女とどうやって仲良くなろう~」
牛鬼の恐怖もなくなり、京平は車内で身悶える。佐久夜は、やっぱりかとため息を吐いた。
「なぁ、さっきの女性って…」
「あれが、……スセリビメにゃ」
朧は、佐久夜の膝の上で、丸くなり目を閉じたまま答えた。
「………」
佐久夜と京平は、牛車を目の前にして、言葉を失って呆然としていた。
「お客人、どうしましたか?」
牛車自体は、一眼見て、大変豪華だと理解していた。真っ黒な車体には螺鈿が散りばめられ、とても華やかな装飾が施され、車内も真っ赤な布が敷き詰められていた。
問題は、牛車に繋がれている牛だ。フコフコと鼻息が荒く、口から大量の涎を垂らし、脚は八本、目は赤い六つの複眼が額にあり、佐久夜たちが知る牛とは大きく異なっていた。
「牛車ですよね…コレ」
牛車に近づこうものなら、襲われるのではないかと思われるくらい、近くに寄るのを謀れてしまう。
「おや?牛鬼は、初めてですか?」
初めても何も、佐久夜たちは、生まれてこの方見たこともない。
「佐久夜、京平。牛鬼は、大人しい妖怪だから、問題ないにゃ」
朧は、スタスタと前を歩き、牛車に乗り込む。続いて、浅葱、朱丸も牛鬼に笑顔を振りまいて、牛車に乗り込んだ。
ブモモモモモ~
雄叫びのような鳴き声をあげ、牛鬼は乗車する三人を迎え入れた。
「行くか?」
「お、おう」
佐久夜と京平は、お互い声を掛け合い、牛車へ乗り込むために一歩近づいた。
ブモ~ブモ~
けたたましく大きな鳴き声をあげ、佐久夜たちは、思わず耳を塞いだ。
ポコン
「お客人を歓ぶのは、わかるが静かにせい」
牛鬼よりはるかに小さな鴉天狗は、柄杓で牛鬼の頭を叩いた。叱られた牛鬼は、頭を下げて、しょげてしまう。
フコフコと鼻息だけが、聞こえくるが、赤い八つの目から、悲しそうに涙が溢れはじめた。
「ごめん、怒らないでやってください。俺たちが、勝手に怖がってしまって」
「俺たちが悪かったよ。だから、泣かないで」
しょぼくれた後姿が、余りにも哀愁が漂っていたため、佐久夜たちは慌てて声をかけた。
ブモ?ブモモモモモ~
牛鬼は、ぴょこんと顔をあげ、再び機嫌良く鳴き始めた。
「喜んでる?」
「たぶん…喜んでると思う」
見た目の恐ろしさとは、相反し、牛鬼は上下に頭を揺らし、鳴き続けた。
「なんか、可愛い…のかなぁ?」
「可愛いんじゃ……ないのかなぁ?」
見た目は、ボスキャラのように恐ろしくあるも、繊細で優しい乙女のような牛鬼だなと、二人は思った。
「よろしくな」
ブモ~ブモ~
「ありがとう」
ブモモ~ブモモ~
佐久夜と京平も、牛鬼に声をかけて、牛車に乗り込んだ。
鴉天狗は、扉を閉めると錠をかけ、御者台に乗り込んだ。
「ハッ!」
パシんと手綱を振るうと、牛鬼はゆっくりと歩を進め出す。
「ハァ、さっきの彼女とどうやって仲良くなろう~」
牛鬼の恐怖もなくなり、京平は車内で身悶える。佐久夜は、やっぱりかとため息を吐いた。
「なぁ、さっきの女性って…」
「あれが、……スセリビメにゃ」
朧は、佐久夜の膝の上で、丸くなり目を閉じたまま答えた。
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