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63 佐久夜の趣味
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「よ!コレ、弟のお下がりだけど、お前にやるよ」
どどんと置かれた段ボール箱二つ。京平が自転車の荷台に乗せて、持ってきた。
「ズボン?パーカー?ジャンパー?……どれも子供用みたいだけど……あ!」
「おう、浅葱にピッタリだろ!」
鬼火である朱丸、猫又である朧には必要なかったが、浅葱は、側から見ると幼児だ。山伏風の服では、逆に目立ってしまう。
「確かに、朧は普通の猫に化けるし、朱丸には、服は必要ないし、助かったよ京平!」
「かたじけのうございまするぞ」
二人に礼を言われ、ウヘヘと鼻の下を指で擦って、京平は笑った。
「また、良いのあったら持ってきてやるからよ!」
京平は、自転車に跨り、手を振って帰って行った。
「良かったな、浅葱」
「ハイ!嬉しゅうござりますぞ」
浅葱は、貰った古着を一着ずつ広げて確認していく。
「俺は、コレが良いでござりまするぞ!」
手に取った服は、黒いパーカー。フードには、猫耳。
「この召し物、まるで朧さまでござりまするぞ!俺は、コレが一番好きでござりまする!」
さっそく、着替えくるくると回る浅葱。しっかりとフードも被って嬉しそうにはしゃぐ。
しかし、喜ぶ浅葱とは反して背後から、冷ややかな視線が刺さってくる。
「な、何かな君たち?」
頬をぷっくり膨らまし、朱丸と神さまが何故か佐久夜を睨んでいる。朧は、興味無さげにクワ~っと大きな口を開けて、欠伸をしている。
「ズルい!」
「うむ、我も同じ意見じゃ」
じっと座った目で佐久夜に訴えかける。
「なぁ、朱丸よ。我たちは、ずっと着の身着のままじゃなぁ」
「そうだぞ!佐久夜兄ちゃん!僕たちは、ずっとこのままじゃん!」
鬼火の朱丸には、服なんて必要ないだろうと思いつつも、言葉を間違えれば、後を引きそうだと思った。
「朱丸はさ、炎のカッコいい衣が一番良く似合うと思うぞ」
「そ、そうか!」
似合うと言われ、嬉しそうに喜ぶ朱丸。佐久夜は、握り拳を作り、小さくガッツポーズをした。
「騙されるでないぞ!この問題を有耶無耶にしてしまえば、晩ご飯のオカズにも影響してくると、我は睨んでおるぞ」
「そ、そうなのか?」
「んなわけあるかーい!」
手を取り合って頷き合う朱丸と神さまが、くるっと佐久夜に向き直った。
「あの、やはり俺は、いつもの格好で構わないでございまするぞ」
浅葱が、しょんぼりと下を向く。パーカーの裾をぎゅっと握り、ぽたりと涙を流した。
「わーった!わかったってばよ!
神さまにも、朱丸にも洋服を用意すれば良いんだろう!チクショウ」
佐久夜は、貮号に跨り、商店街へ走った。
「クスクス!何アレ」
「やだ、必死になってる」
佐久夜は、耳まで真っ赤にして商品を物色する。
ここは、ショッピングセンター。人形が数多く並ぶ女の子向けのコーナー。
「ドレスばっかりじゃねぇか!チクショウ、かくなる上は…」
取り敢えず、ボーイッシュな洋服を数点見繕う。
「プレゼント何で、ラッピングしてもらえますか?あは、はは、ははは…」
周りに聞こえる位の声で、自分が好きで買っているんじゃないぞとアピールしながら、会計を済ませた。
「で、お前、裁縫に目覚めたと…?」
「男の子用の服ってあんまりないんだよ。仕方がないだろう」
昼休み、教室で女子に教えてもらいながら、チクチクと小さな洋服を縫う佐久夜の姿が見られるようになった。
どどんと置かれた段ボール箱二つ。京平が自転車の荷台に乗せて、持ってきた。
「ズボン?パーカー?ジャンパー?……どれも子供用みたいだけど……あ!」
「おう、浅葱にピッタリだろ!」
鬼火である朱丸、猫又である朧には必要なかったが、浅葱は、側から見ると幼児だ。山伏風の服では、逆に目立ってしまう。
「確かに、朧は普通の猫に化けるし、朱丸には、服は必要ないし、助かったよ京平!」
「かたじけのうございまするぞ」
二人に礼を言われ、ウヘヘと鼻の下を指で擦って、京平は笑った。
「また、良いのあったら持ってきてやるからよ!」
京平は、自転車に跨り、手を振って帰って行った。
「良かったな、浅葱」
「ハイ!嬉しゅうござりますぞ」
浅葱は、貰った古着を一着ずつ広げて確認していく。
「俺は、コレが良いでござりまするぞ!」
手に取った服は、黒いパーカー。フードには、猫耳。
「この召し物、まるで朧さまでござりまするぞ!俺は、コレが一番好きでござりまする!」
さっそく、着替えくるくると回る浅葱。しっかりとフードも被って嬉しそうにはしゃぐ。
しかし、喜ぶ浅葱とは反して背後から、冷ややかな視線が刺さってくる。
「な、何かな君たち?」
頬をぷっくり膨らまし、朱丸と神さまが何故か佐久夜を睨んでいる。朧は、興味無さげにクワ~っと大きな口を開けて、欠伸をしている。
「ズルい!」
「うむ、我も同じ意見じゃ」
じっと座った目で佐久夜に訴えかける。
「なぁ、朱丸よ。我たちは、ずっと着の身着のままじゃなぁ」
「そうだぞ!佐久夜兄ちゃん!僕たちは、ずっとこのままじゃん!」
鬼火の朱丸には、服なんて必要ないだろうと思いつつも、言葉を間違えれば、後を引きそうだと思った。
「朱丸はさ、炎のカッコいい衣が一番良く似合うと思うぞ」
「そ、そうか!」
似合うと言われ、嬉しそうに喜ぶ朱丸。佐久夜は、握り拳を作り、小さくガッツポーズをした。
「騙されるでないぞ!この問題を有耶無耶にしてしまえば、晩ご飯のオカズにも影響してくると、我は睨んでおるぞ」
「そ、そうなのか?」
「んなわけあるかーい!」
手を取り合って頷き合う朱丸と神さまが、くるっと佐久夜に向き直った。
「あの、やはり俺は、いつもの格好で構わないでございまするぞ」
浅葱が、しょんぼりと下を向く。パーカーの裾をぎゅっと握り、ぽたりと涙を流した。
「わーった!わかったってばよ!
神さまにも、朱丸にも洋服を用意すれば良いんだろう!チクショウ」
佐久夜は、貮号に跨り、商店街へ走った。
「クスクス!何アレ」
「やだ、必死になってる」
佐久夜は、耳まで真っ赤にして商品を物色する。
ここは、ショッピングセンター。人形が数多く並ぶ女の子向けのコーナー。
「ドレスばっかりじゃねぇか!チクショウ、かくなる上は…」
取り敢えず、ボーイッシュな洋服を数点見繕う。
「プレゼント何で、ラッピングしてもらえますか?あは、はは、ははは…」
周りに聞こえる位の声で、自分が好きで買っているんじゃないぞとアピールしながら、会計を済ませた。
「で、お前、裁縫に目覚めたと…?」
「男の子用の服ってあんまりないんだよ。仕方がないだろう」
昼休み、教室で女子に教えてもらいながら、チクチクと小さな洋服を縫う佐久夜の姿が見られるようになった。
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