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87 鋳型を割ろう
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「お義兄さま!その顔、どうした?コケたのか?」
一週間ぶりに神社に来た京平は、神さまと対面するなり、大きな声を上げた。
「うむ?別に我は、コケたりせぬぞ?」
京平は、神さまを抱き上げると佐久夜に突き出した。
「佐久夜!お義兄さまの顔が大変なことになっているの聞いてないぞ!」
「我を掴むでない!しかも、義兄呼びは、許可しておらぬ」
ペシペシと京平を叩くが、京平は気にせず佐久夜に詰め寄った。
神さまの面には、くっきりと亀裂が走っている。先週、佐久夜の穢れを浄化したために出来た亀裂だ。あの日以降、亀裂が大きくなっていない為、京平に詳細について報告していなかっただけのことだった。
「取り敢えず、神さまを降ろしてあげて?」
鼻息の荒い京平から神さまを受け取り、床に降ろしてやった。
改めて佐久夜は、京平に事情を説明した。
「そんなことが有ったなんて…佐久夜も水臭いな」
「ごめんって」
改めて、京平に詫び浅葱の作業場へ向かった。
「お待ちしておったでござりますぞ」
浅葱は、鋳型を床に置き、それらを割るための工具を用意しているところだった。
京平は、自分が作った鋳型に駆け寄って、両手で触った。
「しっかり固まってそう?」
「それは、割ってみないとわかんないな」
浅葱からノミと金槌を渡された佐久夜は、筵の上に座り、鋳型を足で挟む様に固定する。
「佐久夜よ!早く割って見せるのじゃ」
神さまは、朧の背に跨り覗き込む。佐久夜は、ノミを繋ぎ目に合わせると、カンっとその取ってに金槌を振り落とした。
カン、カン、カカン
繋ぎ目にノミを這わせながら、その背を金槌で叩く。
徐々に鋳型の繋ぎ目の隙間が、広がっていく。
神さまを始め、浅葱、朧、朱丸も黙って佐久夜の作業を見守った。
慎重に、慎重に、佐久夜は鋳型にノミを叩き込む。
いつしか額に汗が滲み始め、袖口で拭いながら鋳型を割っていった。
ゴトンと鋳型が筵の上に崩れて落ちて行くと、中から少しずつ固まった青銅が見えてくる。
「おぉ!無事固まっているなぁ。浅葱、俺にも貸してくれよ。ノミと金槌」
京平も浅葱からノミと金槌を受け取ると、佐久夜と同じように筵の上に座り、鋳型を割る作業を始めた。
カンカンカン、カンカンカン
黙々と鋳型を割って行く。鋳型の石膏ボードが多少は残っているが、小一時間かけて、固まった青銅を取り出した。
浅葱は、大きなタライに水を張り、次の工程の準備をしてくれていた。
「ちんちくりん、このまま作業を見ていると、出来上がった時の楽しみが減ってしまうにゃ」
「そうじゃの。無事、取り出せた様じゃ。朧よ我だけが知らぬは寂しい。我と付き合え」
「仕方にゃい。オイラたちは、社に行くにゃ」
朧の背に乗ったまま、神さまは作業場を出て行く。
「朧のオッチャン!僕の修行を見てよ」
朱丸も、神さまたちを追いかけていった。
「ハハッ、アイツら絶対、飽きたんだぜ」
「浅葱も俺たちに付き合わなくても良いよ?」
「イヤイヤ、俺は作業場でやりたい事がござりますので、お気遣いなく。ご用があり時は、声をかけていただければでござりますぞ」
浅葱もにっこりと微笑んで、少し離れた場所で作業を始めた。
「じゃあ、俺たちは頑張って磨きますか!」
佐久夜と京平は、再び作業を始めた。
一週間ぶりに神社に来た京平は、神さまと対面するなり、大きな声を上げた。
「うむ?別に我は、コケたりせぬぞ?」
京平は、神さまを抱き上げると佐久夜に突き出した。
「佐久夜!お義兄さまの顔が大変なことになっているの聞いてないぞ!」
「我を掴むでない!しかも、義兄呼びは、許可しておらぬ」
ペシペシと京平を叩くが、京平は気にせず佐久夜に詰め寄った。
神さまの面には、くっきりと亀裂が走っている。先週、佐久夜の穢れを浄化したために出来た亀裂だ。あの日以降、亀裂が大きくなっていない為、京平に詳細について報告していなかっただけのことだった。
「取り敢えず、神さまを降ろしてあげて?」
鼻息の荒い京平から神さまを受け取り、床に降ろしてやった。
改めて佐久夜は、京平に事情を説明した。
「そんなことが有ったなんて…佐久夜も水臭いな」
「ごめんって」
改めて、京平に詫び浅葱の作業場へ向かった。
「お待ちしておったでござりますぞ」
浅葱は、鋳型を床に置き、それらを割るための工具を用意しているところだった。
京平は、自分が作った鋳型に駆け寄って、両手で触った。
「しっかり固まってそう?」
「それは、割ってみないとわかんないな」
浅葱からノミと金槌を渡された佐久夜は、筵の上に座り、鋳型を足で挟む様に固定する。
「佐久夜よ!早く割って見せるのじゃ」
神さまは、朧の背に跨り覗き込む。佐久夜は、ノミを繋ぎ目に合わせると、カンっとその取ってに金槌を振り落とした。
カン、カン、カカン
繋ぎ目にノミを這わせながら、その背を金槌で叩く。
徐々に鋳型の繋ぎ目の隙間が、広がっていく。
神さまを始め、浅葱、朧、朱丸も黙って佐久夜の作業を見守った。
慎重に、慎重に、佐久夜は鋳型にノミを叩き込む。
いつしか額に汗が滲み始め、袖口で拭いながら鋳型を割っていった。
ゴトンと鋳型が筵の上に崩れて落ちて行くと、中から少しずつ固まった青銅が見えてくる。
「おぉ!無事固まっているなぁ。浅葱、俺にも貸してくれよ。ノミと金槌」
京平も浅葱からノミと金槌を受け取ると、佐久夜と同じように筵の上に座り、鋳型を割る作業を始めた。
カンカンカン、カンカンカン
黙々と鋳型を割って行く。鋳型の石膏ボードが多少は残っているが、小一時間かけて、固まった青銅を取り出した。
浅葱は、大きなタライに水を張り、次の工程の準備をしてくれていた。
「ちんちくりん、このまま作業を見ていると、出来上がった時の楽しみが減ってしまうにゃ」
「そうじゃの。無事、取り出せた様じゃ。朧よ我だけが知らぬは寂しい。我と付き合え」
「仕方にゃい。オイラたちは、社に行くにゃ」
朧の背に乗ったまま、神さまは作業場を出て行く。
「朧のオッチャン!僕の修行を見てよ」
朱丸も、神さまたちを追いかけていった。
「ハハッ、アイツら絶対、飽きたんだぜ」
「浅葱も俺たちに付き合わなくても良いよ?」
「イヤイヤ、俺は作業場でやりたい事がござりますので、お気遣いなく。ご用があり時は、声をかけていただければでござりますぞ」
浅葱もにっこりと微笑んで、少し離れた場所で作業を始めた。
「じゃあ、俺たちは頑張って磨きますか!」
佐久夜と京平は、再び作業を始めた。
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